喰らえぇ!!!
「やっぱり救うのですね……!
主殿、貴方というお方は…………!」
「俺はお前を殺さない。それが俺の我が儘だ。
覚悟しろよ? これからの人生、いやというほど楽しませてやる」
確か、アリシアにも同じ様なことを言ったな。
だが、今回は問答無用だ。
俺はこんなこと認めない。絶対に救ってみせる。
「さて、どうするか…………
まずはステータスだ…………
……っ! 抵抗される感触だ……これは普通の鑑定では見れないだろうな。俺の万物鑑定でギりか」
種族 絶望の獣 (コボルト)
性別 男
・レベル unknown
・HP unknown
・MP unknown
・パワー unknown
・スピード unknown
・ディフェンス unknown
・マジック unknown
・マインド unknown
・ラック unknown
スキル
Unknown
【称号】
・絶望する者
【絶望する者】
忌み子の負の覚醒の一つ。
世界に絶望した者。
ステータスが、大幅に上がる。
絶望の感情が高まれば高まるほどにステータスが上がる。
「ほとんど見れないな。だが、十分だ」
『マスター、どうするつもりですか?』
「拡大解釈」
『……………………はい?』
俺の喰らいつくす者は、死体から要らないところだけを喰らうことが出来る。
………………なら、対象から望んだものだけを喰うことも出来るだろう? 例えば絶望とか。
俺はお前の絶望を喰らい、それでも生きていこう。
俺がお前の絶望を背負って行こう。
「アリシア! すまない、手伝ってくれ!」
「はっ、はい! 勿論です!
私はどうすればいいですか?」
「あいつの動きを止めてくれ。出来るだけ傷はつけるな」
「はい!」
アリシアは魔力を高めると、両手を広げた。
「極夜」
両手から闇が広がっていき、闇が世界を満たしていく。
闇が完全に絶望の獣を包み込んだ。
「縛!!」
絶望の獣は闇に縛られ、がんじがらめになる。
「ナイスだ、アリシア」
俺は限界まで腕に魔力を込めると絶望の獣に向ける。
生きるものにはほとんど効果がないが、
そんなことは関係ない。やる。やってみせる。
「ハアアアアアッッ!!」
激しい抵抗に会う、スキルの限界を感じる。
だが、そんなことは些細なこと。
構わず、力をいれ続ける。
腕に血管が浮き上がり、筋肉が筋張っている。
「まだまだぁ!!」
【ユーヤ ヤクモのレジェンドスキル「喰らいつくす者」が進化します。
…………+"@|+*\2~.%$の介入を受けました。
…………個体名「絶望の獣」の絶望を引き換えにします。
レジェンドスキル「喰らいつくす者」はゴットスキルに進化します。
ユーヤ ヤクモは「暴食を司る者」を獲得します】
………………っ! いける!!
「喰らえええ!」
抵抗が小さくなるのがわかる。
絶望の獣からどす黒い煙が出てきて、俺に吸い込まれていく。
俺の中で絶望を消化していく。
絶望が俺の中で混ざっていく。辛い。
心がどす黒く染まるようだ。
……………………これは、忌み子の追体験? 俺のなかにコボルトの記憶が……
心も体もボロボロだ。
なんで俺が? なんで俺なんだ?
俺が何をした?
やめてくれ。
もう、誰も近づくな。誰も俺の前に来るな。
原因を消したい。俺の絶望の。
もう嫌なんだ。何もかも。
そんな感情が俺の心のなかを渦巻いている。
…………恐がるな。俺が受け止めるから。
…………ーーー?
ああ、だから俺の所にいろ。
…………ーーー!ーーー!?
俺はお前を傷つけない。いや、もう誰もお前を傷つけない。
安心しろよ。お前の絶望は俺が貰っといてやる。
……………………わかった……
俺はこいつの絶望を喰いきれたみたいだ。
下手したら俺も堕ちるところだった。
絶望の獣のいた所には一匹の灰色のコボルトが気を失って倒れている。
俺はそのコボルトに向かい、聞いてはいないだろうが、言い放った。
「俺と生きるぞ。異論は認めない」
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