領主の憂い
主人公以外の視点です!
短めです!
本編どうぞ!
「本当にこの町は良い町だ……」
だからこそ、辛い。
私は、この多種族国家グランデ、都市フォーレンの領主だ。
この町には様々な種族がいりまじって暮らしている。しかし言って他の種族への差別や偏見などは少ない。
皆が皆、支えあって生きている。私はこの町に住む一人の人間としてそれを誇りに思っている。
しかし、だからといって犯罪が無くなる訳ではない。
つい先日も、この町に存在する闇組織の被害を受けた人達がいる。彼ら、彼女らは自分の財産を失ってしまった。
あの事件は何とか解決に至ったが、被害を受けてしまった人というのはどうしても出てしまった。
私もなんとかしてあげたかったが、不幸な人というのはいくらでもいる。領主として特別扱いは出来なかった。
彼ら、彼女らは税金を払えていない。出来るだけの便宜をはかったが、やはり無理があった。このままでは法律によって奴隷に落ちてしまう。
「なんとかしてやりたいなあ……」
私は誰にともなく呟いた。
「領主様、対談の申し込みが来ております。
なんでも魔物の村をつくらせて欲しいとか」
……なに? そんなことをお願いに来る者なんて始めてだ。
「真偽は分かりませんが、なんでも人に化けたドラゴンが対談主だとか」
執事は明らかに信じていないように言う。
ドラゴンが、人に化けた?
ドラゴンとはとても誇り高い種族だ。
それ故、他の種族にあまり興味を抱かないことが多い。
そしてドラゴンにもピンキリではあるが、中には災害のような力を持つ個体が居る。
出来ることなら敵対してはならない。
これが私のドラゴンに持つイメージだ。
それが人に化けて村をつくるだと? 全く予想がつかない。
執事は信じていないようだが、私はこの対談相手に、既にある種の期待と確信を持っていた。
「ああ、直ぐにでも行く。客人を部屋に案内しておいてくれ」
私が部屋に入るとそこには、男の私も見とれるような容姿を持った男がいた。
しかも見た目だけではない、この客人からは覇気というのか、オーラと言うのか、とにかく纏っている雰囲気が並々ではない。
執事も固まっている。
……三十秒前の、この方に会う前の、胡散臭げな態度は何処にいったのだ?
そうしていると、客人は座っていたのを優雅に立ち上がると、私を見据えて、言った。
「貴方が領主殿だな?
初めまして、私はユーヤ・ヤクモと言う。以後お見知りおきを」
私は今や、この対談が楽しみで仕方がない。なにが起こるのだろうか?
気に入ってくれたらブクマ、評価をお願いします!




