おいおい……勇者(笑)の次はそいつかよ
それからはそれぞれ自己紹介と共に、女性陣は服を切り替えた。
ソフィアはスーツ姿に。ハルネシアは天使のような衣に。等々……
みんなとてもよく似合っていた。
「うむ。皆覚えたぞ。よろしく頼むのじゃ」
凄いな。全員覚えたのか。
「さて、妾の仕事じゃが、この町を結界で覆えばよいのじゃな?」
カミーユが確認する。
「ああ。それを頼みたいのだが……どんな結界がある?」
「そうじゃなぁ……妾の家のように認識を阻害する結界。弱い敵は通さぬ結界。魔法を弾く結界、等じゃな」
なるほど。色々あるんだな。
「認識を阻害するのは、ここは町だからな……魅力的だが、不便の方が強いかもな。ならば……」
それからは俺やカミーユ、ウルや、ソフィア等、皆を交えて相談した。
すると、
「む? …………主殿、また町の入り口で騒ぎが」
「なんだと?」
アリシアが何か情報を得たらしく、言ってくる。
…………勇者(笑)とフィルボードの一件からそんなに日にちも経っていないというのに。
「今度は誰だよ…?」
俺は目頭を揉みほぐしながら聞く。多すぎないか? こういうの。
「えーっと……」
アリシアが目線をさ迷わせ、言いづらそうにしている。
「どうした? 言ってみ?」
「それが……自分達は魔王の手下だと……」
俺は暫し固まる。
「おいおい…………勇者の次は魔王の手下かよ」
呆れてしまう。
「ほぉー、魔王とな? 今の時代じゃと……
アンデッドの魔王、水系統の魔物の魔王、獣人から成った魔王、悪魔の魔王……それと最強の竜魔王。他にもいるやもしれぬが、知らぬな……。魔王は代替わりが激しいからの~」
カミーユが指折り確認する。
「って、ちょい待ち、魔王って複数体いるのか?」
「なんじゃ? 知らんかったのかの?」
初耳ちゅうの初耳なんだが。
周りを見渡すと、ほとんどの者は知っていたみたいだ。
知らなかったの俺だけ?
あっ、ラオウは知らなかったみたいだ。少し安心した。
「まあ、魔王を詐称する者もおるからの。今回は偽物だと思うのじゃ」
魔王って一体……
「まあ、いい。取り敢えず行ってみるか。メンバーは俺、カミーユ、ウル、アリシア、アリス…………あとアッシュ」
アッシュの目線にやられた。捨てられた子犬みたいなんだぞ?
本物の魔王かの確認のためにカミーユ、デフォルトでウルとアリシア、魔王だからアリス、という風に決めた。
「じゃあ、行くぞ」
会議は中断して、俺たちはそれぞれのやることに別れた。
「キヒヒヒヒ! この町は我らが魔王様、ヴァレンティーア様の許可を得てんのか~? 税金を納めやがれ~!」
町の入り口では黒マントに尖った牙の、THE吸血鬼が数人いた。
しかし、なんというか……パチモン感がする。
にしても、なんて横暴な。
「おい。俺がこの町の代表だが、どういうことだ?」
俺は騒いでる男達に歩みよりながら言う。
「キヒ! お前がそうか~。俺様はかの有名な魔王様、ヴァレンティーア様の配下だぁ! 誰の許可を得てここに町つくってんだぁ?」
なんだろ? この滲み出るチンピラ感。
「町をつくるのにお前らの許可がいるのかぁ。知らなかったなあ」
なんとなくムカついたので俺もイラッとする態度で言う。
「なんだお前! 魔王様が怖くないのか! ヴァレンティーア様にかかればこんな町、一瞬で終わりだぞ! 黙って搾り取られてればいいんだよ!」
小者は捲し立てる。
ステータスを見る限り吸血鬼だが、俺の町の吸血鬼とはまるで違う。
「無理だよ。少なくとも脅すことしか出来ないお前の主ではな」
お前程度の主では無理だろうよ。
「主殿、同じ吸血鬼として不愉快です。私が殺っても?」
アリシアが進言してくる。
キレてるみたいだ。
「ああ。いいぞ」
アリシアが小者の前に立ち塞がる。
「キヒ? なんだ、お前はぁ?」
「黙りなさい」
絶対零度の眼差しでアリシアは言葉を切る。
「一度しか言いませんよ。即刻この場から立ち退きなさい」
アリシアは最初で最後の通告をする。
「なんだと? 誰が居なくなるかよぉ! そんなことはいいからあるもん全部差し出せ……」
今だ言い募ろうとする男に、アリシアは
「そうですか。残念ではないですが、残念です」
その言葉を残し、消える。
「キヒ??」
男は完全にアリシアを見失ったようだ。
「あー、こりゃ何人も要らなかったな」
俺は踵を返し、家に帰りながら話す。
「そうじゃなぁ。そこのアリスだけで十分すぎたじゃろうな。ヴァレンティーアなんて魔王、聞いたこともないしの」
カミーユが答えてくれる。
「お、おい! お前ら、何帰ろうと……」
男が後ろで何かしら騒いでいるが、それも途切れる。
「あなた程度が主殿の歩みを止めようなど、世界の創成から終焉までの期間を経ても、まだ足りないですよ」
それは、百年早いとかのシリーズのことか?
アリシアが俺たちに追い付く。
後ろは見るまでもないが、多分アリシアの影に食われたのだろうな。
話の持っていき方が少々雑で無理矢理になった感が否めない……
くっ、次のナナシsideの話に持っていくには仕方のないこと……
と、ゆーくんは割りきります。
「妹勇者は魔王よりも兄に会いたい!」も是非お読み下さい!
自分なりに、とても良い出来です!
自分の中では、この普通異常よりも。
下のが妹勇者のURLですっ。
http://ncode.syosetu.com/n7968ed




