絶対神様とのあれこれ
「異分子? 不穏な動き? それはなんのことだ? それを聞かないことにはなんとも言えないかな」
俺はティアにそう言う。あの世界に何が起こってるっていうんだ?
「そうだね…………
例えばだけど君が元々いた、地球のある、あの世界から人が紛れ込んできたり、または召喚されたりとか。
君とは全く関係のない世界から異世界人が来たり、いわば侵略者。
もしくは、世界に悲しみを振り撒く人とか。君は忌み子が多すぎると思わなかったかい?
その人達は忌み子と何かの関係があるっぽい。
ぽいっていうのはね、
ボクは全知全能というわけじゃないからわからないこともあるんだ。
可能性を秘めし者とか、忌み子ってのはボクにもよくわからない。
魔王も出現したりしてる。
そう言えば、君のところのアリス君は勇者だよね。
…………っと、こんなところかな? 主にあげると」
ティアが説明をしてくれる。
…………そうか。そんなことが。
とても大事なことを教えてくれたな。忌み子関連に、異世界人、侵略者、か。
…………それに、悲しみを振り撒く人。
なんだってんだよ。俺は配下や恋人達と楽しく暮らせればそれでよかったんだけどなぁ……。
嫌な予感が凄いする。
なんとかそれらからの回避は……
「無理だろうね。君は既に巻き込まれ始めてるし。ナナシ君の件しかり」
あっ、そうか。ナナシもこの話に関係あんのか。じゃあ無理じゃん。巻き込まれんじゃん。逃げられないな。
そうだ、言わなきゃいけないことがあったな。
「ティア、ティアの加護のおかげでナナシの時になんとかなった。助かったよ、ありがとう」
お礼、大事だよな。
「ふふふ、君はそういうところ律儀だよね。うん、お礼を受けとるよ。どういたしまして」
ティアが優しく笑いながら言う。
な、なんだ、この慈愛に満ちた表情は…!
女神感が半端ない。
「変なところに食い付くね」
ティアが苦笑いする。
「そうそう、あの加護のことなんだけど、ボクもよくわかんないことになってる」
はあ? 加護をかけた張本人だろうに。
「うーん、加護をかけるのも初めてだし、あんなに特別な加護になるとは思わなかったかんだよ。
ボクの愛の結果だね?」
ティアが小悪魔な表情、声音、仕草で言う。
あー! もう! なんでこんなピンポイントにグッとくること出来んのかな!
というか、最早、ティアがこういうことを言うときに照れてるのか照れてないのかもわかんないし!
よし!
「うん? どうしたんだい? 勇哉く……!?」
俺は椅子を立ち、ティアに近づき、
その唇に自分の唇を重ねた。
「ん!? んーー!」
ティアがかなり驚いてる。
「ふふん、前の時のおかえしだ。
前はキスされて驚いてるうちに帰されてたからな」
してやったり、という顔で俺は言う。
「や、や、や、やってくれるねえ……、勇哉君?
きみぃ、そんなことして覚悟は出来てるのかなぁ?」
ティアが顔を真っ赤に、動揺しまくりで言ってくる。
「うん? 覚悟か? あるさ。この上ないほどにな?
改めて言わせてもらう。ティア、恋人になってくれないか?」
俺はプロボーズをする。実際に会うのは二回目かもしれない。だけど、関係ないね。好きになってしまったのだから。この小悪魔で、ウブな神様を。
「…………ふ、ふーん、ボクを恋人にね、知ってるかい? ボクって全世界でもかなり偉い神様なんだよ? 絶対神様なんだよ?
なのに、告白とかしちゃうんだね?」
「ああ、もちろん。知った上での告白だな」
「…………本気かい?」
「本気だな。
それと言っとくが、ティアが神様だから好きなんじゃないぞ?
ティアだから好きなんだ」
「…………あぁ、もお……。勇哉君は神たらしの称号もつくべきだよね。ほんっとに。
…………うん。いいよ。恋人になってあげるよ」
ティアが真っ直ぐに俺の目を見つめて答える。
「なってあげる」という言い回しが精一杯の強がりという感じだ。
凄まじく、可愛らしい。
「ありがとう。ティア」
そうして俺とティアは恋人になった。
それからは、まあ、ゴニョゴニョしたよ。
ウブでした。とてもウブでした。
それでも精一杯強がろうと、冷静に見せようとするのが破壊力があった。あの凄まじいほどの美しさと相まって相乗効果だった。
とだけ言っとく。
そうして暫くした後に、俺はティアに言う。
「ティア、あの話の答えなんだが、俺にはまだわからない。
まだ答えを出せそうにない。俺はただ、配下や恋人と楽しく過ごせたらそれで良いと思ってる。
だけど、忌み子の哀しさを知ってるつもりだし、侵略者のことも気になる。だから、実際に見てみてから決めようと思う。
まあ、結局は答えを出すのを後回しにしただけなんだけどな……」
「うん。いいと思うよ。すぐに答えを出す必要はないさ」
ティアは朗らかに笑った。
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