町に着くとでも思ったか?
今俺はオークと対峙している。
このオークは二メートル程の巨体で体は脂肪か筋肉かに覆われ、横幅もある醜い顔の人型の豚だ。
手にはどこで手にいれたのか少し錆びた剣を持っている。
「おい、そこのオーク、俺の言葉が通じているか?」
「ブモオオオオ!!」
オークは何も言わずに俺に斬りかかってきた。
俺は全言語理解を使っているのに何も言ってこないということは喋れるだけの知能が無いのか、そもそも喋る気が無いのだろう。
「ふむ、アリシアの例があるからな。
念のために敵かどうかを聞いているのだが、お前は俺の敵らしい」
アリシアのようにしっかりとした人格があり、なおかつ良いやつの可能性も0ではないからな。一応聞いている。
流石に自分やアリシアに危険があったり、明らかに敵だろって場合、もしくは相手から攻撃してきたりしたら躊躇なく殺すが。
ビックボア? あれはノーカンだ。
俺の考えをアリシアに押し付ける気はない。
さて、俺はさっきからこいつの攻撃を舞うように避けているが、これはこの間喰った魔物の持ってたスキル「回避」の補正が少しあるから出来ている。
ステータスに物言わせて避けることも出来るがそれはあまり望ましくない。
ステータスの近いものや卓越した技術を持つ者には弱くなってしまう。
「ブモオオッ!」
当たらなくて怒っているらしい。
そんなに怒るなって。
そろそろ終わらせてやろう。
俺はオークから距離をとると地面に、正確には自分の影に手を置いた。
「影の槍」
俺の影が形を変え、細長くなり、地面を離れる。
影は形を槍に変えながらオークに迫り、その心臓を貫いた。
「フウ、大分影魔法にも慣れてきたな」
「お疲れ様です。主殿。
…………それにしても主殿は凄いですね。私の影魔法をもう使いこなしています」
そう、俺が影魔法を使えたのはアリシアの影魔法を吸収したからだ。
アリシアに俺に向けて影で攻撃をしてもらい、それを俺が喰らいつくす者で吸収する、そうすることで、俺は影魔法を手にいれたのだ。
アリシアは俺に当たらないとわかっているとはいえ攻撃するのは凄く嫌そうだった。
あれは本当に申し訳ないことをした。
常闇の支配者は流石に手に入らなかったようで、それの進化前の影魔法を手にいれた。十分だろ。
そもそも何故俺がまだ町に行かず、魔物と戦っているのかというと、
純粋に森が広くて町まで遠いのでそこに行くまでに魔物に出会ってしまうんだ。
まさかの選択肢3で町に行きながらレベル上げをすることになってしまったな。
ウルの言う通りににして正解だった。
途中からステータスは全く見ていない。変動が多すぎて見るのが面倒になったから。
ウルは、ゴブリンの1レベルとドラゴンの1レベルでは必要な経験値が大分違うと言っていたから俺はレベルが上がりにくいのだろうが、それにしてもだ。
俺は魔物からスキルを獲得することがあるから尚更だった。
町に行くことを決めたあの日から数日たつが、俺もアリシアも暫くは寝なくても大丈夫な種族なので昼夜問わず移動している。
吸血鬼は光が苦手だが、日に当たると消滅したりということはないそうな。昼でも活動可能だ。
それこそ、光魔法の強力なものとかでないと。
ご飯はどうしているのかというと、俺は魔物から喰らいつくす者で。
アリシアは俺の血を飲んでいる。
吸血鬼は普通の食事も出来るが、血で済ませることもあるらしい。
もじもじしながら恥ずかしそうに
「あ、主殿、し、失礼します……」
と言い、俺に噛みついてくるのはかなりくるものがあった。
あまり痛くはない吸血を終えると、アリシアは恍惚とした表情を浮かべ
「ごちそうさまでした。あるじどの」
と少し舌ったらずに言ってくるのだ。
正直理性がかなりヤバかった。その場で押し倒しそうになったほどだ。
俺は鈍感系主人公ではない。アリシアからの好意はここ数日で気づいているし、ウルも何故か凄くアリシアとくっつけようとしてくる。
受け入れようとは決めているのだが、まだ今じゃない。こんなとこで初体験なんて最悪だろう、アリシアも。
さて、また移動を再開しよう。
地図を見るに、そろそろ森を抜けれそうだ。
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