最後の1人 12/13
いよいよ、決戦の日。チーム全員の顔がいつもより凛々しく見える。恭介はメンテナンスをしていたのか、目の下のクマが際立っている。それだけ、今日は『ラグナロク』の明暗を左右する試合だということを意味している。試合開始数分前、俺達は丸くなって肩を組む。そして、小さな声で言い放つ。
「行くぞ、ブレイヴ・ハーツを胸に」
皆はコクリと頷いた。表情は真剣そのもの。今の俺達なら、無敵艦隊を倒せる。真霧達との運命なのか、メンバーは模擬戦の時と同じ。椿は前の試合に撃破されてしまったため、爽乃が代わりに出ることになったからだ。さぁ、リベンジか防衛か。
兄さん、お願いだ。力を貸してくれ。
地形情報は『エルドラード』決勝特有の黄金郷。フィールド中央に立派な金色の祭壇が佇んでいる。そしてその周りを黄金の長い柱が何本も囲んでいる。特に問題視するような地形はなく、今まで以上に実力比べの闘いとなる。
俺の初期地点の近くは爽乃が居た。氷牙もそう遠くはないが、真霧を探すために、この地形の一番高い場所である中央の祭壇に向かった。
「正義君、今のところ作戦通りだね」
「ああ、でも残りの1人の出方が気になる。大事な試合だから全試合に出場して、サポートしているみたいだけど、装備にフード付きマントをアタッチメントしているから、本性を現してないんだよな……」
「まあなんとかなるよ!」
爽乃の言う通り、前向きに行くしかない。
「正義君、危ない!」
剣が俺の髪をかすめる。俺は思わず目を見開いた。
「時空超越剣」
地面に刺さっている剣に、ある人物が現れる。いや、そっちじゃない!
「爽乃!速水が来ている!そっちは任せた!」
「あいさ!」
俺は爽乃に背中を預け、剣に現れた人物の方を見る。その姿は驚くべき人物の姿だった。
「いや、待ってくれ。お前が、最後の1人……?」
「ああ、そうだ。あの夏、俺を呼んだのは真霧だ。だから、普段はいないのに部屋に居たってわけだ」
目の前に立ち塞がるのは、紫ノ宮秦哉。昨日の夜、頑張ろうなと述べていたのは、こういうことだったのか。
「爽乃!一瞬たりとも気を緩めるな!」
前に立っていた紫ノ宮が、爽乃と対峙していた速水と瞬時に入れ変わる。やはりこいつが空間魔法使いっ!
「大空には模擬戦で借りがあるからな。流星ノ轍」
俺の周りを光と炎を撒き散らす流星が流れ始める。は、速いっ!
「間に合え!光魔法・叡智の盾!」
速水は光魔法使い。こちらも光魔法は扱えるので、それは防げるが、同時に速水は火属性魔法も扱う。そっちは完全に扱うことができない。俺は光の盾に侵食してくる火を防ぎ切れず、ダメージを受けてしまう。やはり、速水は手練れ。更には、空間魔法(仮の名称だが)を使う紫ノ宮。これ以上に最悪の組み合わせはない。
更に悪いことには、爽乃のところに紫ノ宮が入れ替わっていることになる。爽乃の武器は遠距離戦モードから近距離戦モードに移り変わるまで多少のタイムラグがある。この戦況はまずい……。
「やはり俺の相手は君か。冷姫君」
俺の前に立つのは、真霧聖司。闇魔法を使用する人間には見えない眩しいオーラを放つ人物。こいつの前に立つと体が武者震いを起こす。それは恐怖からなのか興奮からなのかは俺にはわからない。
「お前は昔そんなに強くなったよな。今の俺には、よく分かる。あんたには誰か信頼できる奴がいたんだろ?」
「その通りだよ。まるで、昔の正義君のようだった。
でも、うちの最後の切り札である秦哉に俺の実力を見出された。それは流星も同じだ。俺達は落ちこぼれまではいかなかったが、中途半端だった。俺は真っ向勝負を挑んでいく性格で、トリッキーな動きをしてくれる秦哉とは息があった。阿吽の呼吸ってやつかな。君と正義君みたいなものさ。
だから俺にはわかる。彼らは正義君と鳳さんを必ず苦しめると」
……秦哉。紫ノ宮秦哉か。あいつは俺とクラスメイトだが、何を考えているのかわからない不気味さを持つ。あいつは間違いなく正義を翻弄するだろうな。
「だが、俺にもわかる。正義と爽乃なら、2人を倒してここに来ると。それは1人が負けたとしても必ず」
「……そうだね。じゃあ俺達も始めようか」
正義、俺はお前との作戦通りに、お前が来るまでの間時間稼ぎをする。今のお前なら、奴を倒せる。だから、お前が勝て、正義!




