1DAY・1UP
奇跡的に漢字テストで100点を取った勉強嫌いの陸は、学校が終わり気分良く笑顔で家に帰ってきた。
「ただいま。・・・。あれ?」
しかし、お帰りの返事はなかった。お母さんはパートのお仕事でいないはずだが、今日はお父さんは仕事が休みで家にいるはずだった。
「zzz。」
「お父さん、仕事で疲れてるんだな。」
陸は寝室を見に行くとお父さんはお昼寝をしていた。陸はお父さんを起こさないで寝かしておいてあげることにした。
「よし! ゲームをやるぞ!」
陸はテレビのある部屋に行くと、勉強や宿題をやらずに、いつも通りゲームをやり始める。
「おい、陸。勉強をやるはずじゃなかったのか?」
勉強の神さまのスタディーは、陸の態度に呆れる。学校で漢字テストで良い点を取って勉強の楽しさが分かってくれたかに思えたが、そうではなかった。
「だってお母さんが帰ってきたら、勉強をやらされるんだもん。それにゲームの勇者リクのレベルを上げて強くするんだ! 強くして魔王を倒すんだ!」
陸がゲームをするには2つ理由があった。1つはお母さんに勉強をどうせやらされる。2つ目がゲームの主人公、勇者リクを強くすることだった。
「現実の陸は強くしなくていいんですか?」
勉強の神さまのスタディーは、ゲームの勇者リクではなく、現実の陸は勉強をして、勉強ができるようにならなくてもいいのかと聞きました。
「そのうち、できるようになるよ。」
陸は大嫌いな勉強のことよりも、大好きなゲームのことで頭の中がいっぱいでした。
「こいつ・・・ダメだな・・・。」
さすがの勉強の神さまのスタディーも、陸の態度に呆れました。
「ワッハハハ!」
陸はゲームを楽しそうに笑いながらやっています。
「おかえり、陸。」
眠っていた陸のお父さんが、ゲームをやって陸がうるさいので目が覚めてやって来ました。
「あ!? お父さん!?」
陸は振り向いて、お父さんの方を見てビックリしました。
「そこです! お父さんとして、宿題もやらないで、ゲームをしている息子に、ビシッと勉強するように言ってやってください!」
勉強の神さまのスタディーは、陸のお父さんが陸に、ゲームをやめて、勉強をするように言ってくれることを期待しました。
「陸!」
「はい!?」
「お父さんもゲームをやらしてくれ~♪」
「いいよ~♪ 一緒にゲームで遊ぼう~♪」
「ワッハハハ!」
お父さんは陸を怒るどころか、一緒にゲームをして遊び始めました。家の中にはお父さんと息子のゲームで楽しく遊ぶ笑い声がありました。
「これが友達親子か!? 恐るべし!?」
勉強の神さまのスタディーは、陸が勉強が嫌いになったのは、お母さんや学校の先生、クラスメートの漣たちに、勉強しろと言われから嫌いになったと思いました。また勉強の仕方が分からなくて問題が解けないから、勉強が嫌いになってしまったと思いました。
「陸がゲーム好きになったのは、お父さんの性ですね。まったく困ったものです。」
勉強の神さまのスタディーが思うには、嫌いな勉強をするより、ゲームをお父さんと一緒にやって楽しい時間を過ごしているから、ゲームが好きになったのだと思いました。
「ただいま!」
そこにお母さんが帰って来ました。
「ワッハハハ!」
陸とお父さんは楽しくゲームをして遊んでいます。陸たちは、お母さんが帰ったのに気づいていません。
「こら!」
お母さんはゲームをしている陸とお父さんを見て怒りました。
「うわあ!?」
陸とお父さんはお母さんが帰ってきたのにビックリしました。
「陸! 宿題をやりなさい!? お父さんも! 陸と一緒にゲームなんかしないで下さい!」
家の中の魔王、お母さんの怒りの攻撃が陸とお父さんを攻めます。
「はい!? すぐに宿題をやります!?」
「すいません!? つい、やってしまいました!?」
「うわあああ!?」
陸とお父さんは、怒っているお母さんが怖いので、ゲームを消して、陸は自分の部屋に逃げて行きました。
「もう、私ばかり陸に嫌われる役じゃないですか。」
本当はお母さんは息子の陸に優しく接したいが、陸がゲームばかりして、勉強ができなくて、テストの成績が悪いので、愛する息子の陸を怒ってでも、勉強させなければいけなかった。
「ごめんね、お母さんばかりに嫌われる役をやらして。」
お父さんはおかあさんが落ち込んでいるのを見て、お父さんはお母さんに謝りました。
「いいんですよ。お父さんは、たまの休みしか陸と遊ぶことができないんですから。」
お母さんも仕事で忙しいお父さんが息子の陸と遊びたいという気持ちを分かっていた。
「せめて、陸の成績が良かったら、勉強しろ、勉強しろって言わなくていいんですけどね。」
お母さんは本音を言った。陸が勉強ができる子で、成績が良ければ、陸に勉強をしろと言わなくていいという。
(親が子供に勉強しろと言うのは、子供が自主的に勉強をする気を無くすので逆効果ですね。)
勉強の神さまのスタディーの声はお父さんとお母さんには聞こえていない。親が子供に勉強しろと言っても、子供は勉強をしない。
「そうだね。それなら陸を塾にでも通わせようか?」
お父さんは陸を塾に通わせて、勉強をさせようと言った。
(塾に通わせても、陸が勉強をやる気が無いので無駄ですね。意味がない。)
勉強の神さまのスタディーは、勉強をやる気が無いのに、子供を塾に通わしても無駄だという。
「塾に通わすお金も高いっていうわよ?」
「貧乏な我が家には無理だね。」
塾に通う費用はとても高いのだった。多くの親が子供を塾に通わせてあげたいと思うが通わせることができないのが普通である。
(お父さんもお母さんも大変ですね。)
勉強ができない陸のことで、お父さんもお母さんも悩んでいました。
(これは勉強の神さまからのサービスです。)
勉強の神さまのスタディーは、食卓のテーブルに、漢字テストで100点を取った用紙を置きました。
(あとは陸が自分から勉強をするようになればOKです。)
勉強の神さまのスタディーは、陸の部屋に向かいました。
ここは陸の部屋。
陸は宿題もしないで、ゲームばかりして、お母さんに怒られて、自分の部屋に戻って勉強をしているはずでした。
「ワッハハハ!」
しかし、陸は部屋に逃げ込むと、勉強をしないで、部屋にあったマンガを読んで笑っていた。
「・・・。」
(こいつ、お父さんとお母さんの気持ちを理解していませんね・・・。)
その陸の姿を見た勉強の神さまのスタディーは呆れた。
「陸! 宿題をやるんじゃなかったんですか!?」
勉強の神さまのスタディーは、マンガを読んでいる陸に言った。
「ゲームでお父さんと仲良く遊んでいたのに、お母さんに勉強しろって怒られて、勉強なんか、やる気になると思う? 無理だよね。」
陸の言うことも、子供の言い分としては正しかった。
「俺だってゲームで遊んでから、あとで宿題をやろうと思ってたもん!」
これは陸のウソである。ゲームで遊べるなら遊び続けて、宿題などやる気はなかった。
「それに、勉強が分からないんだもん。面白くないんだもん。やっぱり勉強なんか嫌いだ。」
そして、これが陸が勉強が嫌いな理由である。
「う~ん。勉強がきらいな陸には、なぜ勉強をしないといけないのかということを、子供目線でなく、大人目線で話さないといけないかもしれないですね。」
勉強の神さまのスタディーは、勉強が嫌いな陸には、子供のように、勉強しろ、勉強をしろと言っても、なぜ勉強をするのかが分かってもらえないような気がした。
「神さま、難しい話はやめてよ。分からないと頭が痛くなるから。」
陸は難しい話は苦手だった。
「そうですね。陸が自分から聞くまでやめときましょう。」
勉強の神さまのスタディーは、なぜ勉強をするのか、なぜ勉強をしなければいけないのかの話をするのはやめた。
「代わりに、陸にでも分かりやすいように、ゲームで例えてあげましょう。」
「わ~い! それがいい!」
勉強の神さまのスタディーは、陸が興味を持つように、わざとゲームという言葉を使いました。
「ゲームのタイトルは1DAY・1UPです。」
「1でい? 1あっぷ?」
日本語でいうと、1日に1つ上がるである。もっと難しくいうと、継続は力なりということになる。
「ゲームの登場人物は、勇者リクとお姫さまの陽菜ちゃん、それと大魔王の漣です。」
「俺と陽菜ちゃんはいいけど、漣も必要なの?」
「分かりやすいように、悪役も必要です。」
「漣が悪役なのは納得。」
こうしてゲームの登場人物が決まりました。
「次にゲームの設定です。先にお姫さまの所にたどり着いた方の勝ちです。」
「なんだ、簡単だね。」
陸はゲームなので気軽にクリアできると思っていました。
「ゴールにお姫さまの陽菜ちゃんがいます。お姫さまの所には10歩でたどり着くことができます。」
「ほうほう。」
ゴールの陽菜ちゃんまで、10歩かかります。
「勇者リクは、勉強ができないので、スタート地点は1からです。」
「うん。」
「大魔王の漣は、勉強ができるので、スタート地点は5からです。」
「え? えええええー!?」
陸はビックリしました。勇者リクと大魔王の漣はスタート地点が違うのだった。
「どうしてスタート地点が違うんだよ!? そんなのズルいよ!?」
陸は勉強の神さまのスタディーに抗議をしました。
「今の陸と漣の勉強ができるのと、勉強ができないの差です。」
勉強の神さまのスタディーは、スタート地点の違いは、勉強ができない陸と、勉強ができる漣の差でした。
「う!? それを言われると・・・。」
陸は勉強ができないので何も言い返せませんでした。
「スタート地点は今の陸と漣の勉強の差ですが、未来を変えることはできます。」
「未来?」
陸は未来と言われてもピンっと分かりませんでした。
「この1DAY・1UPというゲームでは、1日に1っ歩しか進むことができません。」
これが、このゲームである。
「ということは、陸が陽菜ちゃんの元にたどり着くのに10日かかります。漣が陽菜ちゃんの元にたどり着くには5日かかるということになります。」
「ええ!? それじゃあ、ゲームをする前から勝負が決まってるじゃないか?」
陸はスタート地点が違うから、ゲームを始める前から自分が負けることが決まっていると文句を言う。
「そうでしょうか?」
「え?」
「陸のスタート地点が1からなのは、今まで勉強をサボっていたのが原因です。」
「グサ!? それを言わないで・・・。」
「逆に漣のスタート地点が5からなのは、今まで勉強をがんばってきたからです。」
「は、はい・・・そうですね。」
勉強の神さまのスタディーは、スタート地点の違いを、今の勉強の実力の差ということを受け入れない陸に説明する。陸は渋々、受け入れる。
「ゲーム、スタートです!」
「おお!」
1DAY・1UPというゲームが始まりました。
「勉強は嫌だが、ゲームなら、がんばれるぞ!」
陸は勉強ではなく、ゲームと思って、毎日、勉強をがんばり、順調に1日一歩ずつ進んで行きました。
「陸がゲームを初めて4日間、真面目に勉強をして4歩進みました。」
「うん。」
「同じく漣も4歩進み9まで来ました。」
「ほら、やっぱり俺の負けじゃん。」
漣はゴールまで、あと1歩。陸はピンチでした。
「陸はどうして、スタート地点は1からでしたか?」
「勉強をサボっていたからです。」
「ならゴールまで、あと1っ歩の所で、漣が陸みたいに勉強をサボったら、どうなりますか?」
「え?」
陸が勉強が嫌いで勉強をしなかったように、漣も何らかの用事で勉強ができないこともあるのです。
「そうだ! 性格の悪い漣なら、俺に嫌味なことを言って、自慢したり、早く来い! バカ! 勉強ができない奴め! とか言って、俺が近づいて来るまで、立ち止まって、勉強をサボるはずだ!?」
「そうです。相変わらず陸は勉強で考えると呑み込みが早いですね。」
ゲームが開始して、4日目。陸は4、漣は9の所にいた。
「ここで漣は、家族旅行でハワイに旅立ちました。」
「ハワイ旅行!? うらやましい・・・。」
「漣が帰ってくるのは7日後です。」
ゲームなので、連は7日のハワイ旅行に旅立ち、あと一歩の所でゴールできませんでした。
「わかった! 今の間に毎日勉強をして、一歩一歩、進んで行けってことだね。」
「そうです。」
陸はがんばって勉強をして、5、6、7と1日1歩ずつ進んで行きます。
「なんか、飽きてきたな・・・。」
陸はゲームと勉強に飽きてきました。
「陸、サボって、いいんですか?」
「え?」
「今、陸は7ですよ。漣は9にいて、負けているんですよ?」
「う・・・んん。」
「もし陸があと3日、真面目に勉強を続ければ、漣を抜いて、10のゴールの陽菜ちゃんの元に先にたどり着いてゲームに勝てるんですよ。」
「勝てる・・・。」
「それなのに、陸が1日、勉強をサボったら、漣がハワイ旅行から帰って来て、ゲームは引き分けになります。」
「引き分け・・・。」
「もしも陸が2日、勉強をサボったら、漣にゲームで負けるんですよ!? 陽菜ちゃんは漣に取られちゃうんですよ!? それでもいいんですか!?」
「負ける・・・ゲームで俺が負ける・・・。」
陸は勉強の神さまのスタディーの説明を聞いて、勉強って毎日やるもので、サボっちゃあいけないと思った。
「ダメだ!!!」
陸はいきなり大声をあげた。
「ゲームで負けるのも嫌だけど、陽菜ちゃんを漣に取られるのは、もっと嫌だ!!!」
陸のやる気に火がついた。陸は勉強が嫌いなことも忘れて、サボらずに8、9と毎日勉強を進めて、一歩ずつゴールに近づいていく。
「よし! 漣と並んだぞ!」
ついに9同士、陸は漣に並んだ。あれだけ勉強ができない陸でも、毎日勉強をやり続ければ、勉強ができる漣に追いつけたのだ。そして漣は、まだハワイ旅行から戻ってきていない。
「これで俺の勝ちだ!」
ついに陸は10日連続で勉強をし、9で止まっていた漣を抜き、10にたどり着き、お姫さまの陽菜ちゃんの元に着いた。
「やった! 陽菜ちゃんを漣に取られなかったぞ!」
勇者リクはお姫さまの陽菜ちゃんを大魔王の陸の魔の手から守ることができた。
「わ~い! わ~い!」
陸は漣に勝ち、陽菜ちゃんを守れてうれしかった。
「陸、ゲームをクリア、おめでとう。
「ありがとう。神さま。」
陸はゲームをクリアすることができた。勉強の神さまのスタディーも、10日連続で勉強をサボっらずに、がんばった陸を喜んで見た。
「陸、少しは勉強を毎日やることの大切さが分かったかい?」
「うん。俺でも毎日、勉強をやっていれば、漣を追い越すことができるかもしれないんだね。」
「そうです。」
「漣が勉強ができると思うのは、もしかしたら、俺が勉強していないだけなのかもしれない。」
勉強の嫌いな陸。嫌いなはずなのに、勉強の神さまのスタディーが現れてから、少しずつだけど勉強のことを考える時間が増えてきた。ほんの少しだけ勉強に対する考え方が変わってきた。
「おお! いい所に気づきましたね。」
「それほどでも。」
「それは私のセリフです!?」
「そう? ワッハハハ!」
「ワッハハハ!」
勉強の神さまのスタディーは、勉強をしてこなかった陸が、少しずつでも勉強をして、たくましく成長しているのがうれしかった。
つづく。