勉強の神さま、学校に行く
勉強が大っ嫌いな小学6年生の男の子、佐藤陸は勉強の神さまのスタディーと出会った。神さまは陸の大っ嫌いな勉強を、陸の大好きなゲームにして、陸を勉強が大好きにするという。果たして陸は勉強を好きになることができるのだろうか!?
朝。ここは佐藤家。陸の部屋である。
「zzz。」
朝の7時、陸は眠っている。目覚まし時計がピピピピピーっと鳴っているのだが、陸は起きない。
「ん・・・ん・・・朝ですか。」
目を覚まさない陸の代わりに、一緒に眠った勉強の神さまのスタディーが目を覚ます。神さまはかわいいパジャマを着ていた。目を指でかいて眠たそうである。
「陸! 起きなさい!」
目覚まし時計が鳴っても目を覚まさない陸の部屋に、陸のお母さんが起きてこない息子を起こってやって来ました。
「zzz。」
それでも陸は寝ていました。怒ったお母さんは陸の布団を取り上げます。
「起きろ! バカ息子!」
「ギャア!?」
さすがの陸も布団を取り上げられ目が覚めました。
「地震!? 雷!? それとも火事!?」
夢でも見ていたのでしょうか、陸は目が覚めたばかりで何が起きたのかを分かっていません。陸は慌てて左や右を見回します。
「起きる時間です!」
「ギャア!? 鬼ババア!?」
目覚めたばかりの陸には、自分から布団を取り上げて、眠りから覚ますお母さんは鬼のように怖く見えました。
「誰が鬼ババアですか!? 早く起きないと学校に遅刻するわよ!」
「・・・は、はい。」
目が覚めた陸は目の前にいるのはお母さんだと気づきました。そしてお母さんに鬼ババアといって怒らせて、もっとお母さんを怖くしたことを後悔しました。
「まったく陸ったら・・・。」
そう言うと、お母さんは陸の部屋から去って行った。
「はあ・・・嫌だな学校・・・。」
陸はまだ布団の上で座っていました。陸は勉強が嫌いなので、学校に行くのが嫌でした。
「おはよう、陸。」
勉強の神さまのスタディーが目が覚めた陸に朝のあいさつをしました。
「うわあ!? 人形がしゃべった!? 呪いの人形だ!?」
陸は目が覚めたばかりで、目の前の人形がしゃべったことに驚きました。
「こら! 誰が呪いの人形ですか!?」
勉強の神さまのスタディーは呪いの人形と言われて怒りました。
「あ、勉強の神さま。」
「あ、じゃない!? 私は勉強の神さまのスタディーだ!」
陸は思い出した。昨日、陸の家に勉強の神さまが舞い降りたことを。勉強嫌いの陸を、勉強が好きにしてくれるという。
「ああ~学校に行くの嫌だな。」
陸は勉強が嫌いなので、学校に行くのが嫌でした。
「まったく仕方がない、お子さまですね。」
子供のように学校に行くのを嫌がる陸を見て、呆れる勉強の神さまのスタディー。
「陸が学校に行きたくなる、おまじないをかけてあげましょう。」
「本当!? かけて、かけて。」
勉強の神さまのスタディーが陸に学校に行きたくなる、おまじないをかけてくれるという。
「それでは始めます。」
「はい。」
おまじないの始まりです。陸は布団の上に座っています。目の前に勉強の神さまのスタディーがいます。
「まず目を閉じてください。」
陸は目を閉じました。
「学校をゲームで例えます。」
勉強の神さまのスタディーは学校を、陸の大好きなゲームの世界に置き換えて、おまじないをかけることにしました。
「学校は、魔王のお城です。」
「魔王のお城?」
「そうです。学校は魔王のお城です。」
「そう言われてみれば、魔王の城に思えてくる!?」
勉強の神さまのスタディーは、学校を魔王のお城に例えた。勉強が嫌い、学校が嫌いな陸には、まさに学校は魔王のお城だった。
「勉強ができる子ばかりをえこひいきする学校の先生は、魔王。」
「確かに魔王だ!」
「勉強ができるからって、自慢してくる嫌味なクラスメートは、魔王の家来。」
「ハッハッハ! 漣は、家来だ!」
「陸に優しくしてくれるクラスメートの女の子は、お姫さま。」
「お姫さまに陽菜ちゃんはピッタリだ!」
学校で登場する先生とクラスメートの漣と陽菜ちゃんのゲーム中での役が決まった。学校をゲームに置き換えるだけで、陸はなんだか楽しくなってきた。
「そして、陸は勇者です。」
「おお! 俺は勇者リクだ!」
ゲームの主人公の陸は、勇者だった。ゲームが大好きな陸はやる気がでてきた。
「勇者が冒険を休んでいいんですか?」
「ダメだ!? 勇者が冒険をサボるわけにはいかない!」
「勇者がお姫さまを助けなくていいんですか? 悪い魔王の家来がお姫さまに近づいてくるかもしれませんよ?」
「陽菜ちゃん!?」
陸は立ち上がり、すごい速さでパジャマを脱ぎ、学校の制服に着替える。
「陽菜ちゃんは俺が守る! 」
陸は走って、洗面上に顔と歯を洗いに行く。陸は勉強が嫌いで、学校に行くのを嫌がっていたが、自分の好きなゲームに学校を置き換えると、学校に行かなければいけないと思えるようになった。
「陸は単純ですね。」
勉強の神さまのスタディーは、陸を自ら学校に行く気にさせた。神さまは陸が学校に行きたがってくれたのでうれしかった。
ここは佐藤家の食卓。
「おはよう。」
「おお、陸にしては起きてくるのが早い方だな。」
「あれ? お父さん。会社は?」
「今日は休みなんだ。」
陸のお父さんは忙しいサラリーマンで、久しぶりのお休みだった。陸は食卓の椅子に座る。お父さんと陸が座って待っているとお母さんが焼きたてのパンをお皿に乗せてやってきた。
「お父さんも陸に勉強をするように言ってくださいよ。」
「まあまあ、朝から勉強、勉強と言わなくてもいいじゃないか。」
「あなたが甘やかすから、陸が勉強ができないんですよ!」
「たまの休みぐらい息子と楽しくしゃべってもいいじゃないか。」
お母さんとお父さんは陸の勉強のことで朝からケンカをしています。
「お父さんとお母さんも朝からみっともないからケンカなんかしないでよ!?」
子供の陸がお父さんとお母さんのケンカを止めに入ります。
「陸! あなたはさっさと朝ごはんを食べて、学校に行きなさい!」
「はい!? こっちにお母さんのイライラがやってきた!? ごちそうさま!」
陸はお母さんから逃げるように、朝ごはんを素早く食べて、食卓から去って行く。
「行ってきます!」
「気をつけてね!」
陸はカバンを持ち、そのまま靴をはいて、学校に向けて、家を出る。
「陸は元気に育ってるじゃないか。」
「元気があっても勉強ができないんですよ。もう。」
「まあまあ。」
「陸は元気だけが取り柄の子ですからね。」
陸のお母さんは、陸の将来のために、陸に勉強してほしいと思っていた。陸のお父さんは、まだ陸は子供だから、元気に育ってほしいと思っていた。
ここは学校への通学路の道。
「ああ~、お父さんもお母さんも朝からケンカとか、やめてほしい。」
陸は学校に向かって歩きながら、朝ごはんを食べていた時のお父さんとお母さんを思い出していた。
「親がケンカしているのって、嫌ですよね。」
「そうなんだよ。その内容が、俺が勉強できないことでケンカだろ。朝ごはんもおいしいと思えなかった。」
「分かります。」
勉強の神さまのスタディーも陸と一緒に学校に行くみたいだった。お父さんとお母さんのケンカは子供の心に悪かった。
「神さま!?」
「はい?」
陸は神さまが宙を浮きながら、自分の横にいることに気づいてビックリした。
「どうして神さまがいるの!?」
「陸と一緒に学校に行きます。」
「が、学校に!?」
「陸の通っている学校が、どういう学校なのか、一度見ておきます。」
勉強の神さまのスタディーは、陸が勉強が嫌いになった原因が、自宅でお母さんが勉強、勉強とうるさいだけでなく、学校にも原因があると思った。
「勇者リクの仲間の大魔法使いといったところです。」
「大魔法使い!? 神さま、カッコイイ!」
「それほどでも。」
ゲームの勇者に旅の仲間がいるのは普通である。勇者リクと大魔法使いの勉強の神さまのスタディーは、一緒に学校を目指す。
「いざ! 魔王の城へ!」
「おお! なんだか本当にゲームの主人公になった気分だ!」
勉強が好きになるということは、勉強をする学校も好きになる。学校にも行きたくなる。陸の中で少しずつだけど、勉強や学校に対する見方や考え方が変わってきた。
そして陸と勉強の神さまのスタディーは、学校の陸の教室に着いた。
「おはよう、陸くん。」
「おはよう、陽菜ちゃん。」
いつものように優しくカワイイ鈴木陽菜ちゃんが笑顔で陸を迎えてくれる。これだけが学校に行く、陸の楽しみであった。
「かわいい。」
「陽菜ちゃんはかわいいよな。」
「まさにお姫さまです。」
「エヘヘ、そうだろう。」
勉強の神さまのスタディーは、陽菜ちゃんを一目見て、天使のようにカワイイと思った。
「カワイイ! ぬいぐるみ!」
陽菜ちゃんは勉強の神さまのスタディーを見つけた。陽菜ちゃんには、神さまは普通のかわいいぬいぐるみに見えた。
「え、呪いの人形がかわいい・・・。」
「こら!? 誰が呪いの人形だ!?」
「すごい!? ぬいぐるみがしゃべった!?」
「それほどでも。」
陽菜ちゃんにほめられた勉強の神さまのスタディーはうれしくて照れた。陸には呪いの人形のどこが、かわいいのか分からなかった。
「あれ? 神さまは俺にしか見えないはずなのに・・・。」
「お姫さまがかわいいので、お姫さまだけには姿が見えるようにしました。」
「そんなのありか!?」
勉強の神さまのスタディーの姿は陸にしか見えていなかったが、陽菜ちゃんがかわいくて気に入ったので、陽菜ちゃんにも姿を見えるようにして、お姫さまと呼ぶことにした。
「お姫さま。私は勉強の神さまのスタディーと申します。よろしくお願いします。」
「よろしく、スタディーちゃん。かわいい。」
「それほどでも。」
「呪いの人形のはずなのに・・・。」
「こら!? 誰が呪いの人形だ!?」
陽菜ちゃんと勉強の神さまのスタディーはあいさつをした。神さまは自分のことをほめてくれる陽菜ちゃんには照れ、自分のことを悪く言う陸には怒った。
「やい! 陸!」
そこにクラスメートの高橋漣が現れた。漣は成績の良い勉強のできる子である。
「漣!?」
「朝から陽菜ちゃんと遊ぶ暇があったら、勉強しろ!」
「なんだと!?」
漣は自分が勉強ができるので、勉強ができない陸に、毎日のように絡んでくる。もちろん漣は陸が陽菜ちゃんと一緒にいるのが楽しくなかった。
「俺だって勉強をがんばってるんだ!」
「どんなにがんばったって、勉強ができない奴は、勉強ができないままなのさ!」
漣は陸を指さし、自分は勉強ができるからと、勉強のできない陸に言い放つ。
ピーキン!
その時、勉強の神さまのスタディーの目が怒った。これが勉強の神の怒りというものである。
「勉強ができないと勉強ができないまま!? ふざけるな! 勉強を努力してすれば、必ず勉強はできるようになります!」
勉強の神さまのスタディーは、勉強ができない陸のことをバカにする、漣の態度にお怒りになりました。
「漣くん。なにもそんな言い方をしなくても!?」
「陽菜ちゃん。」
陸は陽菜ちゃんに助けてもらってうれしかった。しかし、これでは姫を守る勇者が、逆に姫に守られている勇者であった。
「陸、女に守られて、情けないな!」
「なんだと!?」
「なら俺と勝負しろ!」
「勝負!?」
漣は陸をけしかけて、陸が逃げれないようにしてから、勝負を挑んだ。
「今日の漢字の10問テストで多く正解した方の勝ちだ!」
「え・・・。」
陸は勝負の内容が苦手な漢字テストと聞いて、言葉を失った。
(そんな・・・漢字テストなんか、いつも2,3点しか取ったことないのに・・・、俺が漣に勝てる訳がない!?)
漣の心の中は、勉強ができない自分に対する不安でいっぱいでした。
「こら! やってやろうじゃないか!」
「え!?」
「陸くん!?」
陸は答えていないが、なぜか陸の声で連との漢字テストを受けると返事した。
(なんだ!? 俺は何も言ってないぞ!?)
陸は何がどうなっているのか、分かりませんでした。
「その代わり、俺が勝ったら努力しても勉強ができないままといったのを謝れ!」
「いいだろう。もしも俺が負けたら、謝ってやるよ! その代わり俺が勝ったら、陽菜ちゃんの隣の席を変わってもらおうか!」
「わかった。絶対に負けないからな!」
陸は自分が勝ったら、漣が努力しても勉強ができないと言ったのを謝ってもらうことを、漣は陸と自分の席を代わって、自分が陽菜ちゃんの隣の席に座るという。
(おい!? おい!? 俺はそんなこと一言も言ってないよ!? 俺が漢字テストで、漣に勝てるはずがない!? 陽菜ちゃんと離れたくないよ!?)
陸は心の中で勝負なんかしたくないと思っているが、誰かが自分に変わって自分の声でしゃべっている。
キーンコーンカーンコーン。
その時、授業が始まるチャイムの音がする。
「陸、机の中を整理しておけよ! 陽菜ちゃん、陸と席が変わったら、俺が勉強を教えてあげるね。」
漣は陽菜ちゃんに手を振りながら自分の席に帰って行った。
「絶対に負けるもんか!」
「陸くん、カッコイイ!」
「それほどでも。」
陸は漣に対して、負けたくないという気持ちがありました。勝負する陸を見てカッコイイと思う陽菜ちゃん。それに照れる陸。
(わあ!? わあ!? 漢字テストなんかやりたくないよ!? ・・・あ。)
心の中の陸は、自分に変わって声を出していた者を見つけた。
「神さま!?」
陸に変わって、漣の挑戦を受けたのは勉強の神さまのスタディーだった。
「努力しても勉強ができないと言われて・・・つい。アハハ。」
「ついでも、アハハでもない!? どうするんだ!?」
「え?」
「俺は漢字なんて書けないし、読めないよ!? 勝手に勝負なんかしないでよ!?」
陸は感じが苦手だった。勉強のできない陸は、漢字も書けないし、読めないのだった。陸、大ピンチ!?
「大丈夫です。陸には勉強の神さまがついています。」
勉強の神さまのスタディーはニコニコと笑う。
「不安だ・・・。」
陸は呪いの人形・・・いや、勉強の神さまを信じていなかった。
つづく。