世を忍ぶ仮の会社
しばし、この冗談にお付き合い頂けたら嬉しいです
ここは片田舎にある古びれ傾いたおんぼろビル。
一人の男が電話口でペコペコ頭を下げながら会話していた。
「あっ、ハイ。その通りです。分かりました。ハイ、ハイ…ではこれで失礼致します。」
カチャンと軽い音を立てて置かれた受話器だったが、それを持っていた手はまるで今まで鉄アレイでも持っていたかの様な怠そうな動きをしていた。
「社長ゥ〜大丈夫ですかァ〜?」
受話器を置いて机に突っ伏していた男を心配してか、その部下と思われる人物が声をかけつつ駆け寄った。
「ああ大丈夫だ、ありがとう寒揖斐くん。また本社から無理言われてね。何とかなると思うけどさ。」
「またデスかァ〜親会社だからってもゥ〜」
「まっ何とかなるさ、な?」
私は絽目路丈二、この特別有限会社マカルガの社長職を務めている。
…社長と言っても名前だけみたいなもので、実質は親会社からこき使われているだけのただの平社員だ。
そして今話していた部下は寒揖斐智生、部長ではあるがやはり私と同じ待遇の社員である。
「それでまた本社の利益隠しなんだけどな。」
「う〜ンやっぱりまたデスか。僕達がゾンビだからっテやりたい放題デスよね。」
「まぁそう言うな。私達がこうして居られるのも、この仕事あっての事なんだからさ。」
そう、ここは親会社が損益計算をする為に生かさず殺さず残されているゾンビ会社。
有限のままなのは、それだけこの不正が長く続いている証拠でもある。
そして、このゾンビ会社に務める社員もまたゾンビである事を知る者は少ない。
ここは特別有限会社マカルガ。ゾンビによるゾンビの為のゾンビ会社。