おいてけぼりだ……
今回はちょっと書くのが大変でした~
変なとこがあったら教えて下さい!
本編どうぞ!
「妾は魔法を得意とする魔神をしておる、カミーユじゃ。竜神殿?」
魅惑のダークエルフ、カミーユからの衝撃の告白。
「魔神とは魔物の神とかではないからの。間違えんでくれよ」
頬杖をついたまま、けだるげな表情で笑う。
俺は服を返しに来たんだけどなぁ。
まさか、こんなところで神様に会うとは。
「いや、考えてみれば分からなくもないか。
当時上位の竜だった俺では気づけず、レジェンドスキルだったウルでやっと気づける結界をつくり、魔物の巣窟であるこんなところに住んでいるんだもんな」
生半可な存在じゃ無理だな。
俺は一人、納得する。
「そんなにたいしたものではないぞ?
ただの引きこもりじゃ」
「引きこもる場所と方法が可笑しいんだよ……」
俺は苦笑いを浮かべる。
「それで竜神殿。妾に何の用かの?」
そうだったな。本題に入ろう。
「ああ。実は数ヵ月前にこの小屋から服とかを拝借させてもらったんだ。無断でお借りしたのは申し訳ない」
俺は頭を下げる。
「ふむ? 服とな? 気づかんかったの。
…………妾の服を欲しがるとはお主変態かの?」
カミーユが腕で自分の体を抱き、言う。
「違いますよ!?」
俺は即座に返答する。
というか、その豊満な胸が腕で潰れてて逆に卑猥なんだが。更に言うとこの人は絶対それを分かってる。
なんというか、カミーユからはティアと似たものを感じる。
この悪戯なかんじとか。
ただ、ティアは小悪魔だけど、カミーユは妖艶さが半端ではないという違いはあるが。
『君は一体、何を思ってるのかな!?』
おっと、幻聴が……
『幻聴じゃないよ! 分かってやってるよね?』
はて、なんのことやら。
『ボクだよ。アソーティアだよ。そしてこれは念話だよ。
それよりも、この人と同列に見られるのはちょっと、いただけないね』
それはすまない。
『まあ、分かればいいよ。
ああ、それと、君とウル君位には念話出来るから。加護の影響みたいだね』
それは便利だ。
俺も恋人とたまに会うだけとは寂しく思うからな。
いつでも話せるのは良いな。
『そうだろう?
今度ウル君と話そうと思ってるんだ。ウル君もボクと話したいみたいだしね』
ああ。それがいいな。
『それじゃあ、ボクも四六時中君を見ている訳にはいかないからね。今はこれで失礼するよ』
ああ、また今度な
『うん。それじゃあ、またね』
俺がティアと話終わると、といっても数秒も経っていないが、高速での話し合いだ。
カミーユが興味深そうに見てくる。
「ほぉ? お主のそれは念話かの?」
「分かるのか?」
「まあの。伊達に魔神はしておらんよ。ただ、相手に関しては全く分からんかったが」
カミーユはお茶を飲みつつ言う。
「ああ。相手は俺の恋人だよ。こんなときにすまない」
いやほんとに。話してる途中に配慮が足りなかったかな。
「構わんよ。それより、恋人とな?
それは両脇の二人は違うのかの?」
カミーユが面白そうに言う。
「あー、まぁ言わない方が楽だったんだが。まあ、いいか。
二人ともそうだし、念話の相手もそうだな」
俺が言うと、ウルとアリシアは頷く。
「ほぉ。それはまた、お主はモテるのじゃな」
「うーん、成り行き?」
「成り行きで恋人が三人かの?
しかもそこの二人はかなりの才を感じるの。凄い女を捕まえたものじゃな」
ほんとは三人ではないがな。
にしても、才能、ね。
「もう一人の方はそれどころではないがな……」
俺は思わず呟く。
「なんじゃ? この二人以上じゃと?
二人とも神に届きうる可能性を持っておるのじゃぞ?」
カミーユには聞こえていたようだ。
まあ、確かに。二人はそう遠くないうちに神になると思う。
「だけど、もう一人は絶対神なんだよな……」
「ブフゥ!」
「うおっ!?」
カミーユが飲んでいたお茶を吹き出した。
俺は無駄に高い身体能力を使ってその飛沫を全て防ぎきる。
「な、なんじゃと!?
絶対神とな!? 妾よりも余程格上ではないか!」
「うん? カミーユは何の位なんだ?」
「いや、中級じゃが……
魔法の繊細な扱い、制御に関しては上級にも負けん自信があるがのじゃ」
カミーユが一転、誇らしげに言う。
まあ、そうだよな。
ある程度の実力があると、ステータス外能力が重視される世界だ。
位はそこまであてにはならないよな。
一芸に特化していると相性なんかもあるし。
「妾の魔法を見せてあげようかの。例えば」
カミーユが指を鳴らす。
小屋のなかが闇に包まれ、
至るところから小さな花火が打ち上げられた。
暗闇に色とりどりの花が咲いたかと思ったら、今度は花火の光の粒が渦巻き、東洋の竜に姿を変え、空中を優雅に飛び回る。
「これは……凄いな」
「えぇ。私でも無理ですよ……」
「綺麗ですね……」
他にも、氷や雷、焔などを使った演出があった。
氷で作られた煌めく蝶などは、いっそ芸術品のようだった。
「とまあ、同時に複数の魔法を細かく制御したりすることじゃな」
俺は思わず拍手をしてしまう。
ウルやアリシアも同じくだ。
「凄いな。魔法の可能性を見た気がするよ。
俺なんかは魔法は威力だけを考えてたもんな……」
反省だな。
「カッカッカッ! まあ、制御が上手いと威力を上げるのにも少なからず役立つと思うがの」
カミーユが笑いながら補足する。
すると、ウルがいきなり立ち上がり、
「し、ししょー!!
師匠と呼んでも良いですか!? いや、呼びます!
師匠! 私を弟子にして下さい!」
カミーユの手を握りしめ、言う。
「…………なんじゃとぉ?」
流石のカミーユもたじたじだ。
「師匠、私は魔法が上手くなりたいんです! 是非ともご教授を!
…………あっ、お借りしてた服です」
ウルが思い出したように、テーブルの上に異次元収納から服を出す。
「ほぉ? それは空間魔法かの?
中々珍しい魔法を使うのじゃな」
カミーユの雰囲気が切り替わったようだ。急に大真面目な顔と目になるんだもんな。
ゾクッとした。
「はい! 私は魔法全般が使えます!
しかし、師匠の魔法を見たら自分のが荒削りも良いところだと気づいたんです!」
「ほう! お主は向上心があって中々良いの!
良かろう! お主を弟子にしてやろう」
二人で盛り上がっている。俺とアリシアはおいてけぼりだ。
「アリシア、俺この世界に生まれてから初めてかもしれん。こんなに疎外感を感じたのは」
「奇遇ですね、主殿。私は忌み子時代を思い出しています」
俺たちは、カミーユとウルの盛り上がりを部屋の隅っこでただ見ていた。
暫くするとウルがこちらに向き直り、
「ということでマスター、師匠はマスターの町に引っ越すことになりました」
「は? どういうことでだよ」
「もぉ! 聞いてなかったんですか?」
「いや、聞いて……というか、はいっていけなかったというか……」
まあ、カミーユには、うちの町の防衛の為の魔法を、例えばこの小屋のような結界を使ってほしかったから結果オーライなんだが……
「よろしく頼むぞ? 竜神殿」
カミーユから差し出された手を俺は釈然としないまま握ったのだった。
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