超次元の嵐 1/17
「こっちにも、仲間が来たみたいだ。そっちに駆けつけた斎藤のようにね」
急に速水君が晴れ渡った笑顔を浮かべる。なんとか敵の攻撃を耐えながら、希望を手にした喜びを感じているのだろう。
「それは、誰?」
「桐生だ。助けがこっちに向かっているらしい」
助け。そうか。あともう少し耐えれば良いんだ。誰でも良い。速水君を助けて。
「2発目いくか。バミューダ・フヴェルゲルミル」
玄野先輩が2回目の必殺技を発動する。水の手裏剣が先程のものより2倍近く大きくなっている。私も速水君の魔力を回復している場合じゃない。
「『System301』形態変化。モード蒼燕、ショット!」
速水君が処理し切れなかった水のカッターを、私の銃弾でなんとか相殺する。
攻撃をなんとかして阻止したその時、ある人物がここに到着する。紫ノ宮君だった。空間魔法使いでもあり、触れた人間ならばタッチして場所を入れ替えることができる。
「待たせたな、2人共。ちょっと雷使いの先輩を任せてこっちに来てたら感電しちまった。
まあ冗談はおいておこうか」
「弱い奴が1人増えても一緒だ。早くかかって来いよ」
玄野先輩は自分の力に自信を持っているようだった。槍を使うまでもないといった様子で、飄々としている。
「俺達が一枚上手だったようだな!俺はもう既にある人物と会っているんだよ!頼んだぞ、冷姫!」
紫ノ宮君が目の前から消える。まさか、紫ノ宮君が空間魔法で入れ替える人物は、氷牙!
「ああ、任されたよ。電光二連撃・月光」
氷牙が目の前に現れると同時に、私達の立っている地面を壊す。そして、私と速水君がくり抜かれた地面ごと落ちる。私達までリタイアしないようにという配慮だろう。しかし、氷牙の顔は、笑っていた。
氷牙はどんな逆風であっても笑える強さを身につけたんだ。
「良いのか、仲間がいなくなったぞ?」
「俺の2つの鎌が血を吸いたがっているもんでね。この鎌の餌になってもらいますよ。そうでもしないと仲間の血でも吸ってしまいそうなんでね」
「ほざけ、バミューダ・フヴェルゲルミル」
情報によると3発目のバミューダ。最も威力が高い一撃。それぐらいまあ別にどうってことないか。カッターは全部で167か。
「風魔法・炸裂弾」
風でできた弾丸を水の塊に1つずつ撃ち込む。そして、水の中に入った瞬間に空気を膨張させて水を破裂させる。
「最も威力が高いバミューダをいとも容易く破壊した……?
聖海澎湃……」
今日ほど落ち着き払えている日はない。何もかもがゆっくり見える。そして、何もかもが正確に動く。俺の身長より2倍ほど水でできた大きな半球体で俺を閉じ込めて、その中で水でできた槍で何度も刺そうとしているが、ゆっくり過ぎて簡単に避けることができる。何か、姉貴が力を貸してくれているような、誰かが温かく背中を押してくれているような感覚に陥っている。
「過負荷」
アトランティスでなんとか仕留めようと、玄野は必死に半球体の中で槍を俺に当てようとするが、俺の身体能力はオーバーロードを使用したことで更にその上を行く。今の俺は自分でも別次元の力を持っている気さえしている。
「無駄なんだよ。調子の良い俺を止めれるわけがない」
俺は接近戦に持ち込む。玄野の余裕の表情はいつの間にか消え去り、真剣一色に化していた。まあ流石4席。身体能力を向上した俺の動きにギリギリであっても付いて来ている。鎌と槍がぶつかり合う。心地良いリズムで金属音が鳴る。まるで音楽を聴いているような感じだ。
まあ俺も時間がない。俺の十八番を忘れてもらっちゃ、困る。俺は俺に対して逆風、玄野に対しての追い風を起こす。最近は使っていなかった俺の必勝パターン。
「向かい風でも、良いことはあるもんだ」
玄野に向かって刃を振りかぶる。玄野はあっという間に爆散した。
「こちら、エリア3。遂にここも突破された!次は最終防衛ライン、聞こえてる?」
『わかってます……あともう少しなんです……』
榊原君が珍しく焦っている。どうしたのだろう。
「あともう少しって……?」
『来た、蘇芳先輩!今データを送るので、これを使ってください!』




