ちょっと怒るよ?
「ギャハハハ! 男がジュース作りだと!
そんなあまちゃんが冒険者になるだあ? やめとけやめとけ!
お前はそこの女を置いて、とっとと家に帰んな! 女は俺様が可愛がってやるよ!」
俺は今テンプレに遭遇している。逆によくもこんなTHEチンピラがいたもんだ。
男は中々デカイ。二メートルはあるのでは?
ガタイもいいが、動きを見れば実力が高くないことが伺える。
…………そんなことよりも。コイツかなり臭いし汚ねえ!
何日風呂入ってねえんだよ!?
プロ根性凄まじいあの受付嬢さんでさえも微笑が崩れかかってるぞ!?
「……主殿。私がコイツを処理しても?」
「いや、いい」
俺は片手を挙げてアリシアを制すると、
少しだけ竜覇気と威圧を解放した。
「「「「「ッッ!!」」」」」
俺たちのことを興味深そうにコッソリ観察していた冒険者達が驚きに目を見張り、続けて動けなくなった。
まあ、俺の顔を直視した奴の何人かは既にボーッとして固まっていたが。
俺のすぐ目の前で覇気を受けたこのチンピラ大男はというと、
「ッッッ!!!!!」
体を硬直させ、冷や汗をだらだらと流し始めた。
今の俺はさぞ威圧感や覇気、カリスマ性だとかもろもろ出てるのではないか?
これは俺が全開にしたらどうなるんだろう?
『脆弱な者なら心臓が止まり、弱い者ならマスターの前にひれ伏し、そこそこ強い者なら耐えきり、強い者なら実力差を悟り絶望するでしょうねぇ』
いつから対人間兵器になったんだ俺は。
『魔物なら進んで仲間になりたがる、かも?』
どうやら魔物ホイホイにもなったみたいだ。
「さて、大男君? 俺はね? 少しだけ怒ってるよ? アリシアに下劣な目を向けられてさ?そこんとこどー思う?」
「カッ、カハッ」
「うん? 何言ってるのか分からないなー?」
「ッ!!カッ、アアッ」
「………………分かったらもう絡んで来るなよ?」
俺は最後に少しだけ覇気と威圧を強めてから、霧散させた。
「あっ…………すっ、すみませんでしたー!」
俺が受付嬢の方に向き直ると後ろからそう言い、ギルドから走って出ていく気配がする。
「さて、受付嬢さん。登録なんだが何をすればいい?」
俺が爽やかな笑みを浮かべながら言うと、
「さっきのことを何事も無かったかのようにスルーするのですか…………」
俺のスマイルでも流石にうやむやには出来なかったみたいだ。
ごり押ししよう。
「そんなことよりも登録を」
「ああ、はい。登録ですね。ではこちらに名前と種族、性別に出身、得意な戦闘方をお書き下さい」
そう言って書類を渡される。心なしか受付嬢さんがジト目な気がする。
美人エルフ受付嬢さんのジト目とは。レアなもん見れた。
俺とアリシアは書類を記入していく。ちなみにアリシアは吸血鬼になったことで人の使う共通語を喋ることも読み書きも出来るようになっている。
種族は人族でいいだろう、アリシアもそうしている。
………………出身地? ウル? あの森の名前わかる?
『えーっと…………名前は、魔物の楽園ですね』
えっ? そんな名前だったの?
…………まあ、いい。書こう。他に思い付く場所なんて無いし。
戦闘方は、万能だな。
いや、回復は出来ないな。これはそのうち手に入れたい。まあ、万能にしておこう。
アリシアは中距離魔法、近距離暗殺と書いている。
…………暗殺?いいのかそれで?
…………っと、こんなもんか。
「書けましたよ」
「私も書き終わりました」
「はいはい。えーっと………………
…………すいません。色々おかしくないですか?何ですかこれ?」
受付嬢さんが疲れた感じに言う。
「どこがです?」
「まず出身地。とても普通の人間の住める場所じゃありませんよ! Aランクの魔物がゴロゴロいる危険区じゃないですか!」
へー、そんな危険なとこだったんだ。
「次に戦闘方。普通の冒険者はなにかひとつのことに特化するものですよ!?
あっても剣の合間に簡単な魔法を放つ位です! それを中距離魔法に近距離暗殺?
それでも十分凄いのに挙げ句の果てには万能? あり得ないです!」
ああ、受付嬢さんのプロのイメージがどんどん崩れていく……
「まあまあ、落ち着いて。内容に間違いは無いから手続きを……」
「っ! は、はい、すみません。取り乱しました。
えー、それではこの魔道具に手を置いて下さい。魔力を関知してその人の情報を入手し、カードを作りますので」
俺とアリシアがそれぞれ手を置き、カードを作る。
ほー、中々良くできてる。クレジットカードより少しデカイくらいか。さっきの書類に書いたこととか色々書いてある。
表には大きくEランクとある。
「できましたね?
それでは次は素材の買いとりですね」
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