海で遊ぼう2
「ところで、カミーユは? 来てたよな?」
魔法の神、魔神でダークエルフであるカミーユ。確か彼女もこの世界に来ていたはずだが。
「ああ、彼女かい? なんだか、ボクが創造したこの世界が興味深いらしくてね。来るとすぐに探索に行ってしまったよ」
水着姿のティアが答えてくれた。
……なんとなく、直視するのが恥ずかしくて目をそらしてしまうな。それほどに彼女は綺麗だ。
にしても、探索か。
彼女も神格を持つ者だ、ティアの正体くらいなら察するかと思ったのだが、この世界に興味が完全に向いていたから気付かなかったのかな。
「そうか。まあ、そのうちこのビーチにも来るだろう」
「そうだね。一応いなくなる前に場所は伝えておいたから、満足したら来るんじゃないかな?」
「ん。なら大丈夫だろう。……では、早速遊ぶとするか!」
「おー!」
ウルが腕を挙げてノってくれた。
その衝撃で、ウルの大きな胸が揺れた。
後ろ向きでもわかる、このドラゴンの体の性能に感謝……
「では、解散! 各自、自由にどうぞ!」
俺は、自分の故郷である地球の日本の様々な海で遊ぶための道具をティア協力のもとに召喚し、砂浜に敷いたシートの上にドンと置いた。
設備……というか、バーベキューやら休憩スペースの設営の仕上げをし終わると、みんなは良い感じにそれぞれバラけてグループをつくり遊び始めたみたいだ。
「さて、じゃあ俺も何処かに混ぜてもらいますか」
何をするかな。やっぱり最初は泳ごうか……な?
ん? あれは?
「フハハハハ! やるじゃないか! 俺についてくるとは!」
「いやいや、お前もなぁ!」
沖の方から声が聞こえてきたので目を凝らしてみると、ラオウと、ライナーの大男コンビが遠泳をしていた。
獅子の獣人で毛深めのラオウがバタフライしてる……
……なんだろうか、泳ぐ気が失せてきたぞ。
手前の方に目を向けると、
「ほら、足をもっとばたつかせて!」
「んん! は、はなさない……で、ぜったい、はなさないで……ね」
浅瀬でハルネシアとアリスが泳ぎの練習をしていた。
ハルネシアがアリスの体を支え、アリスの泳ぎのサポートをしていた。
どうやらアリスは泳げないらしい。時々ブクブクと沈んでいく。すぐにハルネシアが支え直すのだが。
まあ、海を見るのも初めてというのが大半な中で、泳げる人が多いというのも、運動神経の化け物の集まりのようなこの集団ならではなのだが、それでも泳げないアリスを見ると何故か少しほっこりした。あの大男コンビの後だから尚更なのだが。
……だが、スク水姿なのを見て、ほっこりした気分が霧散した気がした。
「いくわよー! そーれ!」
砂浜ではウルが、珍しく長い銀髪を纏めた姿でビーチボールをサーブしている。
どういうわけか、緩い掛け声とサーブのモーションとは釣り合わないような豪速球でボールが打ち出された。
「アリシアさん! 防衛を!」
ウルの相手側となる陣営ではソフィアが声を張り上げる。
「了解しました」
ソフィアの指示に頷いたアリシアは、人差し指をくいっと曲げると、足下から影が伸び、防壁のような形となった。
どうやらその壁は斜めになっていたらしく、ウルの豪速球は壁に勢いそのまま衝突すると、爆音を鳴らして真上に弾かれた。
「くっ、流石ウル様ですね。風の魔法での加速によるサーブ……いや、それだけじゃない、弾の弾道の空気すら薄くさせて、空気抵抗を減らして、しかも他にも色々な魔法を駆使しての弾丸ですか!」
アリシアが解説めいた呻きをもらす。
「いいえ、ナイスですアリシアさん!」
ソフィアが落ちてきたボールをトスする。トスされたボールは計算され尽くされたかのような完璧なコースで前衛で構えていたサクラの前へと跳んだ。
「ばっちりですよ! ソフィアさん! うりゃあ!」
サクラがスパイクを打つ。とんでもない速度で、まるで流星のように飛翔するボール。
「任せて!」
ウルが片手を上げて向かってくるボールに翳すと、流れ星のような速度で跳んできていたボールが減速してウルの目の前で止まり、それをウルがレシーブ(?)して、それを味方陣営の他の女子が……
「なんだありゃ……」
完全にビーチバレーの域を越えてるな。俺の動体視力だから把握出来ていたが……
もうちょっと和やかなものじゃないのか? 普通は。
……後で柔らかいビニール製のビーチボールを渡そう。
「おう、ユーヤ! お前さんもこっちで飲まないか?」
俺を呼ぶ声に振り替えると、そこではガダンが組立式のテーブル&椅子の休憩スペースで缶ビールを持った手を軽く上げていた。
「ああ、ティアはビールも出してたのか」
懐かしいな……
社畜時代は仕事終わりの晩酌が楽しみで仕方なかったなぁ……
「いや、夜に飲むよ。今飲んだらなんとなく勿体ない気がする」
「おう、そうか。じゃあまた後で一緒に飲もう」
その場は軽く手を振って別れた。
……元コボルトの連中を含む何人かも一緒に飲んでたな。他にも何人か。
せっかくの海なのにな。
まあ、あえての酒なのか。
「んー……他にも色んな集団が出来てるな……釣りをするやつらに……」
ん? 釣り? あの魚は地球の知ってる魚に似てる気がするかと思えば、全く違うような奇特な姿の魚やらが釣られてるが、どういえことだ?
地球の魚もこの世界にはいるのか?
「いるよ?」
俺の思考に返事が。
「ティア……思考を読むな、思考を」
「ふふふ。ごめんね。でも、独り言と疑問顔を見れば誰でもわかると思うよ? この世界ができたばかりの頃は生物はいなかったんだ。流石にボクが一人っきりってのも寂しかったから、何億年か待てば生物も溢れるかなとも思ったけど、色んな世界の色んな時代の生物を呼び込んだんだよ。流石に人とかの知能が発達してて自我があって文明を築くような生物を引き込むのはこの世界の決まりで不可能だからね。あくまでも人間でこの世界に来るようなのは君達くらいのものだけど」
なるほどな。だから、地球の魚に似たようなのとか、全く見覚えのないような生物がいるのか。
「龍神殿ー! ちょっと見てほしいのじゃー!」
海の方から声が聞こえてきたので、見てみると白い水着を着たカミーユが海の上に立ちながら手を振っていた。
褐色の肌に白がよく映える……
「色っぽいなおい……。で、えーっと、カミーユ? どうしたん、だ……?」
海が、揺れてる?
「海の底で面白そうな物を見つけての!」
それ、ヤバイやつじゃ……?
海の底からばかでかい影が浮かび上がってきてるんだが。
「ティア? あ、あれは?」
「……」
「ティア?」
ティアの方を見てみると、冷や汗を流す絶対神様のお姿が。
「……ボクな、たまに面白そうな生き物も引っ張りこんでてね? 中には、君の世界でいうところの神話の時代の生物もいて。君の世界で神話の話になるようなのも、興味本意で釣ってきてはこの世界に封印してみたりしてた時代があってね?」
「つまり……?」
「あれは、リヴァイアサンです」
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