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ティアとの話し合い

お久しぶりです

 無数にあるという世界。それらの多くが危機に瀕した時、絶対神の死をもって、絶対神のリソースを使い、それらの世界の修整を行うというのがティアの存在意義らしい。この世界から出ることも出来ない。


 ティア本人は気にしていないようなことを言っているが……

 死ぬために生まれてきたなんて、そんなの悲しすぎるだろ…?

 これは俺のエゴかもしれないし、絶対神なんて存在を憐れむような真似、ともすれば不敬かもしれないが、それでも俺は……


「! マスターが、またあの目をしてます…! アリシアやアッシュ君達の時と同じ目…!」


 流石に俺の半身で正妻でもあるウルには簡単に見透かされたらしい。俺の心の内を。

 ウルは、美しい金色の瞳を見開き、長く、煌めく白銀の髪を揺らす。


「ん? まさか何かしようってわけじゃないよね? 何度も言うようだけど、ボクは気にしてないし、すぐにどうにかなるものでもないよ?」


 ティアにも見透かされたようだ。こちらも毎度のことだが。

 少しばかり困ったような笑みで、やんわりと止めようとしてくる。


「それでも、そうだとしても、善意の押し売りかもしれないし、ティアは望んでないのかもしれないけど、何とかしたいんだよ……! その、受け入れてます、みたいな態度が俺は気に入らない……!」


 俺には、さっきの悲しそうなティアの方が本心に思えてならないんだ。



 これは、ドラゴンに転生したからだろうか、俺は前世よりも多少思考が変わっているように思える。

 産まれてすぐに、自分の入っていた卵の殻を食べたり、熊をかじったり、そんなこと、前世のままの心では出来なかっただろう。

 今世で敬語を使うことが殆ど無いのは、ドラゴンという上位の種族故(ゆえ)か。今となっては神でもあるが。

 そして、少しばかりは傲慢になったのかもしれない。


「たとえティアが嫌だと言っても、なんとかしてやる」


 こんなことを言ってしまうのだから。

 俺は、意思を込めた強い眼差しをティアに向ける。真剣なんだと伝わるように。


「……ふふふ、キミくらいだよ。ボクにそんなこと言ってくれる人は。……案外と、心地いいものだね。人から心配されたり、助けたいと思われるなんて。

 初めてのことかな。……キミは何時でもボクの初めてだねぇ」 


「……おい、最後のニュアンスに違和感を感じたんだが」


「なんのことかな? それよりも、本当にボクのことを何とかしやうって躍起(やっき)になる必要はないよ。どうせ、今のキミじゃ何も出来ないだろうし?」


「…ぐっ」


 事実なんだろうけど! 何も出来ないのは事実かもしれないけど、そんなにはっきり言われると……!


「だから、キミの人生のサブクエストくらいの感覚でいいよ。ボクのことは」


 サブクエストって、おい。

 ゲームかよ。……そうか、ティアは絶対神だから俺の元居た世界の物も知っているのか。


「ふふふ、嬉しかったよ。何とかしたいって言ってくれて」


 そう言うと、ティアはとても魅力的な笑みを浮かべた。





「さて、話を続けようか」


 ティアは、空になったカップにお茶を注ぎながら言う。

 話のスケールの大きさやら、ティアの悲しい運命やらで、会話に入ってこれなかった他のメンバーも、ハッとしたように、再起動。

 サクラなんかは、ティアに「わ、私も頑張ります! ティア様を助けます!」なんて言ってる。他のメンバーも、それに頷く。


「……ありがとう。……ユーヤ君、良い恋人達だね。

 それで、続けるけど、ボクの役割は明確に決まっているわけで、この世界から出られないわけだよ。だから、全能だけど、それを振るう機会はほぼ無いね。それに、ユーヤ君みたいな、世界の理から外れちゃってるような存在には、更に制限がかかるんだ」


 俺って世界の理から外れてたのか……


「まあ、そんなわけで、彼等はボクがあまり干渉が出来ないから、自然とそういう存在だって分かるわけだ。そして、大抵そういう存在は何かしらやらかすからね」


「やらかすって。頻繁に出現するのか? そういう存在は」


 俺が聞くと、ティアは顎に人差し指をあてて、少し(うな)り、


「んー……、たまに?」


「……たまにって、どのくらいなんだよ?」


「無数にある世界の内から、ボクの感覚でたまに出てくるくらい?」


 ……おい、それってかなりの希少さなんじゃ?


「ちなみに、前回現れたイレギュラーは、神々を相手に喧嘩を売って全面戦争してたね。周辺の世界を合わせて、幾つかの世界が崩壊したよ」


 あははは~っと、ティアが笑っているが、俺たちは開いた口が塞がらない。


「……っ、ちょい待って」


「うん?」


「世界が崩壊? 俺と同じような存在が?」


「うん。だけど、そのイレギュラーはキミよりもよっぽど育ってたけど。……ああ、キミはそのイレギュラーよりも、才能はよっぽどあると思うよ」


 なんのフォローだ。そして、なんの才能だ。


「……盤上の感情(フィルボード)って、イレギュラーなんだよな?」


「うん。ああ、組織の人間全員がそうだとは限らないよ? そのイレギュラーの影響下にある人もボクって干渉が出来ないし」


「盤上の感情のトップがイレギュラーとか?」


「うん。その可能性もあるね。その他にもいるかもしれないし」


 俺は額に手をあてて天を仰ぐ。

 世界を壊せるような存在が、感情の盤上にいるのか……


「ちなみに、ボクにはナナシ君も見えないね」


 あっ、そういえば、俺の腕を落としてくれたあの狂人も。


「ってわけだから、気を付けてね♡」


 ……何をどう気を付けろと……




「はい! 難しい話は終わり! 説明終わり! 

 ところで、サクラ君、お菓子のおかわ「いただきます!」……了解したよ」


 サクラの即答に苦笑しながら、キッチンの方に向かうティア。


 ふむ、確かに、少しばかり暗くなってしまったな。

 ……そうだ。


「さあ、お待たせ。君達もどうぞ」


 ティアがお菓子の盛り合わせを持ってきてくれた。


「ティア、毎回思うんだが、この世界って本当に自然が美しいよな」


「うん? そうだね」


 突拍子もない俺の言葉に少し首を傾げつつも、首肯してくれる。


「今回は夏仕様なんだな?」


「うん、そうだよ。綺麗でしょ?」


「ああ、この世界に召喚された時に見たし、今も窓の外に良い景色が見える」


「うんうん。いちいち反応をしてくれるから、呼び甲斐があるよ。ボクもそうだけど、ユーヤ君は自然が好きだよね」


「ああ、大好きだ。ところで……夏と言えば、海だよな?」



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