妹勇者のとある日の修行
ーsideアリスー
「おう! 嬢ちゃん! 中々筋がいいぜ!」
私は今、ライナーとかいう男の人に盾を教えてもらってる。
しかし、
「むう……盾、なんか、や」
なんか嫌。しっくりこない。
攻撃を、当たる前提とか、嫌すぎる。
だったら避けていたい。
「な、な、な、なんだとぅ…!」
「でも、やる。お兄ちゃんのために」
お兄ちゃんが、やってくれたら嬉しいっていってたから。
楽しくないけど盾の練習もする。
「だ、旦那のために頑張るたあ……泣かせるねぇ! 嬢ちゃん!」
ライナーさんは目頭を押さえて上を向いてる。
…………なんで?
「よっしゃ! 俺も全力で手伝うぜ! まずは打撃の受け流しだ!」
なんかやる気になってる。
もうちょっと緩くても…………
まあ、頑張るけども。
それからは半日くらい盾の練習をした。
私は使うかはわかんないけど、盾を持った相手との戦いの参考にはなった。
……結果おーらい。
別の日。
今日はアリシアお姉ちゃんに気配の操り方を習う。
「さて、ではまずは私の気配を探ってみてください」
お姉ちゃんは髪を耳にかけながら言う。
…………むう。綺麗。なんか悔しい。
胸も大きいし。
私はアリシアお姉ちゃんの胸を触ってみた後に自分の胸を触ってみる。
お姉ちゃん、むにむに。
私、ペタペタ。
…………がーん。
「何をしているのですか?
…………ああ、なるほど……。
アリス、胸を気にしているのですか?
そんなことする必要ないと思いますが……」
そんなこと! そんなことって言った!
それは胸があるから言えるんだよ!
私はそれから胸について熱く語った。
自分でもこんなに喋るのは珍しいと思う。
アリシアお姉ちゃんもたじたじだ。
でも、お姉ちゃんは私の禁忌にふれてしまったのだ。
報いは受けてほしい。
「で、ですが、主殿だったら胸の大きさなど気にしないと……」
!? なんですと! それをもっと早くに言ってよ!
私は胸は大きい方が良い派から、貴賤はない派に速攻で鞍替えする。
お兄ちゃんが気にしないなら、私も気にしないのだ。
「え、えっと、もう良いのですか?
なら、修行を続けますよ……?」
言うと、アリシアお姉ちゃんは消えた。
ん? 消えた? どこに?
私はきょろきょろしてみる。どこにもいない。
なんで?
「……これが気配の消し方です。
アリスには、これと同じことを出来るように、そして気配を消した私を見つけられるようになってほしいと思っています。」
どこからか声が聞こえる。
んーー? あっ、わかった。
「みっけ」
私は一見何もないところに歩いてくと、腕を広げて飛び込む。
「!?!?」
やっぱりいた。
私に抱きつかれているアリシアお姉ちゃんの姿が、見えるようになる。
「な、何故わかったのですか?」
「んー、なんとなく?」
うん、なんとなく。
「な、なんとなく……
これが天才なのでしょうか……」
アリシアお姉ちゃんは何かを呟いている。
それよりも修行を。お兄ちゃんに誉めてもらうために。
「ん! 続き、するよ?」
「あ、ああ、はい! しましょう、続き」
それからは一日、アリシアお姉ちゃんと気配の探り方、消し方の練習をした。
なんとなくじゃなくて、ちゃんとわかるようになった気がする。
「よく頑張りましたね。
そうそう、ウル様を通しての、主殿からの連絡です。明日は一日休みにして町にでも遊びにいくといい、だそうです。
ウル様も行くそうで、空間魔法で町に跳ぶそうです。
サクラとハルネシア、ソフィアも誘うそうですよ」
! なんか楽しそう! お兄ちゃんにお礼を言わないと!
「ん! アリシアお姉ちゃん! 早く、お兄ちゃんのとこ、行こ!」
アリシアお姉ちゃんの呆れるような、ほのぼのするような顔を私は見なかった。




