第2話 国王に呼び出された勇者
第2話 国王に呼び出された勇者
俺は引きずられるまま王の間に来ていた。正確には門のところで兵士に引き渡されたのだが。どうやらあのお姉さんは受付といっても最近来た方のようで俺のことはなにも知らなかったそうだ。兵士の方も俺のことは知らなかった。てか、俺が知られないように行動してたのだけど、やっぱりリディア王国の情報収集能力は侮れないですね。
「連れてまいりました!」
「ふむ、下がって良いぞ」
「は!」
兵士は扉の彼方に消えていく。あぁ、俺は一体どうなるんだろう.......。
「貴殿がリオン殿か。噂に聞く通り若い。いや、若すぎるな」
「はぁ.......で、ご用件はなんでしょうか?」
あ、礼儀作法思い出せねえや!確か跪くんだっけ?もう遅いけど。
「貴様!国王陛下の前でその態度はなんだ!」
突っかかってきたのは老齢の大臣。それを手で制したのは国王だ。
「よい、私が呼んだ客人だ」
それっきり黙り込んだ大臣。なんやねん!貴族様はお偉いことですねぇ。
「それで、もしかしてクロム宰相からお聞きに?」
「そうだ。リオン殿を押したのはクロムだ」
クロム宰相とは古い知り合いだ。確かもうご隠居なされたはずだが?
「あの爺さんがねぇ。用件はなんですか?」
「実は勇者のパーティーに同行願いたいのだ」
「ほう?何故私のようなものを?」
「リオン殿はS級冒険者で勇者のパーティーとの年齢も近いのだ。私としては君に代わるものはいないと思っているのだが」
やっぱりか!ギルドマスターに煽てられて気がついたらSまで上げていた過去の自分を殺したい。
「はぁ......それでメリットはあるのですか?」
ぶっちゃけ、勇者のお守りよりもやることがあるので断りたかったりする。
「報酬は我が国に伝わる歴史書はどうだろう?リオン殿はそういうものが好きと聞く」
「参りましたなぁ。わかりました。その依頼受けましょう」
降参だ。俺の一番欲しいものを餌にされたらねぇ。クロム宰相は喋ってないはずなんだけど、どこでばれたのかねぇ?俺がクロム宰相に近づいたのは歴史書のためってのが。
「そうか。受けてくれるか。パーティーメンバーの紹介は明日行う。予定に関してはパーティーの内で決めてくれ」
「はーい。では私はこれで帰りますね」
「そうか。ザイトル、リオン殿が帰るそうだ」
「は!リオン殿、送ります」
ザイトルって言われたのは騎士だ。
「あぁ」
(ザイトルってやつはそれなりに強いなぁ。てか、魔王倒しに行くのかれこれ3回目になる気がする)
一回目は最初。二回目は勇者パーティーがボロボロだったんで見てられなくって加勢。三回目が餌に釣られて.......この世界で一番、魔王と戦ってる気がする。
堅苦しくて死にそうでした。俺は城を出ると《実りの宿》に戻った。安いところだ。なんせサービスは何にもないからな。お金は節約!これ大事。ちなみにご飯は帰りに《フィルモンツェ》で食べた。おいしかったぞ!雰囲気は高級感溢れてあまり好きではなかったが。俺はベットに寝っ転がって深い眠りに就いたのだった。
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リオンが退出した後の事だ。
「陛下。本当によろしいのでしょうか?あのような子供を勇者のパーティーに入れるのを?」
「お前は見る目がないな。ロドバルト、あれを侮るでない。クロム宰相の推薦だぞ。それに雰囲気は12歳のそれではなく、老練の騎士だった」
「く......はい」
ロドバルトは未熟だからこそ人を把握できないのだ。ロドバルトなにより陛下に使えない奴と思われてしまったが
辛かった。やっと大臣になってこれからと言うのに!
「陛下の仰る通り、リオン殿の発する気には私も驚かされました」
実はその気はお腹が空いてイライラして放っていたものだという事は誰も知らない。
「ほう。お前にそう言わせるとはなザイトル騎士団長。私の目に狂いはなかったということだ」
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一方、勇者と聖女様はと言うと.......
「勇者様。申し訳ございませんでした」
「い、いえ。大体わかりました。頑張ります!魔王を倒せば帰れるのですね!」
「はい。そう聞いております」
聖女はそう答えた。しかしこの世界から帰ったものなど存在しないのだ。魔王を倒せば帰れると言うのはただの迷信である。これを教会は信じ続けている。
「勇者様のサポートはお任せください!」
「う、うん!ありがとうメイシア」
聖女の名前はメイシア=アルデニス。
勇者の名前はミリナ=アルヴェンタ。
彼女らはまだ知らない。この魔王を倒す旅を超えた先の苦難を.......