この町には、足りないものがある!
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前話に登場人物紹介を入れました。
「この町には足りないものがある」
俺はそう、会議室に集まった人たちに向けて断言する。
メンバーは俺、アリシア、狼兄妹、ソフィア、グレイン、ガダン、エミリー、ライナー、その他ハイコボルトに吸血鬼が数名だ。そしてウル。
「? 足りないものですか? それは一体?」
この町はとても良い町だ。自然が豊かで、建物はこの世界からしたらかなり進んだ技術を使い、区画整理も行っている。
住人は約100名程だが、まだまだ受け入れられる。
食べ物はハイコボルトや吸血鬼が狩りに採取にと頑張ってくれているおかけで不自由はない。水も湖がすぐそばにあるので問題ない。
服や、家具類、金物などはハイコボルトに、ガダン、エミリー、人間の数名が生産してくれている。かなり上等なものだ。日に日に腕も上がっている。
一見すると何も問題ないように思える。だが、足りないものがある。
「足りないもの、それは医療機関だ」
そう、医療機関。今まではハイコボルト達の採ってくる薬草なんかで賄えていたが、本格的に考えるべき問題だ。
「この町には回復魔法の使い手がいない。
そもそも、回復魔法は病気などは治せるのか? どれほど万能なんだ?」
この世界には魔法がある。だからそれに頼るのが一番だと思った。
一つの手としては俺が回復魔法の使える魔物を喰うのがあるが、俺が居ないときなんかは治療できない。
俺はそこそこ忙しい。それを専門として仕事してくれる人が必要だ。
「それは確かに必要ですな。魔物は病気などはかかりにくいですが、人間は別です。それに、怪我人等も出るでしょう」
そうだろう?
「だから、なんとかその部門を設立したいのだが、人が居ないと…………」
俺たちは悩みこむ。
「発言宜しいですか?」
ソフィアが小さく手を挙げる。いつの間にか発言は許可制になったのか?
「勿論いいぞ」
「はい。私が思いますに、回復魔法の使い手は絶対数が少ないです。種族によって魔法の得手不得手もありますしね。
なのでその人材を手に入れるのになりふりは構っていられないかと思いますわ。
なので、奴隷を購入するのが一番現実的では無いでしょうか?
宛もなく探すよりは確実ではないでしょうか?
奴隷とは犯罪、借金、戦争等の様々な理由でなりますので、人材は豊富なんですよ」
…………奴隷? ああ。そう言えばこの世界では一般的だったか。ソフィア達も元々奴隷に成りそうだったからこの町に来たんだし。
俺は奴隷制度に対して扱いが酷すぎなければあっても良いと思っている。
罪人を罰する時は牢屋に入れるより、働かせた方が余程生産的だ。それに労働力として見れば、この位の文明だと必要不可欠に思える。
地球で奴隷が廃れたのも裏切りの可能性があることが少なからず理由としてあると思う。あとは必要なくなったから、自分も奴隷に落ちるのが嫌だから、とかか?
魔法があるこの世界なら奴隷は裏切れないのではないか?
ならば尚更存在するだろう。
だから俺は扱いさえまともならば奴隷もありだ。
他の人達はどうかな?
………………概ね、あり、か?
魔物勢は強いものが弱いものを従えるのは当然! って感じだし。
人間はこの世界の住人だからかそんなに抵抗は無いらしい。
「旦那、俺もありだと思いますぜ。冒険者も、仲間に奴隷を連れているのは、少なからずいますし」
ライナーが言う。
こいつは盾役に向いていると教えてやったら直ぐに練習を始めた。素直だった。
ハイコボルト達に頼んで自分の体並みにでかい大盾を貰っていた。
こいつの成長が楽しみでもある。
「それじゃあ、奴隷を買いにいくか。
ただ、奴隷に対して差別なんかするのは許さん。いいな?」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
「それで、奴隷を買いにいくならフォーレンでいいのかな?」
「旦那。奴隷ならフォーレンじゃなくて王都のがいいですぜ。
あそこは色んなもんが集まる」
王都か。正式名称は別にあるらしいがあんまりそれで呼ぶ人はいないらしい。
「それじゃあ、王都に行こう。
メンバーは…………」
ヤバイ。ものっそい皆キラキラした目で俺を見てくる。
「主殿、勿論私を連れていきますよね?」
「ユーヤ様、私って恋人ですよね?」
「ユーヤ様、護衛が必要です。是非俺に。」
「私は道がわかりますわ。連れていくべきかと。それになんてたって秘書ですし」
「たまには俺達もユーヤ様と出掛けたいよな?」
「ああ。俺達も連れていってほしい。」
『そうだー、私も連れてけー』
今度はものっそいアピールを始めた。
全員連れていけるかよ!!
というかハイコボルト諸君は町には行きづらいだろうよ。見た目的に。まだその時ではない。その内普通に町に行ける程には馴染んでほしい。いや、人間に受け入れられてほしい。
………………ウルよ、君は連れてく連れてかないって無いだろう?
ノリか? またノリなのか?
………………にしても煩い。
「だあああ!! そんなに連れてけるか!
一緒に行くのは俺直属の部下とソフィアだけだ。はい、決まり!」
そして数日後、俺達は王都に出発した。




