覚醒 11/29
『氷牙、俺の方に向かって来てくれ……十刹がこっちにいる』
正義が必死そうな声でこちらに連絡を取ってくる。全く見つけられないと思ったら、正義達の方に息を潜めていたのか……。やられた。
「大丈夫なのか!?」
『ああ、なんとか波魔法で銃弾の軌道を逸らしてる。だが、破られるのも時間の問題だ』
「ああ、わかった」
俺がやっと到着すると、正義の防戦一方だった。先に俺の気配に勘付いたのは、十刹だった。まずい。右手の銃の銃口をこちらに向けられる。
「やっとエースがご到着ですわね」
「氷牙、危ない!」
「余所見は厳禁ですわよ!」
正義は俺に向かって飛んでくる弾丸を波魔法で逸らし、自身は左手の銃の弾丸をかすめていた。
俺がいない方が、完全に良い勝負ができるんじゃないのか。正義、お前には俺が必要なくなって来ているんじゃないのか。
『迷っているのなら、これ以上動くな。氷牙』
この緊迫した状況下で、急に俺の無線が鳴る。無線の相手は、恭介でもなく、爽乃でもなく、退場させられた椿でもない。意外にも、音坂先生だった。
「先生……。俺が、俺がここで闘えなけりゃ、どうするんだよ!俺達の願いが果たせなくなる!」
『もう一度言う。今のお前は、正義には完全に足手まといだ。動くな、氷牙。今動くと、キャプテンにもチームにも迷惑を掛けるだけだ。それは自分でもわかっているだろう」
十刹や真霧と戦闘中に面と向かっても、感じたことのない、絶望。俺が最も大切にしてきたものは、仲間だ。どんな強敵を相手にして負けるより、仲間に迷惑を掛ける方が俺には怖い。今までは俺がエースとして、正義がキャプテンとしてチームを引っ張るスタンスだった。だが、それぞれがみるみると力を伸ばし、光が強くなった今、俺の存在が完全に薄くなっている。俺は、ここには必要ないんじゃないか。
だが、俺は、このチームで……。
「俺は、俺は勝ちたいんだよ!」
『勝ちたいなら、言われた通りにしろ。お前は、今まで自分を貫き過ぎたんだ。心の底では、もう一人のお前がいた。仲間と共闘したくない。信じきれていないお前が』
自分を貫き過ぎた……。仲間を信じきれていない……。大切な、仲間を。
『前を見てみろ。お前は目の前しか見えていないんだ。前を見ろと私は言ってるんだ。前に立っているのは、敵だけじゃない。お前のキャプテンも立っているんだ。お前のキャプテンはお前を信じているぞ』
……あいつは俺を信じている?こんな俺を?1人じゃ何もできない俺を?姉貴がいなければ、立ち上がれなかった俺が?
俺の視界が急に開けた気がした。
『もう一度言う。迷っているのなら、動くな』
「ああ、わかったよ、先生」
俺は一歩進む。先生の言うことに反したからじゃない。俺はもう何1つ迷ってなどいないからだ。
「1人じゃ何も出来ないのは、変わってない。今もそうだ。……だが、俺はもう1人じゃない!
正義!俺に合わせろ!」
「勿論だ!」
正義は俺の掛け声に合わせて、走り出す。
「「合体技・菊咲一華!!」
俺は風魔法で可能な限りの突風を吹かせる。立っていられるかどうかの暴風。
「それがどうしたというのです!」
風の中で立つ、一輪の花。十刹の長い髪を風が煽る。やはりお前は強いよ、十刹。今の俺の実力では、1人では絶対に勝てないと確信できる。
だが、俺には唯一無二の、以心伝心の仲間がいる。
俺の巻き起こした風を打撃属性の弾丸で破り、ポップアップショットで俺の脳天を撃ち抜こうとするが、俺のキャプテンの援護によって、大空へ飛んで行った。
行けよ、キャプテン。お前が羽ばたく時だ。
『菊咲一華』は何かしらの魔法で相手の身動きを封じ、もう1人が相手を斬り込むという2人技。初めて合わせたというのに、完璧のタイミングだよ。
十刹は晴れ晴れとした表情で電脳空間を去った。
正義は俺に何も言わず、右手を挙げる。俺は相棒が挙げた右手を俺の右手で強く握った。
1年生第2位『フォーチュン・ゴッデス』VS同第6位『ブレイヴ・ハーツ』
勝者『ブレイヴ・ハーツ』。格上相手に苦戦を強いられるも、チーム力で相手を上回った。大空正義、残りHP36%。次回86%でスタート。
次の対戦相手、『ダーククルセイダーズ』




