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【第三問】色欲は吐き気がする程キモすぎる。(Part 3.5)


◆ ◆ ◆ ◆


気付けばボクは見たくもないような悪夢を見ていた。

「…………」

剣山家の一室に、まるでボクに似た姿の彼がいて、

何やら右手には場にそぐわない鋭利な凶器を持ち、

そして、彼は『遺書』と書かれた白い封筒を置き、

『さようなら、人間ども――女子(メス)ども』

小さくそう言ながら、彼はそれを使って自身の首をすぱっ、と躊躇いなく切った。

するとどうなるだろうか、誰でも容易に想像できよう。

超大量出血して、そのまま彼はその場にばたんっと倒れる。

周囲の家具も真っ赤に染まる――――真っ黒に染まる。

グロテスクで、この世で最も酷な画である――閲覧注意級の悪夢でさえある。

いや、これは悪夢ではなく、ボクという人間の過去で、そして現実とも言える。

「でも、これは決して水に流せない、由緒正しい過去――って、あれ……?」

今度は視界が突然明るくなり、色のない真っ白な世界に変貌した。

すると、

『――お兄ちゃん、お兄ちゃん……、お兄ちゃん! おにぃ……』

と、妹の声、救急車の迫ってくる音がする。

どうやら彼女は目の前で瀕死状態になっている彼が、消えて亡くならないように、必死に彼の意識を呼び戻そうとしているようだった。

そして、いくら視界が白く染まっていようと、その有様をボクは想像できた。

否、想像ではなく、もしかしたら想起の方が正しいかもしれない。

「…………」

だって、そこにいる彼こそが、どうしようもない程に、紛れもなく昔のボクなのだから。

ボクは一度だけ、本当にたった一度だけ――自殺した。

正しく言えば、自分は自分に殺された――

否、あの女子(メス)――――安城(あんじょう)(はす)に殺された。

そして、その場で直ちに死んだ――はずだったのだが、

死んでいなかった。見事に、盛大に、自殺に失敗した。

去年の12月27日、ボクはボク自身を殺そうとしたが、

結局殺せなかった。ボクという人間は、決して死んでいなかった。

通俗的に言えば殺人の失敗――『殺人未遂』ということになってしまうだろうが。

俄然重々しい話題に切り替わってしまい、読者諸兄に申し訳ないが、いつまでもこの過去的事実を隠している訳には、しかしいかないだろう。

だから、この悪夢はきっと、それを思い出させる為の、そんな夢だと思った。



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