町に行くぞ
「ハハハハッ、気持ちが良いな!
これは人類の夢というのも頷ける!」
人類の夢とは何なのかというと、
ー生身で空を飛ぶことー
である。今俺とアリシアは服の背中側にいれた切れ込みから翼を生やして空を飛んでいる。
流石に森から町まで遠すぎる。
本当は最初から空を飛んで移動したかったのだが、それは俺がドラゴンにならないと不可能だったんだ。
俺がドラゴンになって飛んでも良かったのだが、人に見られたときに厄介すぎる。
ステータスは人化しても変わらないが、流石に飛行などのスキルは使えない。
なので、人の姿のまま、翼を生やす必要があった。
それは人化のスキルの応用で、言わば「部分竜化」というものにあたり、ある程度の修練がないと翼を生やすことも飛ぶことも出来ない。
それがようやく上手く飛べるようになったんだ。アリシアからのお墨付きももらったし。
この姿なら誰かに見られても竜人だと言い張ることができる。竜人なら、珍しいが騒がれることはないだろう。
「おっ、森の出口が見えてきたぞ!」
俺は減速して森から少し離れた場所に着地した。
俺の後ろに音もなくアリシアが降り立った。
………………なにそれカッコいい。
アリシアは飛ぶときも静かだし着地も綺麗だ。
なぜか負けた気がする。
「? どうかしましたか、主殿?」
「いや、何でもない……」
「それよりも、流石にこの姿じゃ不味いよな。上位の稀少な種族である吸血鬼と竜人なんて」
「そうですね。では翼は消しましょうか」
アリシアが変身のスキルを使い翼を消した。
俺も部分竜化を解き、翼を消した。
これで普通の人族の美男美女だ。
………………美男美女で普通ってのはおかしいか。
「さて、ここから町まで歩いて少しだな。それじゃあ行こうか」
「はい。主殿」
歩きながら久しぶりにステータスの確認をしようか。
『マスター! 統合が可能なスキルや、既に持っているスキルの下位互換があります!
整理してもいいですかっ?』
「うん? ああ、頼んだ」
『はい! ………………完了しました! 新たなステータスはこちらです!』
ユーヤ ヤクモ ・種族 シルバードラゴン
性別 男
・レベル 43
・HP 600,000/600,000
・MP 700,000/700,000
・パワー 480,000
・スピード 600,000
・ディフェンス 400,000
・マジック 550,000
・マインド error
・ラック 2,000
レジェンドスキル
・知恵の天使
・喰らいつくす者
ユニークスキル
・白銀竜
・武芸者
スキル
・人化
・精神系全耐性
・眷族化
・影魔法5
・基本四元素魔法4
・空間魔法2
・気配自在
・隠蔽
【称号】
・可能性を秘めし者・絶対神に興味を待たれし者・絶対神に名付けられし者・格上殺し・死と踊る者
…………ちょっと強すぎないかな。これ?
あーっと、まとめるぞ? ウルの説明と俺の経験から。
まずは、ステータス値だが、これはなんも言えん。強いて言えば魔物を狩りすぎた。レベルがかなり上がってるし。
次にスキルが、白銀竜と武芸者と基本四元素魔法が、統合によって出来たスキルだな。
初めに白銀竜。これは竜のブレスやら竜覇気、轟爪、飛行などのスキル、俺が倒して喰ってきた竜種のスキルの集合だ。
倒した竜は劣等竜とかで強いのはいなかったな。
次が武芸者、喰ってきた魔物は剣術やら槍術やらを持ってることが多かったからそれの統合だ。
武器の扱いや格闘が上手いということだな。
基本四元素魔法は火、水、土、風のことを指す。
ゴブリンの群れを退治したときにゴブリン達から喰った。そのときは火魔法2、水魔法3って感じだったな。
空間魔法はゴブリンの群れのボスであるゴブリンキングから頂いた。
…………いや、俺もゴブリンたちとも話そうとしたよ?
だけど奴らアリシアに襲いかかろうとしたり、キングは、自分こそ最強! って感じで見下してきて傲慢だったし。
…………アリシアのことを襲おうとするとは許せん。存在そのものを消し去ってやろうかと思ったが、アリシアに勿体無いと言われて渋々喰った。
空間魔法はいわゆるアイテムボックスや異次元収納といったことが可能で、そこに魔物の素材は入れてある。
流石に持ちきれ無かったから有り難かったな。
眷族化は相手が受け入れたらその相手を眷族に出来るというものだな。眷族と主との間には強い魂の繋がりが出来る。眷族は主に対して害をなすことが出来なくなる。
ウルさん、つまり知恵の天使の一部を使えるようになる。
他にも、色々と特典はあるらしいが、それはまたその時に話そう。
他のスキルは言わなくてもなんとなく分かるだろ?
アリシアのステータスを勝手に見るのはマナー違反だと思うからやめておく。今は特別な事情もないし。
…………ただ、アリシアは、そんなこと気にせず見てください! とか言いそうだな。
アリシアってちょっと俺至上主義なとこあるし。
おお! 町が見えてきたぞ!
町だが、町を囲うように高い防壁が建っている。中はあまり見えないが随分栄えているようだ。
『マスター! この町はフォーレンと言いまして、多種族国家、グランデの都市の一つですよ!』
「ほー、多種族国家なのか。俺はあまり他の種族を見たことがないからな。楽しみだ」
俺とアリシアは町に入るための列に並んだ。
わかってはいたが注目されるな。俺とアリシアは絶世という言葉を付けて良いぐらいには美形だし。まあ、あまり気にしないでおこう。
列が進み、俺たちの番が来たので門番の兵士の前に立つと、
「えー、町に入るには身分を証明出来るものが必要だ。
無かったから犯罪歴を水晶型の魔道具で確認して、銀貨3枚と簡単な書類を書くことで許可証が…………」
兵士さんが書類に落としていた目線を、俺たちに向けたら固まってしまった。
「おーい? 兵士さん?」
「…………はっ! す、すまない、少し見惚れていたようだ。
えーっと、それで身分を証明出来るものはあるか?」
「いや、身分を証明するものは無いんだ。それに今手持ちが無いんだよ、魔物の素材を代わりに売ることは出来るか?」
「? 可能だな。だが、お前たちは何も持っていないように見えるが…………」
俺は無言で異次元収納から素材を一部出した。ウルが言う、銀貨3枚の価値が有るものを。アリシアと俺の分2つ。
「なんだ、持っていたのか。ああ、これなら大丈夫だ……どこから出したんだ? まあ、いい。
この水晶に二人とも手を置いて…………うん、犯罪歴は無いな。
それと、この書類を…………よし、ありがとう。
ああ、そうだ。腕に覚えがあるなら、冒険者ギルドに登録することを勧める。
身分証明出来る冒険者カードが貰えるし、魔物の素材を売ることが出来るからな。
…………それじゃあ、フォーレンへようこそ!」
「ありがとう。冒険者ギルドね。是非ともそうさせてもらうよ」
俺たちは兵士さんに礼を言ったあと、
多種族国家の町、フォーレンへ入っていった。




