秘書と色々
「な、なんだ? 何か嫌な予感が」
俺はえもいわれぬ寒気に襲われる。
なんというか、こう、捕食者に目をつけられたみたいな。
「? どうしたのですか? ユーヤ様?」
ソフィアが心配して聞いてきてくれる。
「いや、なんでもない……」
なんだったんだろう? まあ、いい。
今はアリシアに自称魔王の調査をさせているので、軽く警戒体制をしかせながらそれぞれで好きなことをする日だ。
「ふむ。やっぱりアリシアじゃなくて俺が行くべき……」
心配だ。いくら自称魔王だといえ、いくらアリシアが情報収集に長けているからといってもな。
「ユーヤ様自ら調査してどうするんですか……。ユーヤ様はこの町のトップなのですよ?」
分かってる。それは重々承知の上なんだが、やはりそれとこれとは別だ。
「……」
「うん? どうしたソフィア?」
ソフィアの様子が少しおかしい。
そわそわしている。
「いえ、あの……勇者(笑)のせいで後回しになっていた話のことですが」
ああ。確かに。そんな話があったな。
「ああ。今、話してくれるのか?」
俺は椅子を座り直し、居住まいをただす。
「はい」
返事をするソフィア。
しかし、中々言い出せない。
「頑張って~ソフィ~」
声が聞こえた気がしたので、その方を見てみる。
「…………何してるんだ、ウル?」
そこには壁に体を隠したウルが。
隠れてはいるが全然隠れきれていない。
「はっ! ば、ばれました」
見つかったのがかなりショックだったようで、背後に雷が落ちる幻覚が見える。
…………いや、あれは実際に魔法で出しているな? なんて芸の細かいことを……
「ウル様!」
ソフィアがウルにすがり付く。
「やっぱり私には無理です!」
「そんなことないよ! 頑張って!」
「ですが……」
「いけるって! 決めたんでしょ?」
「は、はい」
二人で何やら話している。
構図的にはウルがソフィアを勇気づけている感じか。
ソフィアは覚悟を決めたらしい。
「それじゃあ私は本当に居なくなりますね!」
言うとウルは仕事部屋から出ていった。
「ゆ、ユーヤ様!」
「お、おう?」
ソフィアが俺に向き直る。
「……すぅ、はぁ…………よし」
深呼吸数回。
「私、ソフィアはユーヤ・ヤクモ様のことが、好きですわ! 是非、恋仲になってほしいのです!」
自分の髪色に負けない位に顔を赤くしてそう言った。
…………はい?
ちょっ、ちょっと待ってほしい。
確かに俺は最近自分はもしかしたら鈍感系主人公の気質があるやもしれんと思い始めたところだ。だけど、それでもマジか。
ソフィアが俺を?
…………全く思いもよらなかったんだが。
あくまでもソフィアと俺は仕事上の主従関係があるのみ、強いて言えば相手の心の中にズカズカ無神経に入っていっただけだ。
それのどこに惚れられる要素が?
なんて、俺が考えを巡らしていると、
「……ユーヤ様? あの、返事を……」
ソフィアが恐る恐る聞いてくる。
…………どうやら俺は本当に鈍感系らしい。
しかし、ソフィアの気持ちに答えてやらねばなるまい。
俺はソフィアのことを断る理由なんて全くない。
「ああ。こちらこそ、宜しく頼む」
勿論、答えはyesだ。
「……………ふわぁ」
ソフィアは立っていたのを力が抜けたように座り込んでしまう。
「だ、大丈夫か?」
俺は椅子から立ち上がり、ソフィアの下へ歩みより、手を差し伸べる。
「は、はい。安心したら力が抜けてしまいました」
そう言い、薄く微笑む。
なんだろう? 急にとんでもなく可愛く見えてきた。
「おめでとー! ソフィ!」
ウルが入ってくる。
まあ、最初から筒抜けだよな。
俺とウルの間で隠し事なんてほぼ無理だ。
いや、俺からウルへの隠し事か。ウルの秘密なんて知れん。
「ウル様ぁ。やりましたよ。私、やったんですわ」
「うんうん。よく頑張ったよ。ソフィ~」
ウルがソフィアの頭を撫でる。
「それじゃあ次は初夜ですね!」
「「はい?」」
ちょっと待て、ウル。
俺はソフィアがあまりにも初々しいから少し時間を置いた方がいいかと思ってたんだが。
「こういうのは勢いです! やっちゃえ!」
下世話過ぎないか!?
「……ユーヤ様、わ、私は構いません、よ?」
ソフィアがまたもや顔を赤くして言う。
「うふふ~。それじゃあ私は本当に消えますね~。接続も全部切っちゃいます。更に大サービス」
ウルが指を鳴らすと、そこは俺の寝室。
ほんっとうに下世話すぎねーか!?
寝室に取り残された俺とソフィア。
真っ赤な顔でチラチラとこちらを見てくるソフィア。
ああ、もう! 可愛いなチクショウ!
結局は、まあいたしたわけだが。
普段仕事人でクールなソフィアは照れまくり、初々しいことこの上無かった。
ブクマ、評価をお願いします!
「妹勇者は魔王よりも兄に会いたい!」
を宜しくお願いします!




