漢字テスト!?
いよいよ勉強のできない陸と、勉強ができる漣の漢字テスト勝負が始まろうとしている。
ここは学校の教室。先生がやって来た。陸たち生徒は自分の席に座って静かにしている。
「おはよう、みなさん。」
「先生、おはようございます。」
陸たち生徒と学校の先生は朝のあいさつをする。
「それでは1時間目の国語の授業を始めます。」
1時間目の授業、国語が始まった。
「それでは漢字テストを始めます。」
ついに陸と漣の漢字テスト勝負が始まった。
「漢字テストは10問。漢字を書いてもらうだけです。みなさん、がんばってください。それでは始めてください。」
先生が漢字テストの用紙を配り終えると漢字テストの説明をした。そして漢字テストが始まった。
(やってやる! 俺だって、俺だって漢字くらい書けるんだ!)
陸は漢字テストで連との勝負があるのでやる気になっていた。
(おお! 陸がやる気です! これは漢字テストは期待ができるかも!?)
陸のやる気に、勉強の神さまのスタディーは、陸の漢字テストの結果に期待していた。
(できた!)
陸はあっという間に漢字テストを終えました。
(すごい!? もうできたのですか!?)
余りの速さに勉強の神さまのスタディーはビックリしました。そして陸の漢字テスト」の用紙を見ました。
(な、なにも書いていない!?)
勉強が嫌いな陸が、漢字テストで漢字が書けるわけもなく、テストが始まって問題を見て、自分には書けないと諦めてしまったのだった。
「陸!? これはどういうことですか!?」
「だって分からないんだもん・・・。」
「マジか!?」
さっきまでの陸のやる気はなくなっていた。問題の漢字が分からないのだった。思わずビックリした勉強の神さまのスタディーだった。
「だから俺は勝負なんかしたくなかったんだ! 勉強が嫌いな俺が、勉強の勝負で勝てる訳ないじゃないか! どうせ俺なんか・・・。」
陸は自分が勉強ができないことを自覚している。やっぱり連の言うように、自分なんかは、いつまでも勉強ができないと落ち込んでしまう。
「それは違うぞ!」
勉強の神さまのスタディーは、勉強ができないと諦めている陸に言う。
「神さま?」
下を向いていた陸は、勉強の神さまのスタディーを見る。
「陸、それは違う。陸は勉強が嫌いでも、勉強ができない訳でもない。陸は勉強の仕方が分からないだけです!」
勉強の神さまのスタディーは、陸の勉強ができない理由を言う。
「勉強の仕方?」
陸は、勉強がきらい、勉強ができない、勉強の仕方の違いが分からなかった。陸には全て同じに思えるからだ。
「そうです。勉強の仕方です。今の陸はゲームで例えると、剣を装備しないで、モンスターと戦っているようなものです。それは剣を装備することができることを知らない。剣を装備する方法を知らないのと同じです。」
「そういえば・・・。」
勉強の神さまのスタディーは、ゲームが大好きな陸のために、勉強の仕方について、ゲームに例えて説明してくれる。
「せっかくなので、この漢字テストの問題を使って、勉強の仕方を分かるように説明していきましょう。」
「神さま、よろしくお願いします。」
こうして陸は勉強の神さまのスタディーに勉強の仕方を教えてもらうことになった。
「まず陸、いちって感じで書けますか?」
「いち? いちぐらいは書けるよ。」
「じゃあ、書いてください。」
「はい、書けた。」
陸は勉強の神さまのスタディーに言われた通りに、漢字の「一」を書いた。
「陸、どうやって書いたんですか?」
「え? 普通に書いただけだよ?」
「そう、普通に書いただけです。でも書こうと思ったら、前もって漢字の一を知っていないと書けないですよね?」
「そう言われれば・・・。」
漢字を書こうと思ったら、前もって、その漢字を知っていないと書けない。
「でも一は一だよ。」
「そう、それでいいんです。一は一です。1+1=2と同じです。それを知っているから書けるんです。そして一は横線を1本引くだけです。横線を2本引いたものを一とは言いません。」
「俺が漢字を知ってる、漢字を覚えているってこと?」
「そうです。陸が知ってる漢字は分かるので書けます。逆に陸が知らない漢字は分からないので書けません。漢字が分からなければ面白くないので漢字を嫌いになってしまいます。」
陸の勉強嫌いは問題の答えが分からないから、問題に正解できないから、楽しくないので勉強が嫌いになったのです。
「ということは陸が漢字を知っていて、問題の答えの漢字を書くことができて、問題に正解できれば、漢字が楽しくなり、漢字を書くことができるようになるということです。」
「ええ!? 俺は漢字を書くことができるようになんかなれないよ!?」
陸からすると、勉強の神さまのスタディーの言っていることは正しいのだが、陸は漢字を覚えるのが苦手だった。
「そうですか? ゲームに例えると簡単ですよ。」
「ゲームで考えられるの?」
「はい。勇者リクの最初の装備は何ですか?」
「剣と鎧と盾。」
「ほら、覚えられるじゃないですか。」
「え?」
「ゲームのことが覚えられるのなら、漢字も覚えることができますよ。」
「なんだか上手いこと言われているような・・・。」
陸は勉強が嫌いだと言って、勉強をしないで逃げてきた。しかし陸はゲームのことはしっかり覚えているのだった。
「それでは漢字テストいってみましょう!」
「ええ!?」
「そこは、おお! でしょう。」
「おお・・・。」
やっと陸は漢字テストの問題をやることになった。
「第1問、わるいを漢字で書いてください。」
「書けません。」
「どうして書けませんか?」
「覚えてないもん。」
「その通り。覚えてなければ、知らなければ、分かっていなければ書くことはできません。」
「わるいは、こう書きます。」
勉強の神さまのスタディーは、漢字で「悪い」と書いた。
「すごい! 神さま!」
「それほどでも。」
ほめられて勉強の神さまのスタディーは照れた。
「陸、悪いという漢字を覚えるんです。」
「ええ!? 覚えられないよ!?」
「んん~、陸、例えば手に持っているのは何ですか?」
「鉛筆。」
「じゃあ、鉛筆で書いた文字を消すのは何で消しますか?」
「消しゴム。」
「鉛筆や消しゴムをどうやって覚えましたか?」
「え? どうやって覚えたんだろう?」
陸は鉛筆や消しゴムをどうやって覚えたのか分かりませんでした。
「無意識のうち、毎日使っていれば、自然と覚えられますよ。」
「そういうものかな?」
「そういうものです。さっきの漢字の一も、それが一だと、いつの間にか覚えています。」
「でも、ゲームじゃないんだから、悪なんて漢字を何回も使ったり書いたりしたくないな。」
漢字も使っていれば、いつの間に覚えている。若しくは何回も使ったり、書いたりすれば覚えることができます。
「なら悪という漢字を覚えやすいように、部分部分に分けて考えてみましょう。」
「分けて考える?」
「悪という漢字は、簡単にいうと横線4本と縦線が4本。その下に心という漢字を書けばいいだけです。」
「そう言われてみれば。」
「他のものと合わせて考えると、悪という字は、アジアを漢字で書いた時の亜細亜の亜という字の下に心を合わせたら、悪という字になります。そういう覚え方もありますよ。」
「おお! 神さま、すごい!」
「それほどでも。」
陸は神さまから悪という漢字の覚え方と書き方を教わった。学校の先生は、覚え方や書き方は教えてくれない。勉強ができない陸は、初めて漢字の覚え方や書き方を教わったような気がした。
「漢字の覚え方や書き方を教わったのは初めてだよ!」
「私は勉強の神さまですから。」
「神さま、さすが!」
「それほどでも。」
陸は漢字なんか覚えられないと思っていたが、勉強の神さまの分かりやすい説明を聞いて、少しだけ自分でも漢字を覚えられるかもしれないと思った。
「それでは次の問題。やすいを漢字で書け。」
「書けません。」
「え・・・。陸、ゲームで剣を買う時は値段を見て思いませんか? この剣、高いなとか、安いなとか。」
「思うけど、ゲームに漢字は関係ないもん。」
「ズコー!?」
陸は安いという言葉は使っても、安いという漢字は知らないし、覚えていなかった。勉強の神さまのスタディーは思わずこけた。
「漢字の安いは、カタカナのウを書いて、その下に女を書くだけです。」
「おお! それなら俺でも書けるぞ!」
「そうです。陸はやればできる子です。」
「おお! 次の問題をやろう!」
陸は漢字の覚え方や書き方を勉強の神さまのスタディーから聞いて、漢字に対する向き合い方が変わってきた。少しずつだが漢字を書きたくなってきた。
「第3問は、くらいという漢字を書けです。」
「書けません・・・。」
「今までの陸はまったく漢字を知らないし、覚えてないので無理ですね。」
「うん・・・。」
「今日は特別に教えてあげましょう。」
「神さま、ありがとう。」
「暗いという字は、日、立つ、日を書けば、暗いという字になります。」
「なんだ!? それだけでいいのか!?」
「それだけです。」
陸は意外なことを考えていた。学校の先生の授業だと、難しくて嫌いと思っていた漢字だが、勉強の神さまのスタディーの教え方だと、陸にも漢字が簡単に思えた。
「今まで、俺はどうして漢字を覚えてこなかったんだろう?」
「それは陸が自分のことを勉強が嫌いだと思っていたからです。勉強も好きになろうという気持ちがあれば、同じ勉強でも、簡単に思えます。」
「そういうものなんだ。」
陸の中で何かが変わり始めていた。勉強が嫌いということは変わらない。しかし、少しだけなら勉強のことを考えてもいいかなっという気持ちがあった。
「難しいと思えば難しいですが、簡単と思えば簡単なものですよ。」
「おお! なんだか少しだけだけど漢字が面白くなった気がするぜ! なんかゲームみたいに思えてきたかも!」
「ウフフ。」
勉強の神さまのスタディーは、陸が勉強を、漢字と楽しそうに向き合ってくれているのがうれしかった。
そして、漢字テストが終わった。
「それでは漢字テストの用紙を隣の人と交換してください。」
「はい。」
陸は初めて漢字テストの10問に漢字を書きこんだ。なんだか陸はドキドキしていた。まるで自分が勉強をしているみたいで落ち着かなかった。
「はい、陸くん。」
「ほい、陽菜ちゃん。」
陸は隣の席の陽菜ちゃんと答案用紙を交換した。
「それでは先生が前の黒板に回答を書いていきます。みなさんは赤ペンでチェックしていってください。」
「はい。」
先生が黒板に漢字テストの正解を書いていく。陸たち生徒は赤ペンでチャックしていく。
(80点!? 陽菜ちゃんはすごいな。)
陽菜ちゃんの漢字テストの成績は80点だった。10問中8問の正解だった。
(フッ、陸! 陽菜ちゃんの隣の席は俺のものだ! 俺の漢字テストの点数は90点! いつも20点の陸、おまえには勝ち目はない!)
漣は陸を見つめていた。漣の漢字テストは90点だった。漣は陸との漢字テスト勝負は、自分が勝ったと思った。
「今日の漢字テストは難しかったと思いますが、100点だった人いますか?」
先生が生徒に漢字テストの結果を聞いた。
「はい。」
その時、陽菜ちゃんが手を上げた。
「100点満点とは、さすが鈴木さんです。」
先生は陽菜ちゃんが漢字テストで100点を取ったと思った。
「私じゃありません!」
「え?」
「100点を取ったのは・・・陸くんです!」
陽菜ちゃんは自分が100点ではなく、陸が100点を取ったと言った。
「えええええええええ!?」
陸は陽菜ちゃんの方を向いて驚いた。勉強が嫌いな自分が100点を取ったというのだ。
「えええええええええ!?」
学校の先生、クラスメートの全員が、勉強ができないと思っていた陸が漢字テストで100点を取ったと聞いてビックリした。
「鈴木さん、答案用紙を見せて!?」
「はい、先生。」
「本当だ!? 全問正解!? さ、佐藤くんが100点を取っている!?」
先生は腰を抜かしてビックリしました。勉強ができないと思っていた陸が、いきなり漢字テストで100点を取ったからだ。
「カンニングだ!? 陸が100点を取れるはずがない!?」
漣は、陸がなに悪いことをして100点を取ったと思った。漣は陸が100点を取るなど信じられなかった。
「俺はカンニングなんかしていないぞ!?」
陸は必死に無実をアピールするが、日頃の勉強ができない陸を知っているので、先生もクラスメートも陸を信じてくれなかった。
「陸くん、私は陸くんのことを信じているよ。」
「ありがとう。陽菜ちゃん。」
陽菜ちゃんだけは、陸の味方でした。陸は陽菜ちゃんが大好きです。
「私も佐藤くんが100点を取るのが信じられません。」
「そうだ! そうだ!」
先生は陸が勉強ができないと思っているので、陸が100点を取ったことが信じられませんでした。漣たちクラスメートも陸のことを信じていませんでした。そこで先生は黒板に問題を書き始めました。
「むらさきという漢字を佐藤くんが書けたら、佐藤くんがカンニングをせずに100点を取ったと認めましょう。」
「ええ!?」
「みなさんもいいですね?」
「はい!」
先生は陸を試すことにしました。本当に陸が漢字テストで100点を取れるなら、むらさきぐらいの漢字は書けると思ったのです。
(ど、ど、どうしよう!? むらさきなんか書けないよ!?)
陸は紫とい漢字を書くことができません。それは陸が紫という漢字を知らないし、書いたことが無かったから、分からなかったのです。
(紫なんか書く必要はありません!)
勉強の神さまのスタディーは、紫を書かなければいけないのに、紫を書かなくていいというのでした。
(ええ!? どういうこと!?)
陸には勉強の神さまのスタディーの言うことが分かりませんでした。
(紫を書こうとすると難しく思ってしまい、漢字が分からなくなり、書けなくなり、勉強が嫌いになってしまいます。)
(確かに、むらさきなんて漢字を書けないよ!?)
陸には自分が勉強が嫌いなのは、面白くないから勉強が嫌いなんだということが、勉強の神さまのスタディーに出会って分かりました。
(陸、止まるという字と、カタカナのヒという字と、上に横並びに書いてください。その下に糸という字を書いてください。)
(分かった。)
陸は黒板の前に行き、チョークを持って、勉強の神さまのスタディーの言う通りに黒板に書き始めました。
(神さま、これでいいの?)
(はい。漢字なんて難しくありませんよ。それでいいんです。)
陸は勉強の神さまのスタディーに言われた通りに、止まる、ヒ、糸を書いた。
「せ、正解です!? 佐藤くんはカンニングをしていません!?」
「おお!? 陸が答えた!?」
「おお!?」
学校の先生も漣もクラスメートもビックリした。勉強ができないと思っていた陸が紫という漢字をみんなの前で書けたのである。陸は自分がカンニングをしていないと証明した。
(陸、良かったですね。)
(ありがとう。これも神さまのおかげです。)
(それほどでも。)
そう、陸はカンニングはしていないが、勉強の神さまのスタディーに助けてもらったのだった。陸は助けてもらって神さまにお礼をいう。神さまはほめられて照れる。
「陸くん、すごいね!」
「え!?」
「漢字が書けるなんて、陸くん、カッコイイ!」
「それほどでも。アハハハハ。」
陸は陽菜ちゃんにほめられてうれしかった。陸は勉強ができなかった時に、勉強で褒められたことがなかった。なんだか不思議な気持ちになる。
(勉強ができるって、カッコイイことなんだ!?)
陸は初めて嫌いな勉強のことを考えた。お母さん、学校の先生、漣、クラスメートに勉強ができなくてダメだとか、バカだとか言われてきた。でも勉強ができたら、陽菜ちゃんにカッコイイと言われた。
(神さま。)
(なんですか?)
(俺、か、か、漢字の勉強をしてみようかな。)
陸は自分の意志で初めて漢字を勉強してみようと思った。陸の中で、言葉にできない何かが少しずつ変わろうとしていた。
(いいですね。私が教えてあげますよ。)
(ありがとう、神さま。)
(だって私は勉強の神さまなのですから。)
勉強の神さまのスタディーは勉強嫌いの陸が、自ら勉強をしてみようかなと思ってくれたことがうれしかった。
(今度は自分の力で100点を取ってみせるぞ!)
(陸、がんばれ!)
陸も今回は勉強の神さまのスタディーに助けてもらったのは分かっている。陸は神さまに頼らずに自分1人で100点を取ろうとやる気をみせた。
(そして、陽菜ちゃんにほめてもらうんだ!)
陸の勉強をがんばる理由は、陽菜ちゃんにほめてもらうのが楽しみだからだった。
陸、本人は気づいていないが、少しだけ勉強を楽しいと思い始めていた。
つづく。