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【第三問】色欲は吐き気がする程キモすぎる。(Part 3)


◇ ◆ ◆ ◇


空き教室にやって来た。当然ながら誰もいない。

「それで話でもあるのか?」

「話というよりも、大事なことを伝えておきたいって思って」

「大事なことを、伝えおきたい……? も、もしかして!」

もしかして、喜入による奇想天外な告白だろうか?

でも、万が一、億が一、そうだったとしても、その時はちゃんと断る。

だって、精神的ないじめという意味での、それだろうから。

そして、ボクは絶対に、絶対的に――恋人など作らないと決めているから。

「うん、そうよ。大事なこと――あなたの命に関連すること」

喜入(きいれ)は木で鼻をくくるような感じで言い放つ。

対してボクは、普通に肝を冷やした。

「大体想像できるでしょ? こんな二人きり空間に私たちが存在しているという意味」

「…………怖い。って、ボクの命に関わること――?」

つまり、ボクは今この場で喜入様から死の宣告を受けて、それでちゃんと殺される…………ということ、なのだろうか? ちゃんと死ねるということだろうか?

「まあ、最悪そうなるかもしれないわね」

「……命に関わるのって、どういう意味で関わるって言うんだよ、喜入」

「逆にどういう意味だったら、あなた――剣山貴仁は嬉しいの?」

「……う、嬉しい?」

お前にやられて嬉しいことなど、この世に一つもない。

「じゃあ選択肢を二つだけ提示するわ――『ここで童貞を捨てるか』それか『私を犯して警察に捕まるか』の二択。これならどちらを選んでも天国じゃないのかしら」

「どっちも地獄だよ!」

って、ツッコミを入れてる場合じゃない! 今から大事な話をされるというのに、そんないつも通りの会話をしていたら、日が暮れちゃうよ!

「それじゃあ本題――剣山貴仁、こっちに来なさい」

そう言いつつ、手を上下に振って教室の廊下側の壁に呼ぶ喜入。

その表情はいつもと変わらず平淡で、色気を一切含んでいなかった。

「え、何、壁ドンでもするの? 嫌だよ、てか普通立場が反対じゃない?」

「そんなことしないから安心して。いいから早く来なさい」

仕方なかったので、やるせなくボクは空き教室の古びた壁に向かう。

それにしても何をするんだろうか? 何をされるんだろうか?

「…………」

普通の男子高校生だったら、本当にここで壁ドンイベント発生を期待しそうだけれど、でもボクはそういうカップルもどきイベントは極めて嫌いな方だ。

何度も言う通り、ボクは女子(メス)が好きじゃない――死ねって思うくらいに憎い。

「命に関わるというのも、それは本当の意味で関わるという意味よ。あなたの過去について、今更触れるつもりも関与するつもりもないけれど、でもこのままだと周囲を欺くことになるから、逸早く終わらせたいと思って」

「? 何だよ、その意味深な発言は。ボクの過去はさておき、周囲を欺くことになるとか、終わらせたいとか――何をするんだよ、喜入」

ボクは決して周囲を欺くような行為に及んでないし、その証拠に今まで語ってきた物語を省みればそんなことはないとすぐに分かるだろう。

「剣山貴仁、この壁際に立って」

「ねえ、本当に何するの? もしかしてボクのアレを奪うつもりで、わざとこんな身動きも取れないような場所に移動させてるつもりなの?」

「そんな野暮なことはしないから、さあ早く。時間がないから」

「…………」

ボクは指示された通りの場所に位置して、それにもたれかかる。

「じゃあ最後に――最期に質問いいかしら?」

「最期に質問? 何それ、普通に目と目を合わせて腰を落ち着けて聞けばいいんじゃん」

「それじゃあ駄目なの。あなたがあなたであることを、私は最後まで見たいから――」

すると、喜入はボクを凝視しながら――――

どんっ、と勢いよく――それはもう、破壊の域に達する感じで――壁ドンされた。

「っ!?」

「どきまぎするのは仕方のないことかもしれないけど、私は剣山(つるぎやま)(たか)(ひと)が剣山貴仁であるかどうかを確認したいの。そういう難しい問題を解きたいの」

もしかして、もしかしてもしかしてもしかして……

ボクに告白する気なのかぁぁぁぁぁ!?

さっき『最期』って表現したのも、もし振ったら殺すよという暗示で!? ヤバイ、ボクの頭の中で首尾一貫として理屈が繋がっていく! まるで難しい方程式の問題が糸も簡単に(ほど)けていくかのように!

「じゃあ質問するわよ? いや、質問じゃなくて、要望を聞いてもらうわよ?」

「いや、ちょっと待って! 考え直せ! ここにいるのは剣山貴仁という、真面目だけど狂いまくった、女嫌いの一男子高校生なんだぞ!? 他にもいい男はいるし、っていうかボクなんか学校で――日本で底辺に位置するくらい精神的にも人間的にも――」

「――それでも」

喜入は強く断定する。

「それでも、あなたは剣山貴仁であるということに変わりがないことを、だから私は」

「…………?」

一度呼吸を整えて、喜入は言う――表情を変えて。

「だから、剣山貴仁――私は剣山貴仁が剣山貴仁かどうか、ちゃんと見たい」

「…………?」

来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る!?

「じゃあ――剣山貴仁が剣山貴仁かどうかを確認する為に、私は――」


「あなたを殺す――――死になさい」


「……は、はい?」

と、ボクが疑問の声をあげようと思い、発声しようとしたところ、

「……ぐっ! な、何、を……!?」

ぐぅっ、と強く、喜入は両手でボクの首を絞めてきた。

「……ぃ、いた、い……! や、やめ、……ぉ!」

しかしながら、そんな抵抗は、断末魔の叫びは、虚しく、悲しく――

喜入は異彩を放ちつつ、殺意を含蓄した目をしながら、首を絞めつけてくる――文字通り、必死に。

それに加えて、後ろに壁があることを利用して、彼女自身が重心をボクに思い切り寄せているが故に、より一層圧力がかかってくる。

「……はっ、……っ、…………く、苦し、ぃ」

目の前が、真っ暗に――――


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