ハイコボルトよ、大袈裟すぎないか?
「おおっ! 村をつくれるようになりましたか!」
グレインが嬉しそうに言う。
「ああ。人間側に許可はとったし、色々融通をきかせてもらえるようになる。
それに、予定地の下見もしてきた。今はアリシアが安全性の確認中だ。
全て順調にすすんでいるよ」
ハイコボルト達がポカンとしている。
「な、なんと…………そこまでのことをたった一日もせずにやってしまわれるとは…………流石ですな」
皆、ものっそいキラキラした目で俺のことを見てくる。
うーん、照れるな。
「ああ、だが一つだけ。
不幸な目に遭った人間達を何人か、こちらで引き取ることになった。
ちゃんと働かせるつもりだ。
ただ、媚びへつらうことも、見下すこともするな。対等に扱え?」
皆、ざわつき始める。
暫くすると収まり、アッシュが進み出てきて、言う。
「わかりました。ユーヤ様、我々一族は人間とも対等に接しましょう」
アッシュの顔は俺と始めて遭った時よりもさっぱりしている。
ふむ。やっぱり家族との時間をとって正解だったか。
憑き物が取れたような顔をしてる。
「うん。それで良い。ただ、相手が見下してきたり、攻撃してきたら遠慮なく迎撃しろ?
仲良くしようとして殺されましたー、じゃ意味がないからな。
お前らの安全の方がよほど大切だ。お前らは皆、俺の配下で家族のようなもんなんだからな」
皆、今度は感極まっている。
「ああ……ユーヤ様、我々は何が有ろうと一生貴方に付いていきます……!」
サクラとアッシュが代表して言ってくる。
グレインを始めとするオッサン、じいさん達は男泣きをしている。
…………大袈裟な一族だな。
『ほんっっっっとに人たらしなんだから……』
またウルが言っている気がするがやっぱり聞こえない。
何言ってんだろ?
『いえ? 何も言っていませんとも』
…………そうか。
「それじゃあ、移動しよう。皆付いてこい」
「「「「「「はい! 付いていきます!!!」」」」」」
………………君達、さっきの一生付いていきます!ってのを、まだ引きずってない?
「ここがそうだ」
湖に着いた。
「綺麗……」
サクラが感動している。他にも女性陣は皆感動している。
男衆は「おおー! 良いとこだな! 水場が近いぞ!」とか言ってる。
性格が出るな。まあ、アッシュなんかは静かに感じ入ってるみたいだがな。
オッサン達よ、アッシュを見習え。
「辺りにはもう危険な魔物は居なさそうだ。だろ? アリシア?」
俺がそう言うと、俺の側にシュバッ! とアリシアが現れて、
「ええ。全て始末し終えました。主殿。
全て一ヶ所に纏めて有ります。後で暴食を司る者での吸収をお願いします」
なんて言ってくる。
…………うん。やっぱり有能すぎ。
「ああ、それなんだが、ハイコボルト達に解体をさせる。
俺が居なくとも村が機能するようにしたいからな。
分かったかな、君達?」
俺はハイコボルト達に向き直って言う。
「はい! 勿論です!
おい! 解体が得意なもの、アリシア様に場所を教えてもらって、解体に行け!」
グレインが指示を出す。
ちなみに、俺に話しかけられたら、ハイコボルト達は皆、尻尾をフリフリしながら答えるんだ。可愛いだろ?
あのクールな感じのアッシュでさえも、無表情なのに、俺との会話の時だけ、尻尾を振るんだ。
なんか、こう、グッとくるよな。
アッシュは絶望の獣の時の会話の印象が強かったけど、実際はとても静かでクールな子だった。
サクラはカッコいい系の見た目なのに、忠犬だった。
俺と話してる時なんかは、尻尾をブンブン振って、今幸せです! ってオーラを体から滲ませるんだ。
これがギャップ萌えか。
アリシアといい、可愛いすぐる。
なんて、ほのぼのしていると、グレインが俺に向かい、姿勢を正して、言ってくる。
「ユーヤ様、我々一族ですが、ユーヤ様がいらっしゃらない間に決めたことが有ります。
まず、このまま、私がハイコボルト達を纏めましょう。勿論、ユーヤ様がそれもご自分でなされたいのならば、我々はいっこうに構いませんが。
そして、サクラとアッシュはユーヤ様の専属の部下として、仕えさせます。
いかがでしょうか? 中々良い考えだと思うのですが」
見れば、今解体で抜けていった者以外、全員緊張した眼差しでこちらを見てくる。
…………ふむ。コボルト達の統率はこのままグレインに任せるのが得策か。
アッシュとサクラは俺の専属、か。
正直、専属の部下って何をさせれば良いんだろ?
アリシアとおんなじ感じの扱いで良いのかな?
うん。良いんじゃない?
「…………よし。良いだろう。その案を採用する。グレイン、今後とも是非、コボルト達のリーダーとして励んでくれ。
生産専門と、周囲の見回り、狩りをする者とかで別けるのが良いと思うぞ。
ただ、生産専門でも、ある程度は戦えるべきだと思うが」
「ハイ! お任せを!」
「さて、今度は家を建てるかね。
ハイコボルト達の中で建築が得意な者、集まってくれ。
木工が得意な者でもいい」
俺は集まったハイコボルト達に前世の知識から、建築関係を伝えていく。
穴だらけの知識だが、無いよりは良いだろう。
皆、そんなことが出来るのか! って驚いてるし。
さあ、ここから一気に発展させるぞ。
領主との約束の人間達が来るまでにはある程度の村を完成させたい。
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