これは流石に中二病……
今現在、俺は布団のなかに潜り込み、うずくまっていた。
なんでそんなことをしているのかというと、
「ああ~~! なんであんなことをしてしまったんだろうか? 何だよアレ! 八雲斬り? はん! 自分の名前を技につけるとか痛すぎるわ!!」
そう、つまりはそういうこと。
俺は、今までも何度かそういうことはあった。
何度か中二病と言われても仕方のないようなこともしてきた。
なんせ、決め台詞が「さあ、死合おうか?」なんだし?
だが、今までは別によかった。
元々、社畜だった俺の数少ない趣味と言えば、ゲームをすることと、漫画を読むことだった。それに割ける時間は少なかったが、それでも時間を見つけてはやっていた。
だからか、ここは異世界であるし、多少ははっちゃけてもよかろうと思ったのだ。
だから今までは、口上を述べたり、技名を叫んだりした。別にそれはいい。気にしてない。
だけれども、自分の名字を技名にするのはやりすぎだと思うんだ。
というわけで、俺は家に帰ってから暫くして、自分の部屋で一人になるとそんな気持ちが沸き上がり、堪えきれなくなった。
あの後は、やたら怪我の心配やら、強敵を倒したことへの尊敬やらをしてくる忠犬姉弟を宥め、ヒャレムのロボットの残骸を回収。
町に帰り、研究の好きそうなカミーユとウル、ガダンに残骸を提供。好きにしてくれと任せた。かなり喜んでいたし、ロボットを再現して見せるとか息巻いてもいた。その結果にかなり楽しみでもある。
その後は、皆へのフィルボードが来たことの報告、軽い会議をした後、ウルによる町の住人への念話を使った注意換気のアナウンスをしてもらい、仕事を押し付けたソフィアに小言を貰い、素直に感謝と謝罪をして、ついでに褒めたら赤面してうつむいたソフィアにほっこりしたりとかした。
その後、ご飯を食べたり風呂に入ったりした後に、さあ寝るか、と寝室に来たわけだが……
「~~~~っ!!」
ダメだ。
今思えば、どんどん恥ずかしくなってきた。
どや顔までしていた気がする。
…………いや、どや顔をしても格好いいのだろうけど、この顔は。
そんなことではない。
こんこんっ
ビクゥ
いきなり聞こえてきたノックの音に俺は肩が跳ねる。
やましいことは何も無いのだがな。布団から起きて乱れた服や髪をさっと整える。
「だ、誰だ…?」
「私ですよ~! マスター」
「あと私もですよっ。ユーヤ様」
ウルとサクラか。
「入っていいぞ」
「失礼しまーす」
「失礼します」
二人が部屋に入ってくる。
二人の格好は、この町産のパジャマだ。
あのオネエ言葉の美人さんがこの町に移住したことにより、元々高かった服のレベルが更に上がっている。
二人とも可愛い系のパジャマだな。
にしても、あためて思ったが本当に俺の恋人は可愛いな。
ウルはロングの美しい銀髪を緩く結んでひとくくりにし、前に流している。その顔の造形はまさに女神を思わせるほどに整っているが、性格が出ているのか、親しみやすい微笑を浮かべている。
サクラは同じくロングの美しい白髪をそのまま流している。顔は凛々しくも整っており、女騎士のようであるが、実はポンコツであると俺は知っている。流石に気づいた。その顔は見るからに緊張をしているのが分かる。
「それで? 何をしに来たのかな?」
俺はベッドに胡座をかき、二人に尋ねる。
「ええ。実はですね。マスター」
? なんだ? ウルがニヤニヤしている。
「マスターと私って魂の繋がりがあるじゃないですか」
「ああ。あるな」
「それで私って念話とか得意じゃないですか」
「ああ。そうだな」
「で、私がスキルだった時もマスターと心のなかで会話したりしたじゃないですか」
「ああ。したな」
俺はそろそろこの会話の着地点が見えてきてしまった。
額に汗がツーっと流れる。
「私が頑張ったらマスターの心のなかを覗くのも、不可能ではないわけで」
…………。
「しかも、かなり強く考えていたとしたら、それはもう簡単に心を読めてしまうわけで」
「や、やめろぉぉお!! みなまで言うな!」
俺は再度、ベッドにインした。
布団を被り、耳を塞ぐ。
「……マスター、いいと思いますよ? 八雲斬り」
「やめてくれぇ!!」
ウルがクスクス笑っているのが雰囲気で分かる。
どうやら俺はとんでもない弱味を握られてしまったらしい。
「まあ、マスターをいじめるのはこのくらいにしておいて」
あっ、いじめてた自覚はあったんだな。
「それで、私たちが慰めてあげようと思って」
「ユ、ユーヤ様! えっ、えーっと、その、あのぉ」
サクラが言いよどんでいる。
サクラがこんな風にモジモジするのは……
「何時までたってもウブなのな」
俺は被っていた布団をどかして苦笑してみせる。
「そ、その慰めて差し上げようかと……」
「というのはサクラの建前で、今日のマスターの戦闘が格好よかったから気持ちが盛り上がっちゃったんだよね」
「う、ウル様!?」
サクラが裏切り者を見るような目でウルを見ている。
……なるほど。夜這いか。
「にしたって、何故二人で来たんだ?」
何時もは誰か一人なのに。
ウルが配下ネットワークを恋人間で使って取り決めているらしい。俺の意思を最優先に。
出来た恋人様である。本当に名実ともにウルが正妻だな。
「本当は私の日だったんですけど、サクラが発じょ……ユーヤ様ラブが止まらなくなったらしくて。どうせなら二人で、と」
ウルが、サクラに真っ赤な顔で涙目で睨まれて言葉を変えた。
「えっと、まあ、そういうことです……」
サクラが真っ赤な顔のままで上目使いで言ってくる。
この破壊力は凄いな……。
「大歓迎だ」
是非もないな。
ところで、
「……どうせなら、今日迷惑をかけてしまったソフィアも」
「ここまで来たらアリシアも呼びますか?」
俺とウルとの間で話が進んでいく。
『だったら、まとめてボクの世界に呼んであげるよ?』
と、天の声が。
その声はこの場にいる者、俺、ウル、サクラに聞こえたようだ。サクラがキョロキョロしている。
「その声は……ティアだな?」
『そうだよ。なんか、勇哉君の恋人達が集まるような話を聞いたからね。ボクも顔合わせは必要でしょう? この機会に是非にとね』
「勿論です! アソーティア様! いつかお話ししたいと思ってたんですよ! 正妻として!」
ウルが興奮したように自分の腕の肘から先を上下にブンブン振る。
それに合わせて、大きな胸が…………ごほんごほん。
『そうだね。ボクも正妻様に挨拶をしないとね』
ティアの、あははと笑う雰囲気が伝わってくる。
『というわけで、皆を呼ぶね』
それから、指を鳴らす音が頭に響くと、視界が全く別のものになった。
ふむ。暑い。だが、健康的な暑さだ。日本のジメーとした感じではなく、太陽がバリバリ働いてます! って感じ。
景色は……海辺? 綺麗なビーチがある。沖縄、オーストラリアでも中々ないような綺麗な景色だ。地球のリゾート地の上をいくな。
周囲を見ると、俺の恋人達が勢揃い。どうやら事前説明をしてから呼んだらしく、皆に困惑した様子はない。ただ、この綺麗な光景に驚いてはいるが。
「フフフ、どうかな? 夏バージョン」
後ろから声がかかる。
「やっぱりいいセンスしてるな」
「お褒めに預かり光栄だよ。勇哉君」
声のする方に振り返ると、そこには嬉しそうに破顔する、絶対神であり俺の恋人でもある、ティアの姿が。
「ところで、何時も、俺の背後から現れないといけないのか?」
「あはは。サプライズは必要でしょう? それになんとなく楽しいしね♪」
「そういうもんかな」
「そういうもんだよ。……そして、はじめましてだね。ボクは勇哉君の恋人をさせてもらってる、アソーティアというんだ。君達になら、ティアと呼ばれたいかな」
俺の他の恋人達を見て、ニッコリと微笑むティア。
まるで三千世界に存在する財宝全てを溶かして造り上げたと言われても納得してしまうような輝く美しい金髪を片側は耳にかけ、片側は目を隠す程に伸ばしたストレートよロングヘアー。見える片方の瞳は、これまた神秘的な金色をしている。顔の造形はありえないほどに整っており、尚且つ神々しい。
俺の恋人達も何人かは、見いってしまっている。
そんななか、ジーっと観察していたウルは、ニコッと笑顔になり、
「はじめまして! マスターの正妻をしています、ウルです! うんうん。わかってはいたけど、やっぱりティア様はマスターの恋人に値する人だよ!」
何度も頷きながら、ティアの手を握り、ブンブン上下に振る。
…………若干、ウルが子供っぽいと思えてしまうのは俺だけか?
「ああ、はじめまして、ウル君。あはは。様はつけなくてもいいよ? 正妻である君の方が立場は上だろう?」
「えっ! いいの? それじゃあお言葉に甘えちゃうね! ティア」
早速二人は仲良くなっているな。
他の恋人達はまだ神様相手ということで遠慮があるが。
やっぱりウルは流石だな。
「それじゃあ、ここで長話もなんだし、家の方で話そうか?」
パチンっと指を鳴らすと、そこには何時も見るログハウスが。今までティアに呼ばれた時よりも大きいな。人数が多いからか。
それから、ティアお手製のお茶やらお菓子を振る舞われ、お互いに自己紹介をしたりした後に、暫くは和やかな雰囲気で話し合いがあり、そのあとは、まあ、最初はウルとサクラが夜這いのために俺の部屋に来たことが原因でこの事態になったわけで、そういうことになった。
詳しくは言わないが、複数人相手でも案外なんとかなった、とだけ。
そして、恋人達はとても仲良くなっていた。
よかったよかった。
んー、営みのほうはどのくらい濁せばいいんだろうか?




