表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/95

謎の男。なにコイツ?こえー

 …………えっ? 誰だコイツ?


 というか俺のディフェンスをあっさり抜いたのか?

 自分で言うのもなんだがかなり俺のディフェンスは高いと思うのだが。それこそアリシアのあのナイフ位でないと傷もつかないくらいには。


 俺はこの危なすぎる男を認識した瞬間に大きく距離をとった。

 切り飛ばされた腕の回収も忘れない。


 男は笑ったまま動かなかった。


 よくわからないが、追撃してこないならありがたい。

 俺は切られた腕を肩に当てて切断面を合わせると再生を発動させる。接合面のところが再生して、くっついた。


 …………何気に再生を使うのは初めてだな。

 少し貧血気味だ。


 俺は手をグーパーさせて感触を確かめる。

 うん。うまくくっついた。


 全く、我ながら冷静すぎるな。腕をはねられてもあんまり動揺していない。本当に俺は社畜だったのだろうか?

 ドラゴンこそが天職です。



『マスター! だだだだだ、大丈夫ですか!?』


「怪我は問題ないな。

 ただ、あいつが目の前にいる時点で大丈夫かはわからん」


 俺の腕を軽く切断出来るようなやつだ。切られるまで俺も存在に気付かなかったし。 

 少なくとも攻撃と隠密が脅威だ。


「ウル、あいつの分析を」


『は、はい……………………あ、あの、称号以外何も分かりませんでした』


 …………なに? あいつについて、知恵を司る者でも知れないのか?

 このスキルさえあれば神でさえも大体わかるのに。やっぱりあいつは普通じゃないな。


「それで? 称号からは何がわかった?」



『相手は…………忌み子の第三形態です』


 忌み子の第三形態?

 そもそも忌み子に第一、第二なんてあったのか?


『ええ…………私も知らなかったのですが、忌み子が第一形態、卵のようなもの。

 アッシュ君の場合の絶望の獣が第二形態、サナギのようなもの。

 そしてあれが第三形態、成体です。強さもイカれ具合も比較になりません。どうやら第三形態は絶望の獣と違って本人に理性や感情が戻るようです。

 つまり、アッシュ君の言っていた、体が自分の思い通りに動かせない、自分の意思に反して暴れてしまうとかではなく、自分の意思で動いているようです』


 成体……マジか。二段階覚醒とかゲームのボスかよ。

 確かに感じる力は半端じゃないが。俺でも勝てるかわからない。というか多分負ける。



 俺の部下たちは俺の負傷を知り、全力でこちらに向かってきている。だが、それでもこいつは動じない。


「ねえねえ? 痛い? 痛いよね? 痛かったら嬉しいなあ!

 おお! 腕がくっついたね! 凄いよ! もう一回切れるね!」


 そんなことを言ってくる。確かにイカれてるな。

 アッシュの時と違って自我がハッキリしていて自分の意思で行動するから、なおのことたちが悪い。


 こいつの様子には構わずに部下たちが一斉に攻撃をする。


「やあああ!」


「うん?……おっと」


 サクラが狼の姿のまま、凄い勢いで爪を降り下ろすが、こいつは二歩ほど移動すると避けてしまった。

 

「グァアアアア!」


「よっと!」


 アッシュも狼のまま口を開けて噛みつきに行くが、受け流して後ろにとばしてしまった。


「はあああ!」


「アハハハ! 当たらないね!」


 アリシアが黒血のナイフで連撃をしかけるが、ひらりひらりと避けまくった。かすりもしない。


 ソフィアは強張った顔で観察をしている。ソフィアでも打開策が思い付かないようだ。



 部下たちが一旦攻撃をやめて俺の前に集合し、陣形を組んだ。


「主殿! ご無事ですか!? 申し訳ありません……我々が近くにいながらそのような大怪我をさせてしまいました……」


 アリシアが謝罪してくる。

 その顔には焦りからか、申し訳なさからか、一筋の汗が。


「気にするな。俺でもあいつには対処出来なかったんだ仕方ないさ」


 本当に。あいつはなにもんだよ? 忌み子の第三形態って全員そんなに強いのか?


 ちなみにウルを介してこの情報は部下にも伝わっている。



「なあ、お前。こんなところに何しに来た?

 というかこの魔物の発生自体はお前のせいじゃないのか?」


 俺はそう問う。もしかしたら今回の事件もこいつが裏で手を引いているのかもしれん。


「えー? ん~、遊びに? なんか愉しそうなことがおこってたからさ♪

 ……だけど、もうちょっと待った方が楽しめそうだね!」


 やつは俺と部下たちを見回した後に笑いながら言う。


「いやあ! 中々面白いのが揃ってるよ! 鬼神に神喰狼に精霊神の卵とはね!

 …………ただ、君が一番面白いよ。」


 からからと笑っていたが、急に顔を真顔にして俺に向かって言った。

 情緒不安定かよ。というか、俺が面白い?

 その後に説明をしてくれた。


「君は何かしらの加護を持っているね? それも相当上位の。僕でも今は手を出せないかな! 君の加護は流石の僕でもちょっと恐い!」


 …………どうやらコイツはティアの加護に気づいたらしい。

 しかも加護のせいで今回は手を出すのはやめるとも。

 

 ティア……………恩に着る。


「それじゃあ今日はもういくね! 次に会えるのを楽しみにしてるよ!」


 

 …………何故だろうか。俺はこいつにまた会う。確信している。


「待ってくれ、名前を、名前を教えてくれ」


「うん? ああ! そうだったね! 僕の名前はナナシだよ。

 またね!」


 そう言い残し、ナナシは消えた。



 同時に部下たちが地面に崩れ落ちる。緊張の糸が切れたみたいだ。激しく息をしている。

 狼の兄妹は人型に戻った。服は狼化のときにはどういう仕組みか消えるらしい。今は破れることもなくちゃんと着ている。



 …………俺はナナシと対話がしてみたい。あいつには何の考えがあってそのようなことをするのだろうか。忌み子……だからかな。



 何はともあれ戦力を増やそう。

 俺はこういう事件に巻き込まれやすいらしい。ここ数ヶ月で忌み子に三人も会うとは。絶対神の興味が加護に変わってもその巻き込まれ体質は変わらなかったな。


 鬼神やフェンリルってのはアリシア達のことだろうな。

 進化を重ねたらいずれはそうなるってことか?

 将来が楽しみだな。


 俺は強くなることを決意すると、座り込んでいる部下達のフォローに向かった。


面白いと思ってくれたらブクマ、評価をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ