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BRAVE HEARTS  作者: 刹那翼
第3章 嵐の前の静寂
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NOAH破壊計画と反対 10/27

「今日は集まってもらって申し訳ない。今回ばかりは、皆に話がしたくてな」


 声を掛けたのは、うちのチーム全員は勿論のことながら、聖先輩率いる『フェニックス』全員。参加を拒否したのは、黒木賊先輩と蘇芳先輩。行きたくないから欠席だということではなく、最後の大詰めで忙しいらしい。この話し合いの結果は参加しているメンバーが責任を持って伝達してくれるようだ。


「まず、この解読文を全員見てほしい」


「……?あなたは、NOAHを、破壊しなければならない?」


 爽乃も勉強したんだな。少し感心する。7月のテストの時の和訳とは大違いだ。音坂先生も頷く。


「そうだ。霙らしくもないな。NOAHは虹村理事長が管轄下に置く最高機関でもあるのに。『Nijimura Operation Aimed Heven』……この名前からして、私自身としても、気に食わないものだったよ。全ての情報を記録することが天国を目指したものだって到底信じられないからな。

 彼女はNOAHを壊そうとして、何者かによって始末された。こう考えるのが妥当だろう。

 霙は元『フェニックス』のメンバーかつ創設者だったんだ。チームメンバーはこれ以上のことを何か知っているんじゃないか?」


 音坂先生は駿河先輩と聖先輩に話を振る。答えたのは、聖先輩だった。


「……実のところ、俺達は決定的な時を逃してきた。でも、今やらなければ、NOAHを破壊する時はもう来ない。霙さんの暗号が解けて、それもスッキリした。本当に壊すべき存在なのだと」


「YOU MUST BREAK NOAH……」


「そう、その暗号。先輩が命懸けで守ろうとしたものを受け継ぐ必要があると思う。俺達も、命懸けで。勿論、これは皆の将来も奪うことになるかもしれない。無理にとは言わない。ただ、冷姫先輩がたった一人で努力したことは知っていてほしい」


 誰も声を出そうとしない。深刻な雰囲気に気圧されているのだ。

 まず静寂を破り口を開いたのは、意外にも無口な恭介だった。


「聖先輩や駿河先輩なら知っているはずです。NOAHを破壊しなかったらどうなるのかを」


 俺の質問に対して口を開いたのは、駿河先輩だった。


「……そうね。それを話しておかなければ不公平よね。

 NOAHはこれまでに行われていた試合を全て記憶している。これは皆の知っての通りよね。勿論、VR体育祭だってそう。土日を挟んだのは、正確に記録しておくため。更には、退学処分があるのもより優れたデータを抽出するため。

 じゃあ、もしこの全てのデータを人工知能を持ったロボットにインプットして戦争に使ったら、どうなる?

 よりイメージできるように説明するわね。過去にあった将棋の名手の対局のデータを人工知能に詰め込む。そして、その人工知能が実際に名人達と手を交えた。すると、その道の達人も苦戦を強いられる結果となった。

 この事実から導き出される真実は1つ。戦闘データを悪用されると、この世界は終焉へと向かう。つまり、NOAHを破壊しなければ、未来は無いの」


 ……そういう意味なのか。

 だが、1つ突っかかる事柄がある。


「ですが、何故先輩達は今までデータの消去を実行に移さなかったのですか?」


 駿河先輩は少し顔をしかめる。 話す順番を決めていたのだろう。少し悩んだ顔を解いて、深い息を1つ吐いて説明を始める。


「理由は2つね。

 まず1つは最もらしい理由。冷姫君のお姉さんが殺されたということ。単にデータを残すだけという意向も考慮に入れられる。しかし、人殺しをしてまでデータを守った。これは人を殺してまで守り通したいものがあった。そして、先輩を破壊するという行動を起こさせた。彼女の人物像は、かつて彼女は『フェニックス』に在籍していたから耳にしたことがある。彼女は感情で動かない。是非を考えて行動すると。是非を考えて行動した結果が、この不愉快な結果を招いた。

 そして2つ目。NOAHへの侵入経路は完全に閉ざされているの。その裏付けが取れた。それは、先輩が侵入を試みて失敗したから。侵入を許してしまったから、更に警備を強化した。だから実行に移すことができなかった。これは無駄な犠牲を減らすためだけの自分勝手な理由ね」


 駿河先輩の声色を伺うと、自身のことを恨んでいるような言い方だ。霙さんとあまり関係がないはずだから、今まで何もしてこなかったことへの後悔からだろう。


「先輩は正しいことをしたと思います。無駄な犠牲は減らすべきです。尊い命が亡くなっているのに、犠牲者を増やすのは言語道断。

 でも、侵入方法が無い今、どうやってNOAHを叩くんですか?」


「ありがとう、大空君。

 そして、良い質問ね。NOAHを叩くのは、幾つか方法がある。無理な方法から説明すると、NOAHがパンクするほどの過負荷を与えること。これはほぼ不可能。10年以上の映像を鮮明に記録できるNOAH。これを過負荷に追い込むだなんて、到底できるわけが無い。

 次に、NOAHを爆破。こんな派手なことをしたら、むしろ犯人を洗い出されて犠牲が増える。それ以前に警備でNOAHに辿り着けない。

 最後に、NOAHを叩く。VR空間に実体化させて。NOAHは今は不完全。データ整理をしている途中。きっとラグナロク決勝で完成される。それまでにNOAHを破壊すれば、理論上はデータを削除できる。実体化させるのは、うちの蘇芳が任せろだってさ」


 流石唯一の整備士で10席に入っているだけある。


「……NOAHを実体化してどうにかなる話なんですか?そして、実体化したとしても倒せるかどうか」


 駿河先輩は整備士ではないため、困った表情を浮かべる。


「それはできるんじゃないかな。完成されてもないのに、いきなり実体化させられたら、ほぼ無力なんじゃないかな。起動した瞬間のパソコンでインターネットを開こうとした感じかな。あとは、寝起きの時にアップもせずに走れって言われているような感じ」


 そう答えたのは、整備士の恭介。流石俺より知識量が多いだけある。いや、俺が大したことないだけ?


「それには納得しました。

 でもその話からすると、霙さんのデータも残っているんじゃ……」


 椿の提案に爽乃が納得する。


「あ、そうか。霙さんの全てのデータを集めれば、霙さんと擬似的に闘うことができるんだ」


「ああ、確かにそうだ。だが、これは二者択一だ。霙さんのデータだけバックアップを取りながら、NOAHを潰すなんて器用なことができるわけがない。

 このNOAH破壊計画を実行に移すかを決めるのは、氷牙君。君だ」


 聖先輩が氷牙へ話題を向ける。氷牙は黙り切り、腕を組んで下を見ている。一番辛いのは、当たり前だが、氷牙に違いない。それなのに、氷牙に選択権がある。


「俺は……NOAH破壊計画を降りさせてもらいます。確かに、俺の姉貴は命を懸けてNOAHを破壊しようとしたかもしれない。でも、あのメッセージは取り方によっては、姉貴は俺にそのままでいてほしいと言っているようにも取れる。つまり、俺は姉貴と闘いたいと思ったままの『Keep on』でもあるはずなんです。だから、申し訳ないですけど、俺は反対します」


 場が静まり返る。


「……じゃあ、そういうことで良いな。これでこの協議は終わりにしよう」


 胸にわだかまりが残るような、霧の中で足掻いているような、パッとしない心境のまま場は解散となった。

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