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【第三問】色欲は吐き気がする程キモすぎる。(Part 5)


◇ ◆ ◆ ◇


ボクはそっと目を開けた。

「…………」

多分夢なんだろう――今のは完全に悪夢と考えるべきなんだろう。

自分が自分であることを確認する為の、そんな夢だったのだろう。

怪夢(かいむ)とかと同じ類の、臨終際に見る夢だったのだろう――きっと。

――剣山(つるぎやま)(たか)(ひと)が剣山貴仁かどうかを確認する。

喜入(きいれ)はそんなことを言っていたが、それは果たしてどんな意味があったのだろうか?

それで、ここは何処なんだろうか? 真っ暗の闇夜でよく分からなかった――が、

「…………ん?」

ここはボクの部屋のベッドか。

窓から入ってくる僅かな星光を頼りにして周囲を見渡す。

家具少な目の、いつも通りのボクの部屋だった。

「…………」

気付けば普段着を着ているし、それに誰かがここまで運んだのだろう。

まあ、流石に学校で意識を失っていたから、どういう経緯を辿ったのかは、全事象の発端者である、あいつに聞く外なさそうだ。

枕元にあったケータイを取ると、待ち受け画面に『6月28日(月) 00:01』と表示された。ちなみに、待ち受け画面の写真はデフォルトのそれではなく、妹のちょっとだけいやらしい浴衣姿の写真が入っている(勘違いしないでよね、勝手に妹が設定したんだ)。

先ず、どうしたもんか……ということで、

「――も、もしもし」

『こんな夜遅くに何の用かしら? 生憎、私は夜間のセ■レ募集は行ってないのよ。でももしどうしてもって言うんだったら、近くにある『愛之宿屋(アイノホテル)』に集合っていうことで』

「ああ分かった、そこに行けば会えるんだな――って、行く訳ないだろっ! 何で人を勝手に町唯一のラブホ『愛之宿屋(アイノホテル)』に連行しようとしてるんだよ!?」

実際、ボクは今すぐにでも電話の相手――喜入に会って、それから滅茶苦茶にしてから色々と問い質したいことがある……けど……

「…………」

『あら、急に黙っちゃって。一体全体何を考えているのかしら、たかくん』

「た、たかくん!? おいおい、お前こそどうして急にラブラブカップルのような呼び名で! ひょっとして、喜入、深夜テンションなんじゃ?」

『いいえ、そんなことないわよ。学校で一番頭が良く、おまけにスタイル抜群、絵に描いたような美人、そして深窓の令嬢こと私がそんな精神的障害を負うはずがないわ』

「いや、もうそれ完全にアウトだから。完璧に深夜テンションだから。あげぽよだから」

『深夜テンションであげぽよなのはたかくんの方じゃない。うふふふっ』

と、喜入はボクをいつものように、嘲笑うかのように微笑んで、

『こんな時間に綺麗な女性と電話できて、それで「私がどんな私服を着ているんだろうかな~? いつ頃シャワーに入ったんだろうかな~? もしかして髪濡れてるままなのかな~? ベッドの上で肌蹴た姿でいるのかな~?」って思ってるんでしょ? 大体それくらいのことならお見通しならぬ聞き通しよ、た・か・く・ん』

「キモいからマジでその語尾止めろ。今度会ったら滅茶苦茶にしてやるからな。あ、そういう意味じゃない方での滅茶苦茶じゃないからな」

本当に一瞬で殺意が心の底から湧いてくる。

すると、喜入は不敵な笑みを浮かべ(実際に浮かべているかどうか定かではないが)、

『それで私が今どんな姿をしていると思うの? あなたの予想で言ってみて』

「はぁ?」

どんな嫌がらせなんだよ、全く……、少女漫画かよ。

『正解は全裸よ。いや、厳密にはパンツとブラは穿いてるけどね。ふふふっ、それにベッドの上でちょっとえっちな風の仕草を――』

「もう言わなくていいよ! 文字通り赤裸々すぎる馬鹿丸出しだ!」

まるでボクの妹が普段執り行うような泥沼下世話ネタが続きそうだったので、ボクは深夜だというのに関わらず、そのまま大声で喜入を怒鳴った。

閑話休題――話が大分逸れてしまったので立て直す。

「で、本題だ」

『何かしら?』

勿論これから大事な話題に踏み入るので、ボクは真面目に言った。それに賛同してくれたのか、喜入もさっきまでの深夜テンション風の色っぽさを含んだ口調を止めた。

「お前、ボクに何をした?」

これだけは有耶無耶にすることなどできない現実なのは読者全員が承知のことだろう。

『――ただ殺してあげただけよ』

しかし、喜入は実に平淡に、あっさりと言ってのけた。多分、電話越しの喜入は今頃何の表情も作っていないだろう。

『ただあなたを殺した――剣山貴仁を殺した』

「お前、それが本当は――」

『剣山貴仁を殺してあげた――つまり、自殺を助長した』

「…………」

『どうしたの? 剣山貴仁。まさか、私に不満でもあるのかしら?』

「……ここでないって言ったらどうする? 不満だと言ったら――」

『今度こそ本当の意味で殺すわよ』

「…………」

本当の意味での殺人予告だった――正しい意味での殺人宣言だった。

それもいつもの声で、いつもの態度で、いつもの雰囲気で、あっさりと、『殺す』と。

自殺ではなく、他殺にすると――――悪女は言った。

『もう眠いからそろそろ電話切っていい? 明日も学祭の準備があるし、その時に』

「分かったよ、今は深くは追及しない。あ、学祭で思い出したんだが、『お化け屋敷&風俗店』とやらは今日、どれくらい進んだんだ? あ、厳密に言えば昨日か」

『結構進んだわ。それもあなたがいなかったからだと思うけどね』

「普通、人員が増えたら作業は捗るだろ。何でボクがいたら遅くなるんだよ」

『…………ZZZ』

「……おい、起きろ!」

『……………………』

応答がないところから鑑みると、どうやら喜入は本当に寝てしまったらしい。

電話から聞こえてくるのは寝息のすぅ~、すぅ~、だけである。

「……はぁ、ま、明日詳しく聞くか」

溜息交じりの声を出し、ボクは喜入との電話を切った。

「今日はもう遅いから、寝よ……」

勢い良くベッドに倒れてそのまま就寝した。



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