さあ、冒険の第一歩を踏み出さ……ないよ?
「さて、取り急ぎすべきなのは……水と食糧の確保に安全な寝床を探すもしくは作ることだな」
俺は口に出してやるべきことを確認する。
俺はふとあることを思い出した。爬虫類のなかには自分の孵化した後の卵の殻を食べるものがいるということだ。
正直なところ、このツルツルで純白な卵の殻を食べてみたくて仕方がない。それほどには腹が減っている。ほら、俺って生まれてからまだ何も食べてないし?
卵の殻ん食べるのに抵抗が少ないのはドラゴン的な思考なのだろうか?
俺は取り敢えず殻を一欠片摘まんで食べてみた。
ひょい、パクっ、パリパリ……ゴクン。ひょい、パクっ、ポリポリ……ひょい、パリポリ………………。
…………ハッ! た、たまごの殻が無くなっている……!! 一体誰がこんなことを……!!
まあ、俺しかいないんだけどさ。無駄にサスペンスドラマっぽさを出してみたけど、これが普通にいけるんだよ殻。せんべいっぽい。
しかも自分のなかで何かが組み合わさって満たされていく感じがして……
【ユーヤ ヤクモは「可能性を秘めし者の卵の殻」を食べたことによりユニークスキル「喰らう者」が発動。
「可能性を秘めし者の卵の殻」はユーヤ ヤクモの魂に適合しました。 ランダムでスキルを獲得します。
…………スキル「鑑てt#fk@pn/.。}@
$>~'>8$¥%@>の介入により、因果率改変されました。獲得するスキルが変更されました。
ユニークスキル「対象無差別」を獲得しました】
おい。流石の俺でも少し動揺するわ。
卵の殻を食べたから喰らう者の効果でスキルを獲得した、かと思ったら、何かが介入して? ユニークスキルげっと?
まじか。
これ多分、介入したのって、絶対神か可能性を秘めし者のことじゃないか?
まあ、考えてもどうせ分からんし、今は優先順位が違う。
「ウル、新しく手に入れたスキルの効果を……」
『成功しました!!』
「はっ?」
『「知恵の天使」より、スキル整理を実行しました。
対象を喰らい、一部を自分のものとする「喰らう者」と、
攻撃する際に対象が選べないが威力が格段に上がる「対象無差別」を融合。
レジェンドスキル「喰らいつくす者」を獲得しました!』
そんな、ほめてほめて! って感じに言われましても。
きれいだが無機質な世界の声と、声質は同じだから違和感が半端ないな。
まあ、ここで言うべきなのは決まってるよな?
「よくやったな! ウル!」
勝手なことするな! って怒れってか?
おまっ、そんなこと言えるかよ!
ウルの言葉の端々に「ほめてー!」ってオーラが透けてるんだよ。そんな娘を怒ることなんか俺には無理だ。
やんわり訂正するぐらいだな。
「ただな、次からはそういうことは俺の許可をとってからにしような……?」
『はい! 分かりました! マスター!』
よかった。いい感じにおさまったみたいだ。いい子で良かった……
「それじゃ、喰らいつくす者の効果を教えてくれ」
『はい、以下の通りです!』
「喰らいつくす者」
喰らった(手を翳しても吸収可能)生物の一部のスキル・ステータスを自分の糧にすることが出来る。
ステータスは相手が格上の場合に吸収しやすい。つまり、自分より弱いか、その生物自体が相当弱い場合、食べてもあまり意味がない。
手を翳すことにより魔法を喰らう(吸収)ことが出来る。一度に吸収可能な容量や、威力、時間はスキル所持者の戦闘力に依存。その魔法を自分の糧に出来る。
同じレジェンドスキルである「知恵の天使」とリンクすることで喰らったモノの情報を管理することが出来る。
『ちなみに、既にリンク済みです!さらに、“戦闘力”とはそのものの持つステータス、スキル、経験や技術などを全てを含めた戦闘における能力のことです! これは数値化は出来ません!』
また、ほめてオーラが凄いでているのだが。
だが、喰らいつくす者、使い勝手が良くなったし、喰える対象が魔法も可能になったか。
これは、チートでイージーモードになるのでは?
…………俺は何考えてんだ。これは現実だ。ラノベでもよくあるだろう。油断、慢心は悲劇を生む。俺は失敗しない。
俺は今一度自分を戒めた。
さて、今度こそ冒険だな。まあ、近場で水場と食糧を探すくらいだろうが。