7.
マイを引き離したあと、ハンはライフと話をすることにした。先程の大量の質問で頭がショートしてしまっているライフを、おーいと声をかけて意識をこっちに向けた。
「マイがうるさくて悪かったな。」
「大丈夫です…。すみません、ありがとうございます。…でも、さっきのは一体何だったんですか?」
ハンは目を驚いて見開いた。あれだけの魔法を使い、圧倒的な力であの強力なキメラを倒したというのに、ライフの様子をみるとそのことを全く覚えていないようだった。しかも、あれだけのプレッシャーを放っていたというのに、それすらも覚えていないということになると、先ほどのことが全部3人が見た幻覚だったのではないかという気になってくる。
ハンは今のライフと先ほどのライフとは、少し雰囲気が違っていたと感じていた。今のライフは穏やかで優しくツッコミがうまい(?)と思っていたが、魔法を使用していた時のライフは、もちろん周りを気に掛ける優しさはあったが、敵に対してはとても冷酷で容赦なく命を奪うことを、さすがのハンも恐怖してしまったほどだ。
ネルケはどう感じたのか分からないが、おそらくマイもハンと同じように感じたのかもしれない。ハンとマイは幼いころに両親を亡くしてしまっているので、ギルドの仲間たちが家族同然の存在だ。だからこそマイはあれだけ質問をしたのだろう。もし、危険ならばこれ以上一緒にいてはいけないと思ったためとのことだったのだろう。だが、ハンはライフのことを
(まぁ、俺もいろいろと聞きだそうと思っていたけど…こんな感じじゃ聞くに聞けないし…。)
頭の上に?マークを浮かんでいるのが分かるほどに混乱しているライフを見て、ハンは溜まった疑問をため息を一つ吐いて頭の中から消し去ることにした。そして、ハンは笑顔でライフの肩に腕を回して一緒にネルケとマイの方へ戻っていった。
「さて、仕事も終わったし、ギルドに帰ろうぜ。俺、腹減ったよ。」
「あたしもお腹減った~。早く何か食べたいよ~。」
「ふふっ。じゃあ依頼人に報告したら、ギルドに帰る前にどこかで食べていく?」
「そうだな、どこ行く?俺は今肉が食いたい気分だから、肉がいい。ライフは何が食べたいんだ?」
「…え?僕もですか?でも…」
ライフはちらりとマイの方を見た。先程のことがあり、マイのことを気にしていたようだが、彼女もいろいろと整理がついたようで、
「あ、あたしはパフェ!パフェが食べた~い!ライフもパフェがいいでしょ?」
「なに言ってんだよ。ライフも肉が食いたいよな?」
「えっ…いや…あの…。」
ハンとマイがライフの手をそれぞれ引っ張って言い合い、ライフは困った顔をしていた。それをみかねたネルケは苦笑しながら提案をした。
「なら、どこかのレストランに行きましょうか。もちろん、お肉もパフェもあるところにね。」
おぉー、と2人は元気よく返事をして歩き出した。ライフの腕をそれぞれ掴んだままだったので、ライフも引きずられるように歩いていたが、その顔には微笑みが浮かんでおり、ネルケも嬉しそうに3人の後をついて行った。