ドワーフの鍛冶屋に来たぞ
ギルドで冒険者達によってユーヤに白銀の全能という二つ名が付けられた頃、当の本人であるユーヤはというと、ドワーフの鍛冶屋の前にいた。
「ここか。中々綺麗なところじゃないか」
「そうですね。あのガダンさんのお店ですからもっと汚なくてごちゃごちゃしていると思っていました」
アリシアさんって意外と毒舌?
まあいい。そんなことより店に入ろう。
「いらっしゃいませーー!」
!!!!??? 何故だ!? ここはガダンの店じゃないのか!?
なぜ可愛らしい女の子が店番をしている!?
店間違えた!?
「お客さん? どうしたんですか?」
女の子が不思議そうに聞いてくる。
「あ、ああ、なんでもない。
ここはガダンの店であっているか?」
「お父さんのお客さんだったんですか!
お父さんは気に入った人にしかちゃんとしたもの売らなくて、
その他の人には数打ちの品しか売らなくて…………まあ、それでも他の店に比べたらいい方の品質なんですけどね……」
女の子が、ほんと困ってます! って感じに言う。
ガダンの娘だったのか。
………………有り得ねー。
「お嬢ちゃんはガダンの娘だったのか」
「むー! お嬢ちゃんってやめてほしいです!
これでもちゃんとした大人です!
ドワーフなので長命なんです!」
「わ、悪い」
メッチャ抗議された。
もう一回まじまじとこの娘を見てみる
赤い髪のツインテール、顔は元気一杯です! って感じ。派手さはないが結構整っている。目が大きい。
そして小柄だ。だがよく見ればドワーフだからか、割りと引き締まっているみたいだ。
…………体を見てもあまり凹凸はない。
「うん?
今失礼なことを思われた気がするのです」
……どこの世界でも女ってのは勘が鋭いようだ。
「ああ、気のせいじゃないか?
それより、ガダンはいるか?」
「いますですよ。
ちょっと待ってくださいです」
とてててー、と音が聞こえてきそうな感じで裏に引っ込んでいった。
「主殿。ガダンさんって娘さんがいたんですね……」
「ああ、俺も信じられん……」
「おお! ユーヤじゃねえか! 来てくれたのか!」
「ああ、約束だからな。
今日は武器を見に来た
…………んだが、お前娘いたのか?」
「ああ? いるぞ?
紹介しよう。エミリーだ!」
「エミリーです。よろしくです」
「ああ、よろしく。ユーヤ ヤクモだ」
「はい、よろしくお願いします。アリシアと申します」
エミリーは俺とアリシアに握手をする。
「店が随分綺麗だと思ったら……エミリーのお陰か?」
「ガハハハ! よくわかったな! 俺は掃除とか整理整頓、計算とか苦手だからな! いつもエミリーがやってくれてるんだ」
「そうなのか。いい娘を持ったな。
さて、武器を見せてもらいたいんだが…………」
「おう! 任せろ!
まずはユーヤはどんな武器がいい?」
「あっ、私は武器は自分のスキルで造るので大丈夫です」
「うん? そいつは珍しい戦い方だな。詳しく聞いてみてえ所だが、情報ってのは何より大事だからな。いらんとこで話すべきじゃねえだろ。
なら、ユーヤの、武器だな」
「俺は何でもこなす万能型だから片手剣とかがいいな」
「なるほどな! 万能型か、そいつはすげえ!
だが、そうなるとお前に合う武器は…………」
「……ああ、そうだ。素材を持ち込んで一から造ってもらうことは出来るか?」
「うん? 出来るぞ! だが、素材を見てからだな!」
「これなんだが…………」
そして俺は異次元収納からシルバードラゴンの爪と牙を取り出した。
もちろん俺の竜形態の爪と牙だ。念のためにとっておいたんだ。
抜け代わりの時期なのか抜こうと思ったら案外あっさり抜けた。
爪はなくなく折った。すぐに新しいのが生えてきたが。
マインドの高さに感謝した。痛みがそんなにしなかった。
それと、もうわかると思うが俺は異次元収納に関しては隠す気がない。一番よく使うだろうからな。
「これは…………
ドラゴンの爪に牙か? それもかなり上位の…………」
流石に気付くな。凄腕鍛冶師なだけはある。それに、俺の異次元収納より素材に興味を示すとは。
「出来る。出来るぞ! これならお前さんの力にも耐えられるようないい武器が!
だが、時間がかかる。暫くは間に合わせで我慢してくれ。
それと、他の素材が必要になるかもしれん。その時は依頼を受けてくれると助かる。ギルドの方に指命依頼で出すぞ?」
「お父さん! それ、他のお店だったら一級品だよ!?
間に合わせの品じゃないよ!」
「いいんだよ!俺はこいつを気に入ったんだ!
それにこんな素材に、使い手だぞ? 俺の鍛冶師人生でも最高の昨品になりそうじゃないか!
その使い手に適当なもん渡せるか!」
「もう !お父さん! 遣り繰りする私の身にもなって!」
エミリーが不敏だな。だがとてもいい親子じゃないか。
「エミリー、俺の武器だが少し高めに値段設定してくれていい。
俺も自分の武器をも造ってもらうんだし、人生最高の作品とまで言ってくれてるんだ。
それくらいするさ」
俺はエミリーの耳に顔を寄せ小声で言った。
「あ、ありがとうございます!
ですが、お父さんのお気に入りのお客さんですので出来るだけ値引きするですよ?
私もユーヤさんのこと気に入ったですし」
「おっ、ありがとう。だが無理はしないでくれよ?」
「それじゃあ、俺たちはもういくな。ガダン」
「ああ! ちょくちょく店に顔だしてくれると助かる! そのときに依頼をするかもしれんしな!」
「了解した」
俺とアリシアはドワーフの鍛冶屋から出ていった。




