朱雀と焔 12/27
「まさか、私が今まで援助してきた『ブレイヴ・ハーツ』と当たるなんてね。悪縁も良いとこよ。
私の相手は貴女なのね。このチームに入るように勧めた、椿ちゃん」
目の前に立ちはだかるのは、駿河雀。この学園随一の素早さを持つ。そして、この学園の女性の中で一番強い人でもある。その速さのことを別名『朱雀の駿河』と呼ばれていて、朱雀は彼女の名前から無理矢理付けられたのだとか。
私はそんな駿河先輩と闘いたかった。彼女とは昔からの知り合いで、いつもお世話になっていた。私の憧れだった。気さくで笑顔を絶やさない彼女が、物静かで笑うことができない私には大きく見えた。そして、このチームを勧めてくれたのも、駿河先輩だった。彼女は私にとって恩人だ。
「私も、先輩にこのチームに誘ってもらって、本当に感謝してます」
「その恩を仇で返しちゃう?」
駿河先輩はいじらしい笑顔を浮かべる。これが彼女の人気の秘訣なんでしょう。
「そうさせてもらいます!」
私は二振りの剣を召喚し、駿河先輩に斬りかかる。しかし、伊達な速さじゃない。加速魔法を用いても、全くいつ避けられたのかわからない。
「血に染まる月・凍える月、ルナ・エクリプス」
「螺旋焔斬」
冷気で微々たるが、駿河先輩の俊敏性を落としているというのに、私の大技七連撃のルナ・エクリプスが全て受け止められる。ジャイロブレイズは駿河先輩の中でも、あまり強くない必殺技。魔法コストを抑えた上で、私と相対している。本当に、強い。
流石10席と言うべきなのだろうか。私の攻撃力やスピード、それに精密動作性に運を付け加えたとしても、とても太刀打ちできる相手ではない。
昔からそうだった。先輩と知り合ったのは、中学の時に所属していた陸上部でのことだった。駿河先輩は今でこそ、料理部に入っているが、中学の時は運動会系の部活に入っていたのだ。私は今も自分に自身が持てないが、足の速さだけには誰にも負けないという絶対的な自信があった。それを簡単に超越していたのが、駿河先輩だった。私の最後の才能を摘み取られたような気がした。負けて悔しがる私に向かって、先輩はにこやかに凄いねと言ったことは今でも鮮明に覚えている。その時に吹いていた風の強さも、夕暮れのグラデーションも、キラキラと煌めく先輩の髪も。
私は悔しくもあり、清々しかった。完全的な敗北を知って、それがかえって気持ちが良かった。まだ、越えるべき人がいると。負けず嫌いの私だから、心がメラメラと燃え始めた。
今もそうだ。私は負けると確信している。でも、簡単には負けられない。駿河先輩の脆弱な点を鋭く尖った刃で、一矢報いるまでは終われない。
キャプテンは私のことを信じてくれた。私はキャプテンと氷牙さんが来るまで駿河先輩の攻撃を耐え忍ぶことを。越えられない壁なんてないと言っているような顔で、いつしか私が駿河先輩と闘いたいと直接述べた時に黙って首肯してくれた。
それに、恭介さんも私の武器を丹精込めて作ってくれたんだ。私が前へ前へ向かうために。
私は私であり、私だけじゃない。皆と触れ合う中で、私という人間が作り上げられているんだ。だから、今度は私が皆のためになる番なんだ。キャプテンが倒れた今、頼ってばかりいられない。少しでも皆の荷を軽くしなければならないんだ!
「神羅七連撃・金環月食」
氷牙さんのおねえさんが使ってたとされている技、神羅七連撃。その風魔法の威力を炎と氷で応用して作り上げる。それだけじゃない!
「×月詠・変若水」
駿河先輩にクリーンヒットとは言えないが、ダメージを与えることに成功する。私は攻撃の手を緩めないスピードスターなんだ!最後まで先輩を翻弄し続ける!




