出会いに感謝しようか
「おお~~!!」
町に入ってみると様々な種族の人達で賑わっていた。
仲良く歩いている犬耳兄弟。
井戸端会議をする人族のおば様方。
料理屋の客引きをするエルフのお姉さん。
果物を売る、俺のおへそまでしか身長のない小人のお兄さん。
「これは………………感動してしまうな」
「主殿?」
「色んな種族の人達が協力しあって、仲良く暮らしている。
それのなんと美しいことか。俺はそう思う」
「そういうものですか? 確かにみんな楽しそうですが……
…………みんな私を見ても何も言ってこない。むしろ好意的な目で見てくれます。
これは…………なんでしょう。胸がいっぱいになってしまいます」
そんなこんなで二人で感動していると……
「邪魔だお前ら!! 道のど真ん中にいつまでもたってんじゃねぇ!」
「「す、すみませんでした!」」
ドワーフのオッサンに怒鳴られてしまった。
背は低め、ガタイがよく、髭がモジャモジャ、典型的なドワーフだな。
ただ、目付きが鋭く、ただ者でない感が出ている。
ドワーフなんかは人の見た目には無頓着だそうで、俺やアリシアを見ても特に気にした風はない。ウルさん情報。
「うん? お前ら冒険者か? かなりの力量が有りそうだが。武器を持っていないな。
どうだ? 俺の作った武器を買わないか? お前らみたいな強者に使ってほしいものなんだが」
ドワーフのオッサンがそんなことを言ってくる。
「すまない、俺たちは今手持ちが無いんだ。
素材はあるからギルドに売りに行こうと思っているのだがな。
そのあとで良かったら是非見せてもらいたい」
「そうか! 場所はそっちに行ったらある通りの、ドワーフの鍜冶屋っつう看板が立ててある店だ! いつでもこい!」
「まんまだな」
「ああ。だがそれがいいだろう?」
「その通りだ」
俺とオッサンはニヤリと笑い会うと、手をガッシリと握りあった。
このオッサンのニヤリ笑いは中々様になっている。首領って感じだ。
かくいう俺も中々のかっこよさじゃないかな。
「なぜでしょう? とても通じあっている感がでています。
軽く嫉妬してしまいそうですね」
「ガハハハ! そっちの嬢ちゃんが嫉妬してるみてぇだから俺はもう行くな!
ちなみにギルドはあそこに見える、でけぇ三階建ての建物だ!」
「ありがとう。ああ、そうだ。オッサンは名前は何て言うんだ?
俺はユーヤ・ヤクモっていうんだ」
「うん?ああ、言ってなかったな。
俺はガダンっつーんだ。それじゃあ、またな! ユーヤ!」
そう言い、ガダンは去っていった。
ちなみに人には普通に名前がある。
名付けは特別じゃないのか? と思うかもしれないが、親から名をつける場合は既に魂の繋がりがあるからそれほど力は使わない。
後から他人からの名前の上書きでの魂の繋がりを作ることはは出来るし、それの拒否も出来る。
まあ、かなり重要なことなので普通名前の上書きなんてしないが。
魔物も名付けの拒否は出来る。
アリシアは俺の名前を受け入れてくれたってことだな。
「主殿。先程の方、あのように言ってしまってよろしかったのですか?」
「ああ。実はガダンのステータスと称号を見たんだが、鍜冶のレベルが7あった。称号に凄腕鍜冶師というのもあったしな。
何より、俺があいつを気にいったから」
「そうですか。よい出会いをしましたね」
実際、スキルのレベルは最大で10と言われていて、10は神レベルだから、かなり凄いと思う。
そう言いながら俺はガダンに教えてもらったギルドへと歩み出した。
…………周りに、俺とアリシアに見とれて人や建物にぶつかるという事故を巻き起こしながら。
俺は精一杯、覇気は押さえてるよ?
事故る人が悪い。
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