玄武と泉 1/17
斎藤君の助言のお陰で、速水君と接触することができた。しかし、目の前にもう1人いた。『インフェルノ』のメンバーの1人である玄野勇武。その強さはトップスリーに負けない。その名前の最初と最後を取って、『玄武の玄野』というニックネームも付けられている。
ここで負けてはいけないというプレッシャーを心の底から感じる。だがその圧力に負けているようなら、そこまで。皆の期待に応じなければ。決勝を辞退した椿ちゃんのためにも。
『な、なんと、『ブレイヴ・ハーツ』の鳳選手と『ダーククルセイダーズ』の速水が、手を組んだ!』
「速水君。玄野先輩は厄介だけど、援護は任せて」
「オーケー、背後は頼んだよ。敵だからって、俺の背中には当てないでくれよ?」
速水君は冗談っぽく笑った。その表情の奥底にはきっと緊張が張り詰めているのだろう。少し引きつった笑顔になっている。
「さぁ、来いよ、1年。俺達は10席の中でも一味違うぞ。魔海壊神域」
学園でも珍しい槍使い。その中の頂点である玄野。更に水魔法使いでも最上位である。基本的に回復の役割があるが、攻撃の方面にも使える数少ない人物。
バミューダは特に危険視するべき技だと知られている。この技は水を手裏剣のような形にして、敵の四方八方を囲んで攻撃する技。逃げも隠れもできないフィールドにされる。
「遠距離の2人には荷が重いな。だが、とりあえず援護よろしく」
速水君が微笑みながら言った途端、私達の周りに星々のようなものが渦巻き始める。まるで私達が太陽になって、公転する惑星を眺めているようだ。
荒れ狂う流星が水の手裏剣を蹴散らす。流石速水君といったところだ。
「ほう。なかなかやるな。まだまだ序の口だ。本領のバミューダまで、あと2回あるぞ」
死の海域、バミューダトライアングルの三角形を意識したかのように、バミューダ・フヴェルゲルミルは3回目での発動で本領を発揮する。
「魔法力の回復は任せて」
「……もし耐えれなかったら、鳳さんも防御技を撃ってくれないか」
私はさっきの魔法攻撃を余裕で耐えていたものだと思っていた。しかし、速水君は私に手のサインを送ってくる。右手の親指、人差し指、中指を立てている。このサインはほぼ魔法切れというジェスチャー。きっともう一撃は辛うじて耐えられるが、3発目は……と言いたいのだろう。
魔法を初めから全力で使わなければ耐え切れない学園4番手の強さ。なんとか氷牙が来るまで2人で耐えなければ。
氷牙……!!
「こちら、椿です。どうやら上の人達が動き始めたようです。まず私のいるエリア6のダミーがばれそうです」
決勝がどうなっているかがわからず気になっているが、それはこの作戦に加担している人全員が思っていることだろうから、私はなんとか我慢する。
学園のシステムにハッキングを掛けている機体がバレないように、様々なダミーを仕掛けてエリア毎に分かれている。ハッキングを仕掛けているのは、エリア1で、最高の整備士蘇芳先輩。そして、最終防衛ラインのエリア2を担うのは、我らが恭介さんと『フォーチュン』リーダーの十刹さん。エリア3は駿河先輩。エリア4は聖先輩。エリア5は黒木賊先輩。それぞれのエリアで防御網を張って時間稼ぎをするという算段。このダミーの機械には、爆弾が仕掛けられていると脅しをかけ、直接そのエリアに赴くようにしている。まあ爆弾もダミーだけど。
『こちら、駿河。椿ちゃん、了解。榊原君と合流して、最終防衛ラインの警備を強化して』
「了解しました」
学園中に散りばめたダミーが破られるのは時間の問題。それまでに私にもできることをしなければ。その間、私にもできることをしなければ。




