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BRAVE HEARTS  作者: 刹那翼
第5章 ブレイヴ・ハーツ
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双龍×蒼龍 12/27

 なんとか氷牙が来るまでは耐えようとはしているが、周りが少しずつ植物で囲われてきている。最低限光魔法の届く範囲は、自分の領域として守らなければ押し切られる。


「まだ気付かないのか?大空君」


「……え?」


 俺は聖先輩にそう言われて気付く。いつの間にか光が薄くなって暗くなっていた。植物が日差しを妨げるように生えていた。防御に夢中で全く気付かなかった。いつもは敵の戦略に気付けるのに、聖先輩は自然過ぎる。将棋をしていて、いつの間にか王手をかけられていたかのような感覚だ。自分の領域ばかりを考えている場合ではなかった。


「これで君も終わりだ。木の中で安らかに眠ると良い」


 俺は自分の負けを悟った。俺は極太の蔦に絡みつかれていた。


「そうはさせねえよ、先輩」


 その声と同時に太陽の光が煌めきと共に降り注いで、乱反射を起こす。光魔法が使える!蔦を光の剣で斬り裂く。植物の壁に穴を開けたのは、やはり氷牙だった。あの黒木賊先輩に勝ったのか。俺は驚愕しつつも、賞賛したい気持ちに駆られる。


「氷牙か、助かった!

 ってなんで、鎌を2つ持ってるんだ?」


 氷牙は姉の形見の鎌と俺達が創り出した最高の鎌を携えていた。


「今はそれどころじゃないだろ。集中しろ」


 氷牙は少し怒った表情で、俺に聖先輩の方を見るように促した。聖先輩は何やら見たことのあるモーションをしていた。あのモーションはまずい!


聖霊宿りし深緑(ヴァルハラ)


 聖先輩のヴァルハラは、木魔法ではあるが植物を出現させずに次の技の威力をアップさせる技。次の技を出すまでは一時的に防御力が上がるという厄介な技。防御力をアップさせるだけで次の技は撃たないなんてありえない。きっと次は大技が来るに違いない。次の技までに倒したいところだが、俺も氷牙も直接攻撃は勿論、遠距離攻撃も光魔法や風魔法のギリギリ範囲外。今から攻撃しに行ったら、むしろやられる。やはり間合いの取り方も技を出すタイミングも上手い。流石、学園最強の司令塔。次から次へと攻撃の一手を指し続け、その手を緩めようとしないその姿は聖なる死神のように見えた。


安寧なる世界樹(ユグドラシル)


 世界を内包するとされる大樹であるユグドラシル。まるでそれを再現するかのような偉大さ。貫禄が並大抵のものではない。3つの大きな幹の太さが俺の身長ぐらいの直径。木魔法は省エネなのに、この迫力を見ると、それが嘘に見える。この人の魔法力はどうなってるんだ。斧だけでも十分強いっていうのに。

 ユグドラシル単体ではあまり効果を発揮しない。しかし、ユグドラシルを発動することにより、今まで発現させてきた木魔法の威力が増大する。


「足を取られるなよ、氷牙!」


「わかってるよ!」


 植物がまるで巨人の手のように動き出す。そして、俺達に襲いかかって来ようとする。俺は必死に光魔法でそれを逸らそうとしたが、ユグドラシルの効力からなのか、俺達に向かって来るのをやめない。俺と氷牙はだんだん植物の魔の手によって遠ざけられる。これ以上遠ざかるとコンタクトが取れない。

 氷牙は何か打開する策を思い付いたのか、俺に向かって叫ぶ。


「正義、双龍千本桜を同時に撃つぞ!」


「え、氷牙、今何て言った!?」


 双龍千本桜は俺の技だろ。なんで同時に撃つぞなんだ?鎌を2つ持っていたり、こんなことを急に言いだしたり、今日の氷牙は訳がわからない。


「いちいち細かいこと気にしてんじゃねえ!さっさとやるぞ!」


 わかったよ、やってやる!俺は植物の魔手を気にせず氷牙の方向へ突っ走る。氷牙も同時に俺に向かって走って来る。ある程度近づくと、世界樹が立つ方向に方向転換する。


「カウントダウン!3、2、1!

 双龍千本桜!」「蒼龍颪千本桜!」


 俺と氷牙は2頭の龍のような唸りを上げる千本桜を世界樹に放つ。氷牙の奴、鎌を2振り使うことによって、この技を再現するなんて、やりやがる。

 俺も負けてられない!

 世界樹が強烈な爆音と共に真っ二つに斬れる。


「ユグドラシルが、折られただと!?」


「正義、行け!」


 氷牙が俺の背中に暴風を当てる。俺はユグドラシルにタックルするように双龍千本桜を放っていたのだが、そのまま吹っ飛ばされるように聖先輩の懐に入ることに成功する。氷牙が考えた奇襲作戦は面白いが、手荒過ぎるんだよ!


「……うおおぉぉおお!大空流参ノ型・桜花連斬!」


 氷牙の風魔法を利用し(氷牙もそのように風をコントロールしてくれていたのだろう)、俺は体を急旋回させて聖先輩の腹に斬撃を何度も入れる。


「……君達に、霙さんの面影を見たよ。常に冷静沈着だが、時には豪快に躍動する。まるで君達のチーム自体が霙さんのようだ。最後の最後で楽しませてもらったよ。ありがとう。君達と闘えて良かった」


 自身を破った敵ながら賞賛を送るその姿は、数々の死闘を勝ち抜いてきた戦士そのものだった。散り行く聖先輩に思わず、俺は心の中で敬礼を捧げた。

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