ここからリスタート。お前らもついてくるだろ?
「大丈夫か? 立てるか?」
俺は部下達に声をかけ、手を貸して立たせていく。
皆立ち上がった後も顔は浮かない。
「そんな暗い顔をするな。
俺もお前たちもまだまだだったということだ。
次に失敗しなければいいんだ。失敗は誰でもする。
大切なのはその後にそれをどういかせるかだ」
俺はそんな何処かで聞いたことのあるような無いような台詞を言う。
ありきたりな言葉だが、俺は本当にその通りだと思っている。
部下達の目にまた炎が燃え出すのがわかる。
「俺はどうやら巻き込まれ体質らしい。なにかしら事件に遭遇しやすいみたいだ。
その時に俺は俺のやりたいことを出来るように強くなりたいんだ。アリシアを助けた時みたいに。アッシュを助けた時みたいに。
…………だけど一人じゃ寂しいからさ、お前らも一緒に成長しよう? 一緒に強くなるんだ
俺にお前らを頼らせてくれよ」
部下達の先程までの落ち込んでいる雰囲気は、もうない。
皆俺をハッキリ見据えて言う。
「「「「はい!」」」」
『…………』
ウルは何かを考え込んでいるようだ。
『マスター、町に帰ったらお願いがあります』
いつになく真剣な声で言ってくる。
ああ、勿論だ。何をして欲しいのかは知らないが、ウルの頼みだ。全力を尽くす。
「さて、奴隷組は全員無事だよな?」
俺は戦闘中もちょくちょく気にしていた奴隷組の方を見やる。
かなり離れたところで隠れてこちらの様子を伺っていたみたいだ。怪我は無さそう。
ラオウやバルザックが強かろうとまだ俺達とはレベルが違うからな。
俺は歩いてく。後ろに部下四人を連れて。
奴隷四人は何かを考え込んでいるのか、真剣な眼差しだ。
「最後は締まらなかったが、俺たちの正体はわかったろ?
大体魔物だったわけだな。
アリシアは吸血鬼で、
サクラとアッシュはコボルトの進化した狼、
ソフィアは人族だ、
………………そして俺は神竜だ」
さて、どういう反応になるかな。
「ん? かんけーないよ? お兄ちゃんはお兄ちゃんだもん」
アリスは変わらず、俺に抱きついてくる。最初の会ったばかりのイメージからは割りと表情は動かず、考えが読みにくいと思っていたが、この時ばかりは「何を当たり前のことを?」と思っているのがよくわかった。
………………うん。かわゆい。
「アタシも知ったことじゃないわね。アンタがアリスを助けてくれたことも、この町を救ったことも変わりないし」
ハルネシアは俺の目を見据えて言う。
割りきったのか? いや、自分の中に一つの基準を持ってるのか。
「僕は半悪魔ですし、主が人でも魔物でも関係ないですね。
というか、戦闘の時に僕に出した指示は何故か心に来るものがありました」
バルザックは冷静に言う。倦まないだからか。ウルに聞いた話だが、悪魔は地域によって亜人とも魔物とも言われているらしい。
バルザックは指示されることが好きなのかな?
「俺も関係ないな。主人よ。世の中は弱肉強食だ、主人はとても強い。それでいいだろ?」
ニヤリと笑ってラオウが言う。
やっぱり戦闘狂いだな。単純だ。
「お前ら…………有り難う。
お前らも俺に力を貸して欲しい。今見ててわかったと思うが俺は何かしらによく巻き込まれるんだ。その時に助けて欲しいんだ。
嫌ならば、俺の町で暮らすだけでもいい。どっちを選んでも奴隷からは解放する」
奴隷四人、いやアリスは俺に抱きついていてよくわからないが、アリスを除いた三人は奴隷解放に軽く驚いているが、直ぐに顔を真剣な顔に戻して宣言しようとする。
「「「勿論力をか「するー! お兄ちゃん手伝う!」す……」」」
アリスに持ってかれてるし。
アリスは他三名を気にせずに、俺から離れて、手をピンっと挙げてぴょんぴょん跳ねながら言った。
…………お兄ちゃんは志半ばにして悶え死にそうです。
「アリス、有り難うな。
ただ、他の人が話してるときはその人が話終えてから自分の話したいことを話そうな」
「ん! わかった」
「さて、途中までしか聞けなかったが、
…………有り難う。お前らも一緒に成長しよう、俺に力を貸してくれ」
「「「は、はい!」」」
大事なことを言えなかったことに硬直していた三人は再起動して返事した。
「ところで……名付けのし直しと眷族化をしたいんだ。
名付けをすれば力とか才能が上がるかも知れないし、俺との繋がりができる。眷族化は名付けとほぼ同等の意味だ。
強制はしない」
「ん? お兄ちゃんとの繋がりができるの? なら、して?」
アリスが言う。興味津々といった様子だ。
「だがアリス、それをしてしまうと俺に敵対出来なくなってしまうんだ。見方を変えれば制限の緩くて特典のある奴隷と言えなくもない。
せっかく奴隷から解放されるのに、また、同じことをすることになるかもしれないんだぞ?」
出来ればしてほしいが、無理矢理や仕方無くではしてほしくなかった。その人のためにも。
「いいよ? お兄ちゃんに敵対とか絶対しないもん」
「ならアタシもするわよ。アリスだけさせるわけにはいかないし。アンタは他の有象無象とは違うみたい。
アンタなら従ってもいいかな?
そうだ、アンタって神様だったんだね。これからは様付けした方がいいかしら?
なんだったらご主人様でもいいんだけど?」
ハルネシアはふざけてか、おちょくてるのか俺にそんなことを言ってくる。
………………照れ隠しと見た。
ならば!
「ご主人様で」
「……えっ?」
「だからご主人様呼びで」
逆にそれに乗っていくスタイル。どういう反応するかな?
多分ハルネシアは俺の焦るところが見たかったんだろうが。
「………………わ、わかったわよ! ご主人様! これでいい!?」
おおぅ、引けなくなったか。
顔が真っ赤だぞ。
ハルネシアって弄ると面白いかも。
「僕もいいですよ。僕のそこそこ長い人生でもあなたは特殊だ。見たことがない。
ああ、いい意味ですよ?
なので、これからもあなたのことを見てみたいですね。そのためには僕ももっと力が欲しい」
「俺もいいぜ! もっと強くなれんなら願ったりかなったりだ!」
男二人は正反対のテンションで告げてくる。
よし、全員俺の配下になることにしてくれたのか。
「お前ら…有り難う。」
それから俺は全員に同じ名前の上書きと眷族化をしていった。
また俺の魂の繋がりが増えたな。心地いい。
奴隷、いや後で解放しに行くからもう違うのか、
元奴隷達はウルと話してみて驚いていた。
どうやらアリス的にはウルもお姉ちゃんになったみたいだった。
ハルネシアは、お姉ちゃんは私だけだったのに…………と少しだけ落ち込んでいた。




