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BRAVE HEARTS  作者: 刹那翼
第5章 ブレイヴ・ハーツ
74/88

贋作と本物 12/27

今回は『ラグナロク』総当たり戦での最終日。一番大事な試合だ。真霧からは力を抜いて行けと言われたが、どうしても上手くいかない。

ボウガン使いの竜胆は基本的に遠距離の俺が担当し、残りの2人は真霧が担当。サポートとして要所要所に紫ノ宮が入る予定だ。真霧なら2人を相手しても勝ってくれるだろう。問題は俺の実力がどこまで通じるのかだ。真霧の闇魔法は広域をカバーできるため、守備にも攻撃にも適しているが、俺の魔法は火属性と光属性の流星を模したもの。ダイナミックな動きであるため攻撃手段として躍動できるが、守備が疎かになりやすい。特に竜胆のボウガンはガードできないと予想できる。下手をすれば撃ち合いになる。


「さ、どうせ速水君が当たりたかったのは俺だろうし、俺から赴いてやったぜ?」


目の前に現れたのは、ツーブロックの金髪。ただのヤンキーと名高い竜胆。


「それはありがたいですね。では、早速始めましょうか」


俺が想像していた通り、撃ち合いになる。俺の技は一度のダメージは大きい。しかしそれは当たればの話。どうやら竜胆のキャリアは相当なもので、簡単に攻撃を避けられている。これでは埒があかない。そう思っていると、ボウガンの矢が右足に突き刺さってしまった。どうやら、竜胆の得意とする腐敗魔法が右足からじわじわと効いてきていた。腐敗していくと、その部分が機能しなくなるという厄介なもの。早く対処しなければならない。

しかし、俺はそのまま体勢を崩してしまう。これではやられる一方だ。竜胆はボウガンの2発目を放とうとしている。俺は咄嗟に回避手段として思いついたことを実行に移す。

流星を竜胆に当たるのではなく、俺に当てて吹っ飛ばしてボウガンを避けることに成功する。そこそこのダメージはあったが、右足を切断できたため一石二鳥。


「そう避けるとは中々頭が良いな。そうやって俺の泥沼戦術を避けたのは、お前が初めてだ」


「そりゃ、どーも」


しかし足が片足ないのは、ディスアドバンテージ他ならない。大技で決めにかかるしかない。


流星ノ轍(スタートラック)


俺の数少ない必殺技でも、最も安定して出せる技を使用する。最も信頼している技だ。決定打となってくれ。


「この程度か。全て避ければ問題ない」


俺の攻撃を全て避けられる。俺は何もできずにやられてしまうのか。今度は右肩を撃ち抜かれる。終わった。そう思った刹那のことだった。


時空超越七剣戟ディメンションテリトリー


俺達のジョーカーでもある紫ノ宮が伏兵として、こちらにアシストしにきていたのだ。紫ノ宮の変幻自在な攻撃に流石の竜胆もノックアウトさせられた。


「お前は、かっこつけやがって。後は任せた」


「やだね」


全く、ブラックジョークが多い奴だ。




最初からダークネス・オーギュストを使った状態で短期決戦に持ち込むしかない。その理由として、模倣魔法使いである紫苑蓬がいるから。


「さぁ、うちのじゃじゃ馬が時間が欲しいようでね。その間、私がいたぶってあげる」


相手として申し分のない相手の朽葉忍。俺の実力試しとしては丁度いい。

早速、朽葉はフィールドを毒のフィールドとする。勿論、チームメイトの紫苑に当たらないように。それほど精密に毒を扱えるのかと、俺は感嘆する。

俺も毒に侵されまいと、闇を自分の足元に展開する。


「飴と鞭を使い分けるのが面倒でね。毒と鞭にさせてもらってるんだよ。悪いねえ!」


しなやかな動きをする鞭に、俺は闇魔法で反応するが、どうやら変化球のように曲がって背中に毒の鞭が当たってしまったらしい。じわじわと体力が減っていく。4つの振り子の動きを予想するスーパーコンピュータの気持ちが今なら理解ができる。

まあ毒に侵され続けるのはこちらとしても本望ではない。


「自分の闇で毒を負った部分を剥ぎ取っただと!?」


俺は応急処置として、闇で自身の毒状態になった体を破壊した。


深淵の終焉エンド・オブ・ジ・アビス


闇をもって毒を制しきった俺は、朽葉に渾身の必殺技を食らわせる。


「まあうちの紫苑は本領発揮すると、このチームで誰よりも強いけどね」


 『デス&ヘル』のリーダーでもある朽葉は、そう言い残してこのフィールドを去った。敵は残り1人。しかし、どうやら闘いが終わるタイミングが悪かったようだ。


「やっと君を描けた。大空君と真逆の存在でもあり、唯一無二の彼の理解者」


「俺なんかを描いても楽しくないと思うけどね。正義君はもっと凄いよ、俺よりも」


「さぁ、そんなこと言ってないで勝者を決めよう」


「そうだね。ラグナロク予選Bグループのフィナーレだ」


地属性の創造を超えた芸術。それは実物よりも強い虚構を生み出す。実物の欠陥を埋めた、より完全に近い偽物だ。俺の闇魔法を容易に超えた密度。ぶつかり合った時、負ける。それが容易に想像できる。


「俺1人が強いんじゃない。俺は彼と同じように仲間と強くなったのだから」


「……そうか、僕はそこまで描かなきゃダメだったのか。しまったなぁ」


贋作には作り出せない本物の良さがあるんだ。本物には本物が体験してきたものがあり、贋作はそれをアレンジしてより強固なものにできるものがある。しかし、俺が本物にされたとして、偽物には負けたくはない。

闇は婉曲だ。誰かが居て、ようやく初めて存在できる。


「2人揃って自傷攻撃かよ。お前ら病み期か?闇だけに」


「面白くもないジョークだ」


秦哉の空間操作の剣を用いて、良いとこ取り攻撃が紫苑に突き刺さる。そして、俺も闇魔法に飲み込まれる。

どうやら、相打ち。だが、俺のチームの秦哉が生き残っている。故に俺達の勝ちだ。

正義君、君達も勝ち上がってきてくれ。そして、決勝で決着を付けよう。

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