俺は認めない
あれが、元はコボルト…………?
信じられんな…………大きさも、強さも全く違うぞ?
別の魔物と言われた方が余程現実的だ。
『マスター、あれは、忌み子の、成れの果てです…………』
…………はっ?
俺もアリシアも絶句している。
だって、そうだろう? あれが、忌み子の成れの果てなんて……
特にアリシアは思うところがあるようだ。
無理もない。
それはつまり、自分もああなるかもしれなかったということだからな……
「あれは私の兄なんだ…………
自分達もどうにかしていた…………
私達は実の家族に、とても酷いことを…………
それがある日、兄があの姿になってから私達もまるで呪いが解けたかのように…………
だから、これは私達の罪滅ぼしなんだ。
それに、私達はこれ以上家族を傷つける訳には………………いかない……っ!」
族長の娘コボルトが攻撃を避けながら言う。
あくまでも、殺す気は無いようだ。
もう一度見渡してみる。
俺に顔の見分けなんてあまりつかないが、どのコボルトたちも悲痛そうな雰囲気だ…………。
今度は元忌み子の化け物を見てみる。
「ガアアアア!!!」
叫びながら、暴れている。まるで災害のようだ。
……なあ、お前は今、どんな気持ちだ?
……満足か? 自分を傷つけた者を傷つけて。
……楽しいのか? 自分の家族を傷つけて。
……なあ、お前はなにがしたいんだ?
(………………れぇ、…………………れ、)
聞こえない。
(………………ろしてくれ、………………てくれ、)
まだだ。まだ聞こえない。
(ーー殺してくれえ!! 俺は家族を!! 傷つけたくない!!)
………………ああ。わかったよ。
俺は化け物、いや元コボルトの前へと立つ。
「おっ、おい! ドラゴン様!? 何を!?」
「主殿…………」
『マスター…………』
「コボルト族、族長の息子よ。お前の願い、聞き入れた。
だから、俺はお前を…………………………
殺してやらない。絶対に、殺してはやらない。
俺はそんな結末を認めない。
さあ、存分に、試合おうか……!!」
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