剣の雨が降ろうとも 1/17
「たかが3人集まったからといって、お前らなぞ俺1人で十分だ。
殺れ、金環・鋼剣演舞」
城ヶ峰の学園最強の金属操作魔法。フィールド全体から金属をかき集め、無数の剣を創生する。生成された無限の剣は、円形に並べられ、城ヶ峰を中心に公転し始める。
「暗黒なる尊厳王」
「虚無ノ殺戮鎌、過負荷」
「獅子王ノ心臓」
それぞれの持つ、最強で最高の技を発動して、主席と対峙する。
「散れ、雑魚どもが!!!」
「真霧!防御を!」
「ちょっと静かにしてくれ!集中出来ない!」
真霧は素早く闇のベールで三人を覆う。真霧の防御の素早さに安堵する。
「……フッ、馬鹿めが」
「なっ!?闇魔法が意思とは裏腹に、自動的に薄れた!?」
しかし、それも束の間。今まで全てを飲み込んできた闇魔法が、破られた瞬間でもあった。ベールが消え行く。俺は完全なる負けを覚悟した。百にも及ぶほどの剣の雨に、成す術もなく、散るのだと。
「まだ諦めんじゃねーよ。正義、真霧」
俺と真霧は後ろに向かって強く押される。少しよろめいたが、踏ん張る。すると、ある男が前に出る。その大きく見える後ろ姿は、見慣れたものだった。いつも、主将である俺をチームで支え続けたエース、冷姫氷牙の確固たる男気。この勇敢な後ろ姿を見るのは、これが最後なんだ。
俺の退学阻止だけでなく、俺の実力を認めてチームに入れてくれた寛大な心を持つ人物。
「氷牙ぁぁぁアアア!!!」
「未完成の運命!」
氷牙の愛してきた技。氷牙が憧れた、第5席黒木賊の技、つまり氷牙の姉の霙の技を模倣した技。彼女は弟に受け継ぐ事なく亡くなった。黒木賊は、唯一技を伝授してもらった者。それ故に、ずっと追い続けていた黒木賊の背中。しかし彼は、憧憬を自らの手で倒し、その憧れを棄て去った。行く末を失ったその姿は、彼の背中は、勇ましくもあり、悲しくも見えた。
幾多もの、黄金に煌る剣を、撃ち墜とし、撃ち墜とし、それでもなお、剣の雨は止まず、氷牙は金色の雨に貫かれた。しかし、その時の氷牙は微笑んでいた。氷牙だけが犠牲となった。そして、氷牙を象っていたポリゴンは四散する。その最後の姿は、笑っていた。心の底から笑っていた。こんな逆境でも、楽しんでいたのだ。
「お前は、何を考えてるんだ、氷牙。俺なんかに、俺なんかに託されても……無理だ。実力差がありすぎる。勝てっこない。お前がいないと……」
聳え立つ最後の壁。それは余りにも大きく、これまで努力し続けた自分が無様に、惨めに思えた。
「……何故、闇魔法が効かない」
立ちはだかる城ヶ峰は俺達を甲高い大声で嘲笑する。
「この剣はな、魔法無効化属性を有していてな。アタッチメントした武器か素手でしか対抗出来んのだよ」
そんな、そんな非現実的な、バランス崩壊的な属性が存在するのか。
『正義、勝てよ。お膳立てはしてやったんだからよ』
氷牙から連絡は来ていない。だが、心の中で彼はそう言い放った。きっと彼はそう思っているのだろう。いや、そうに違いない。
「……氷牙。お前の考えていることはわからない。……だけど、俺は、俺の、この学園生活で培ってきた精神をもって、学園主席を打ち負かす!」
勝利への方程式など、全く思い付かない。二人の絶対的なエースでも歯が立たないのであれば、どんな作戦も通じない。
ーーだが、俺は直感したーー
俺はこいつに勝てると。いや、俺にしかこいつを倒せないと。
全ての俺の経験がそう語っていたのだ。
「やはり、お前は煩悩だな。来いよ。お前の遊戯に付き合ってやるよ、最下位」
城ヶ峰は、王座を創生し、ロイヤルクロスというイギリスでの高貴な人物が使うとされる座り方で深く腰掛けた。継接ぎの崩壊寸前の世界で余裕ぶっているのは、彼一人。
ーー剣の雨が降ろうとも、俺達は前に進み続けるんだ。




