最強のタッグ 1/5
今日は10日に開かれる最後の戦いに向けての会議だ。今日以上に重要な会議はないだろう。まだ学校は始まっていないものの、俺達はこの日のために集まった。
新年の挨拶をサラッと終わらせて、本題にすぐに移った。
「まず、今日決めなければいけないのは担当。まず整備士は基本的にNOAHを召喚する。それで負けた私達『フェニックス』は、自分の体をデータ化してデータ防壁を破壊。そして勝った君達の中の3人がNOAHを実際に叩く。まだNOAHは完全体になっていないから、簡単に破壊できるとは思うんだけど、不確定要素だから仲間は増やしたいところね。特にNOAHを守る防壁は頑丈なはずだから、こちらに人員が欲しい」
リーダーシップを執るのは、やはり駿河先輩だった。そろそろ受験が近づいてきた3年の先輩は、顔は見せているものの単語帳なりまとめノートなりを見返しながら話を聞いている。流石に人の将来は咎められないので、この場全員が事情を察している。
「仲間を増やせば良いんですよね。駿河先輩の人脈はどうですか?」
駿河先輩は少し悩んでいる表情になる。
「私の友達でも命を懸ける人は少ないんじゃないかな。それに言いふらし過ぎたら、この計画がバレて機会を逃してしまいかねないから……。大空君には当てはある?」
「……まず、信頼できる仲間はいます。それは真霧です。でも、真霧は決勝に進出していて……」
真霧は特待生チーム『デス&ヘル』との激闘の末に、勝利の旗を掲げていた。流石という言葉しか見つからない。
「仲間は多い方が良いよ。真霧君を呼び出せる?」
妙に駿河先輩が食いつく。確かに俺も最強と名高い真霧が仲間になったら、百人力どころか一騎当千、いやそれ以上だと思う。でも、真霧が勝ちに行くつもりなら、NOAHの計画に賛同しないだろうし。
「はい、大丈夫です。けど、賛同してくれなかったら、デメリットになるんじゃ?」
「真霧君はそんなに言いふらす人ではないと思うから、そこは気にすることないと思うよ。
あとはこちらの仲間ね……」
「それなら、十刹美波はどうですか。あいつのチームには相田天っていう整備士がいます。あのチームは1年生でも最高峰のチーム。きっと役に立つはずです。それに相田なら、俺も仲が良い方なので」
そう口を開いたのは、恭介だった。十刹の強さは、俺達は痛いほど思い知っている。パワーアップして、尚且つ自分達の実力を隠して圧勝はできたものの、自身の実力を既に曝け出してしまっていれば、完全に苦戦を強いられていたはず。もしかすると、負けていたかもしれない。
「うん、私は賛成。異論のある人は?」
皆の表情を見る限り、十刹は信頼しているように思えた。つまり反対している人は誰1人いなかった。
「よし、じゃああとは、君達のスタメン。キャプテンの大空君は整備士の方に来て欲しいのが本心だけど、私の願いも踏みにじって試合に出たぐらいだから、勿論出るよね」
俺はギクッという擬音が出ようとするかのように本心を言い当てられたので、苦笑いを浮かべた。
「あとは氷牙君はエースだし出るだろうし、あとは女の子2人だね」
「あの、私、試合に出ません」
そう言い放ったのは、椿だった。俺は椿の負けず嫌いの精神からして、ここは舞台に立ちたいと言い出してくるものだと思っていた。それなりの決心があるのだろう。椿の続く言葉を黙って聞く。
「私が入っても、次の決闘にきっとメリットは無いんです。私が使うのは加速魔法という燃費が悪いものです。それに爽乃ちゃんなら、水魔法を使えるし仲間を回復できる。それに、私は先輩達との闘いで十分に満足したんです。だから、私は試合に出ません」
椿が勇ましく見えた。出会った頃はどこか頼りないイメージだった椿は、このチームで過ごすうちに変わっていったのだなと思った。どこか嬉しい気持ちになった自分がいた。
「椿がそう言ってるんだ。あとは爽乃が出たいか出たくないかだ」
爽乃は躊躇っていた。俺達と同じように椿が出ると思っていたのだろう。
「私ね、皆の実力に追い付こうと必死だった。でもね、それだけじゃ満たされない才能っていう壁があった。本当に強い人ばかりが集まる中に私が入っても、多分何もできない。足手纏いになる。だから、私は試合に出たくない」
爽乃なりに出した答えだった。爽乃は才能がないと思ったことがない。遠距離だからこそ援護を任せられたし、持ち前の明るさで俺もポジティブになれた。だが、その陽気な爽乃が心の底ではそう思っていると思わなかった。俺はそのことを考えると、口を開けなかった。
意外にも口を開いたのは、単語帳を見ていた聖先輩だった。
「鳳さん、それは違う。
確かに、努力じゃ埋められないものもある。多分鳳さんが一番理解していると思う。だが、最後にてっぺんに立つのは、個人が強いチームじゃない。君達は俺達を破ったように、チームがお互いを信頼し合えるチームだ。仲間の絆の強さがそのチームの強さだ。君達はチームとして、出来たてホヤホヤで未熟だ。でも、色々紆余曲折があっただろう。その中でお互いに支え合い、ここまで来れただろう。だから大丈夫だ。足手纏いになんかならないよ」
流石『寛容王』と呼ばれるだけある。本当に温かい言葉で、百戦錬磨の指揮官としての言葉をくれる。この人に勝ったのが不思議なくらいだ。
「そうだね、聖の言う通りだ。氷牙君や大空君も個人としてまだまだ未熟だ。でも、それを友情という力が補うように俺には見えるよ。だから俺は鳳さんが出ることを推薦するよ。きっと君にもその力があると」
そう便乗するのは、クールな黒木賊先輩だ。冷静に俺達のチームを分析した上での言葉なのだろう。説得力がある。先輩方が言葉を連ねる中で、キャプテンである俺が口を開かないのはなかなか情けなく思う。恥ずかしい。
「わかりました。私、出ます!」
まあ、爽乃に自信が湧いてきたようで、終わりよければすべてよしといった感じだ。
「まあ蛇足ではあるけど、NOAHが完全に覚醒した時に対処できるのは、もしかしたら鳳さんだけかもしれないし、私としても嬉しいかな」
「じゃあ、話もまとまったみたいですし、真霧に電話してみますね」
俺が真霧に電話を掛けてみると、すぐに真霧に繋がった。
『ああ、正義君か。こんな時間に何の用だい?』
もう夜も更けていたから、申し訳なさを感じる。
「ごめん、真霧。決勝戦に頼みがあるんだ」
『賄賂かい?それなら、断るよ』
真霧の鬼気迫る声色に圧倒される。
「いや、そういう訳じゃないんだ。実はNOAHっていう人工知能が悪用されそうで」
突然部屋のドアが開く。鍵を閉めていたはずなのに!
部屋の中の皆が身構える。
ドアの前に立っていたのは、真霧と十刹、それに彼らのチームのメンバーだった。
「話さずともわかっているよ。是非協力させて欲しい。それに、城ヶ峰君はどうも俺1人だけでは倒せないだろうからね。共闘をこちらからも申し出る」
「ああ、勿論だ、真霧。お前と共に戦えるだなんて力強いよ!」
「それに私も手伝いますわ。紫ノ宮さんの、大空さんへの盗聴が簡単に成功しているんですもの。それにこの鍵だって、紫ノ宮さんにあっさり開けられている。心配他なりませんわ」
部屋中の視線を俺に感じる。お、俺は悪くない。盗聴されるとは思わない。
「まあ、これで鬼に金棒ってわけだ」
これ以上の最強のタッグがあるのか、と言わんばかりのチーム。想像するだけで鳥肌が立つ。
「そして、正義君。君には俺との合体技をしてもらいたい。城ヶ峰君に勝つにはきっとこれが必要なんだ」
……俺が、真霧と、コネクト!?




