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遂に俺の剣が完成した

番外編のゆーくんシリーズは別作品にしました!

この作品の目次の上にあるシリーズのところから飛んで、ブクマ、評価をお願いします!

タイトルは「へっぽこ作者が自分の書いた小説の世界に落ちた話(仮題)」です!



 最近は割りと忙しい日が続いた。


 勇者(笑)やら、フィルボードやら、自称魔王の手下だとか。

 その対応のために魔神であるカミーユをスカウトして町に結界を張ってもらったり。

 町のトップとして、様々な部門の面倒見たり。

 自称魔王についてはアリシアが調査中だが、十中八九は偽物だと思っている。

 

 とまあ、色々やっていたわけだが、今日、遂にガダンから俺の剣が完成したとの知らせがきた。

 ウキウキしてしょうがない。


 そして今は仕事に一段落つけて、この間恋人入りした秘書のソフィアに仕事を押し付け、ガダンの工房にやって来た。付き人としてはアッシュとサクラの忠犬姉弟だ。



「邪魔するぞー!」


 扉を開けて工房に入る。


「おう! 来たな。ユーヤ」


 ガダンが満面の笑みでやって来る。

 髭もじゃの顔に満面の笑みとは。ギャップが凄いな。


「あぁ。俺の剣ができたって聞いたぞ!」


「おう! 渾身のできだぞ!」


 ガダンが奥から一振りな剣を持ってくる。


 俺はそれを受け取り、鞘から抜いて眺める。


「こ、これは……!」


 美しくも、かなりの業物の雰囲気を纏った片刃の剣だ。

 刃は白銀に輝き、波のような模様が浮かんでいる。

 柄と鞘には龍の飾りがついている。  

 見た目は刀だ。


「綺麗……」


「神々しいな……まるでユーヤ様の写し見のようだ」


 忠犬姉弟はこの刀に感動しているようだ。

 


「ガダン! これって……」


「素材と使い手から最も適したように造ったらこんな剣になったんだ。切れ味は保証するぜ」


 そりゃあそうだろう。俺は日本人なわけだし。日本刀に憧れもあった。  

 刀は切れ味に特化した剣だ。刃はとても薄く、他の剣と同様の斬り方は適さない。他のは押し斬る感じで、こっちは引いて斬る感じだ。世界にあるあらゆる刃物の中で、刀が一番切れ味があると聞いたことがある。

 飛んでくる銃弾も、刃にあたるだけで真っ二つに切れるのだとか。


 素材である俺の鱗や牙がそれをくんでくれたのだろうか。



「これを造るのに、狩り部門のやつらとかお前の配下が素材を集めてくれたんだ。感謝しろよ?」


「勿論だ!」


 感謝してもしきれないな。


「この刀には名前はあるのか?」


「ああ。造ったときに自然と名前はつくんだ。鑑定で見てみろ。お前の鑑定なら見れるはず」


「分かった」

  

 俺はこの刀を見てみる。




 【竜神刀・無双】


 白銀神竜ユーヤの一部を素材として造り出された刀。

 並ぶものがないほどの一振りである。武器としては勿論、芸術品としても、とんでもない価値を有する。

 切れ味が素晴らしく、神でさえ畏れる威力を秘めた刀。




「無双…………」


 確か、並ぶものがないほど優れているという意味だったか。

 仰々しい気がするが、この刀を見てしまったらそれでも霞んでしまう。


「ガダン、素晴らしい刀をありがとう」


「いいってことよぉ! 俺も良い経験が出来た」


 俺は刀を腰に差す。


「ユーヤ様! 試し切りに行きましょう!」


 サクラが急かしてくる。


「ああ。行ってみるか」


 俺は颯爽と店を出た。

 かなり興奮している。刀だしな。






「ここらでいいか」


 俺はサクラとアッシュを連れて森の中までやって来た。

 確か、前にもあったな。こういうの。俺の神化の確認のためだったか?


「それでユーヤ様、何を斬りますか?」


 アッシュが尋ねる。


「んー、そうだな。まずはあの岩とか?」


 俺は自分の身長ほどもある岩を指差す。

 森の中にあんな岩があるんだな。


「ユーヤ様なら勿論斬れるでしょうが、普通の剣ならば折れてしまいますね」


 ああ。俺の力に耐えられるかが武器に求める条件だ。


「では二人とも。離れていてくれ」


 俺は腰に差した刀の握りしめ、腰を落とす。


「居合いか、いや立った状態なら抜刀術だったか? まぁ、見よう見まねだが、ユニークスキル武芸者もあるし、なんとかなるだろう」


 俺は心を静めて深呼吸する。


 …………感覚が敏感になる。五感が普段よりもよく感じられる。


 草木が風で揺れる音が耳に心地良い。朝の森の空気が美味い。

 握っている無双がとてもしっくり来る。手に馴染んでいる。重さもあまり感じない。まるで長年使ってきた愛剣のようだ。


 サクラとアッシュが固唾を飲んで見守っている。


 斬るイメージをする。


 …………よし、いける。


「ハッ!!」


 思いっきり刀を振り抜く。






「え?」


 サクラが溢す。


 岩は変わらずそこにある。

 そして振り抜いたままの姿で微動だにしないユーヤの姿も。

 動きは速すぎてよく見えなかったが、確かに岩を切ろうとしたようだった。

 しかし、岩は同じ姿のままだ。


「斬れて……ない?」


「いや、斬った」


 俺は再び動き出す。手首を回し、刀の血を払う動作をする。

 

「武芸者、凄いな。今まではあまり使わなかったがらどう動いたらいいかが何となく分かる。自分のイメージ通りに動けるし。

 …………そしてそれより凄いのはこの刀だな」


 言いながら、刀を鞘にゆっくり納める。


  

 シャリン


 音をたてて刀は鞘に収まった。すると、


「!?」


 岩に斜めに線が入り、それに沿って横にずれていき、ズシィンと音をたてて二つに切れた。


「抵抗が全くなかった。自分でも本当に斬ったのかが怪しいくらいだ。素振りするのと変わらないんじゃないか? だが、なぜか斬ったっていうことは分かったんだよな」


 本当に何だろうな。この刀は。


 俺は二つにわかれた岩に近づき、断面を見てみる。


 凄い綺麗な断面だ。ツルツルしている。


「ユーヤ様、凄すぎます!」


 アッシュが尻尾をブンブン振りながら興奮ぎみに言ってくる。


「いや、凄いのはこの刀だよ」


 俺は目の前の岩に刀を押し当てる。

 すると、スッと抵抗なく沈んでいった。


「!? ……いや、それでもです。ユーヤ様でないなら使いこなせないでしょうし」


 そうだろうか。


 この刀では、つばぜり合いとか出来るのだろうか?

 つばぜり合いになる前に相手の剣が切れるのでは?


 何て、考えていると、



「!! ユーヤ様! 何かが近づいてきます!」 


 サクラが何者かを察知した。

 俺も冷静になって探ってみると、見つけた。

  

「これは……人型?」


 人型の何かが猛スピードでこっちに向かっている。

 あと三秒で俺達と接触するな。いや、俺達の所に向かってきているのか。


 姿が見えた。あれは…………ロボット? 何だかゴツくてメタリックな色合い。少しだけ格好いいと思ってしまった。



 飛んできていたロボットらしきものは俺達の前で静止する。

 アッシュとサクラは俺の前で警戒体制だ。

 

「……お前がユーヤだナ?」

 

 ロボットが尋ねてくる。二人は無視か?


「ああ。そうだが、お前は?」


「僕は盤上の感情(フィルボード)のメンバーの一人。ゴーレム使いのヒャレムといウ」


 ……フィルボードか。こんなところで会うとはな。


「ヒャレムと言ったか、お前のそれはゴーレムか?」 


「ああそうダ。本体は別にいるのを遠隔で動かしていル」


 そんな技術があったのか。


「それで? 何のようかな?」


「ああ。それなんだが…………目の前の犬が邪魔だナ。取りあえず殺しておこウ」


 …………は?

 俺が突然のことで動揺していると、


「喰らエ」


 ロボットが手を二人に向けると、その手のひらに穴が空き、エネルギーが収束され……


「! 二人とも逃げろ!!」


「…!」

「…!」

 

 ロボットの手から、ビームが発射された。

 二人はぎりぎりで避ける。


「おいおい。会っていきなり人の大切な部下にビームかますとか、ご挨拶だな」

  

 俺は今かなりキレている。


「? 何ダ? 何を怒っていル?」


 本気で分かっていないような様子だ。


「僕とお前とで話をするのに邪魔だろウ」


 ロボットからつむがれるその言葉。


 …………なるほど。こいつは狂っているのか?

 いや、価値観が違いすぎるのか?


「俺はお前と分かりあえる気がしねぇな。いっぺん本体で出直してこい。ぶん殴ってやる」


「何を言っていル?」


「一回そのゴーレムぶっ壊す」


「それこそ何を言っていル。このゴーレムは特殊な金属を使うことで耐久性にとても優れていル。理論上は上級神でも完全破壊は不可能ダ」


「へぇ。なら試し切りに丁度良いな。お前の理論がどういう計算なのかは知らないが、根本から違っている」


「何だト? 僕の計算の何が違ウ?」


「俺の存在」


 俺は話はもう終わりだと刀に手を添える。


「二人は手を出さないでくれ」


「えぇ…………私達ではどうやってもあれには傷ひとつつけられそうにありませんし……」


「申し訳ないです、ユーヤ様……!」


 二人は悔しそうに言う。


「気にするな。また強くなればいい。それに今は、俺がお前らが傷つけられそうになったという、ひどく個人的な怒りでこいつを斬る」


 

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