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普通で異常な社畜のドラゴン転生記  作者: 狼猫 ゆ狐
四章・村をつくる
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スカウトする

7/6日の昼に異世界転生/転位、日間ファンタジーランキング88位になりました!

おめでとー!!これからも頑張ります!



本編どうぞ!

 俺は一人で自分の館の部屋にいる。俺の仕事部屋みたいな部屋だ。結構広めなんだがな。


 アリシア達は、本当は何時でも護衛していたいと言ってた。だけど、俺に護衛が必要になることなんてそうそうないと思うんだが。


 そもそも俺になんかあったらウルが直ぐに配下全員に知らせてくれると思う。


 ウルさんは最高の防犯セキュリティ。



「ふむ。落ち着くな。我が家に帰ってきたって気がする。たった二、三日しか離れていなかったのにな。そう思う程にはこの家を自分の家だって認識してるってことかな」



 俺はしみじみと呟き、お茶を飲む。

 ああ、茶がうまい。

 

 コボルト達が植物の知識が豊富で良かったとつくづく思う。

 ウルの知識とハイコボルト達の記憶からお茶を作れた。



 コンコン、


「ソフィアです」


 ああ、さっきソフィアに声かけといたのが来たか。


「入ってくれ」


「失礼します」



 さて、交渉の始まりだ。元社畜の腕の見せどころだな。


 まあ実際、俺は下手に出ることが多かったから上の立場からの交渉には慣れてないんだけどね。


 それと、ただ引き受けてくれるだけじゃ駄目だ。俺は最高の着地点に持っていきたい。



「良く来てくれた。今お茶をいれよう。お菓子は食うか?」


 ソフィアは少し困惑しているみたいだ。


「は、はい。いただきますわ。

 …………お菓子なんてそんなに食べたことないわよ……」


 最後の呟きは本人は聞こえていないと思っているのかもしれないが、俺にはバッチリ聞こえた。



「そう堅くならなくてもいいんだぞ?

 作法なんかも気にしなくていい」


「ああ、助かりますわ。何分、作法などに疎いものですから……」


 ただの町人でお茶の作法を知っている者なんてそうそういない。


 そう考えたらソフィアは十分すぎるほどに礼儀正しい。



「どうぞ。紅茶とクッキーだ。砂糖はテーブルの上にあるから好きなだけ入れるといい」


「好きなだけ…………」


 ソフィアは少し呆然としているな。砂糖を好きなだけなんて、初めてなのだろう。


 砂糖は高いしな。この村ではまだ作れていないのでフォーレンで買ったものだ。


 ウルの知識があってハイコボルト達がいれば砂糖も作れそうな気がするが。

 


「ああ、砂糖はあまり入れすぎても甘ったるくなってしまうぞ? 適量が一番だ。」



 俺は冗談めかして言う。


 ソフィアは砂糖をドバッと入れてしまいそうな気がしたからな。慣れてないんだろう。


「は、はい」


 ソフィアはスプーンで砂糖をすくい、慎重にちょびちょび紅茶に入れていく。


 真剣すぎて少し可愛く見えるな。



「いただきますわ………………! とても美味しいです」


 感動したように言ってくる。

 

「そうか。それは良かった。クッキーも食べてみてくれ?」


 言われてソフィアはクッキーを一枚食べた。

 そうすると、思った以上に美味しかったのか次々と口に運んでは顔を綻ばせている。



「……………………あっ……すみません。お見苦しいところをお見せして…………」


「ははは、いやいや、口にあったようで良かった。このクッキーは俺の手作りだからさ」


「えっ!? ユーヤ様の手作りなのですか?

 …………すごい」


「なんだったら今度作り方を教えようか?」


「! よろしいのですか!? 是非!」


 

 思った通り食いついてきた。ソフィアは家事スキルが高かったし、甘いものが好きみたいだから興味を持ってくれるかと思ったが案の定だった。



 出だしは上々か? 本題に入ろう。




「ああ。今度教えるよ。

 …………ところでだが、ソフィアは俺の秘書になる気はないか?」


「? 秘書ですか?」


 この反応は、そもそも秘書が何かわかっていないのかな?



「仕事の手伝いをしたり、予定の管理をしたりする、付き人みたいなものだ。かなり重要な仕事だな」


「そのような仕事を私が?」


「ああ。お前に頼みたい。

 …………そうだな、お前は自分が人よりも頭が良いと思ったことはないかな?」


 称号で知っているが、本人に直接聞いてみる。


「私は私以外の人間になったことが無いので私の頭脳がどの程度のものかは比較のしようがないです」

 

 その返し自体頭が良いと思うんだが。


「いや、断言するよ。お前は頭が良い。神竜である俺が言うんだ、相当だよ?」


「私が……?」


「ああ。そして、お前に俺の秘書になって欲しいんだ」


「…………」


 少し揺らいでいるな。


「俺がお前をスカウトしてるのは何も頭が良いからだけじゃないんだ」


「えっ?」



「お前は最初に俺と会ったときに移民達を落ち着かせようとしていたな?

 頭の良いお前のことだから、それが損な役割であるとわかっていたはずだ。

 安全かどうかもわからない魔物の前で目立つことになるんだから。

 最悪お前は魔物の味方だと言われても仕方のない状況だった。

 他にも、どう考えても黙って大人しくしているのが一番だったはずだ。

 それなのに、お前は歩み出てきた。本当は自分が一番怖かっただろうに。他人のために。俺たちの注目を集めるために。移民達を庇うように。

 違うか? 違わないだろう?

 俺はそんな優しくて、勇気のあるお前だからこそスカウトしてるんだ」


 俺の前に歩み出てきた時、ソフィアは少し体が震えていたんだ。

 状況を正しく理解できてしまうから。



「…………」


 ソフィアは黙ったまま何も言わない。



「俺はお前だから秘書に欲しいんだ。俺の秘書にはお前が、お前しかいないんだ。俺はお前が欲しい」


 ソフィアは微動だにしなかったが、やがて



「…………なんなんですか。わかったように言って、人の心のなかにずかずかと入ってきて、

………………お前しかいない? お前が欲しい?

 

 私は今まで誰からも頼られませんでしたよ?


 私は誰からも必要とされたことなんてありませんでしたよ?


 やりたくなくても、やってきたんですよ?


 やってくれて当然で、感謝なんてされませんでしたよ?


 優しいなんて、勇気があるなんて、言ってくれる人は、いませんでしたよ?


 私の、ことを、理解してくれる、人なんて、いませんでしたよ?


 私は、わたし、は…………


 ………………………………なのに、それなのに……!」



 ソフィアは何時も損な役割を引き受けてきたのだろう。時には震えながら。

 半ば押し付けられるように。誰にも理解されずに。


 頭が良いから、それが出来るから。優しいから。



 それならやらなければいいだとか、人間だから、大人だからやって当然だとか、見返りを求めるなだとか、言うことはできるだろう。



 だけど、人一倍優しくて周りのために行動してきたこいつに掛けるべき言葉はそれじゃない。



「俺が知っている。お前のことを、俺が知っている。

 これからは、俺がお前のことを知っていく。

 お前に頼る。お前を必要とする。何度でもありがとうと言う。何度でも、お前は立派なやつだと言う。お前を理解したいんだ。

 なあ、俺の秘書になってくれよ?」


 ソフィアの目が大きく見開かれる。その後、目をつぶり、軽く震えながら、


「…………………………そんなこと、言われたら、頷くしか無いじゃないですか…………!」


「ありがとう。これから宜しく頼むよ?」


「はい!」



 ソフィアの頬には一筋の涙が流れていた。







『おちた………………最早最速タイムじゃないですか?…………はあ』


 本当に聞こえない。最早こういう時のウルの言葉を聞き取るのを諦めつつある。


ソフィアの心情はうまく表現できたでしょうか?

ユーヤの天然人たらしは凄まじいですねぇ。察しがよすぎて、お人好しだったらあのようになれるのでしょうか?


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