表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BRAVE HEARTS  作者: 刹那翼
第1章 動き出す運命
5/88

ビギナーとマスター 6/21

 一つのコントロールビット、いわゆる『BCP』に入り、生徒番号を打ち込む。すると、既に駿河はいた。とは言え、俺より早く準備していたので当たり前か。


「準備は出来た?」


「……はい」


 取り敢えず、スキルセットしてある剣を出す。駿河の基本武器も剣のようだ。

 距離はざっと10メートルやそこら。遠くもなく、近くもないという距離。


「じゃあ、始めちゃうね」


 そう言いながら、両者は剣を構える。カウントダウンが始まる。3……2……1……。

 0という数字が視界で弾け飛ぶ。それと同時に、剣をしっかり両手で握る。

 それは愚行だった事に、俺は瞬時に気付く。駿河は0が浮かんだコンマ1秒単位で反応し、スタートダッシュも完璧に切れているのだ。そう、既に走り出している。

 一歩出遅れた俺は、なんとか、初撃だけは耐える、そう決意し、敵の動きを見定める。

 残り数メートル。駿河はようやく剣を振りかぶるモーションに入る。これはチャンスだ。

 守りを捨て、攻めに出る。


「甘いわよ、大空君」


「えっ……あっ、しまっ」


 俺が剣を振り切ると、駿河はスライディングで華麗に避けて俺の背後に回る。滑り込んだままの状態で剣を地面に突き刺し、鋭いターンをする。そして、そのまま突き刺した剣を地盤から抜き、俺の背中を斬る。

 なんとかガードしようと試みたが、俺は剣を振りかぶったことで、体がぐらついてしまい、体勢を立て直している隙を突かれ、駿河の並大抵ではない素早さに、俺は成すすべもなく斬られるしかなかった。


「これは実戦じゃないから、斬ってもログアウトしないけどね。

 ところで、君、私の言う事守らなかったでしょ」


 ……その通りだ。完全に忘れていた。駿河からは、敵の攻撃を受けて、そこからカウンターを撃つように言われていた事を。


「確かに焦る気持ちはわかる。でも、その判断一つで仲間を苦しめる結果にも繋がる。その事を理解出来たら……ごめん、今ちょうど連絡入っちゃった。どうやら急を要する物だから、また今度だね。ごめんね」


「はい!……あっ、最後に質問してもいいですか?」


「一瞬でよろしくっ」


 駿河はログアウトボタンを押すギリギリで手を止め、そう言う。その言葉に俺は甘えることにする。


「この空間に慣れるにはどうすればいいですか?」


「私はここがゲームの世界だと思ってる。じゃあね、頑張ってね」


 駿河がログアウトするのを、手を振って見送る。俺は見送ったままの体勢で数秒静止した。


 俺は悔しかった。俺が最初に剣を握る事に集中していた事でも、俺が焦った行動に出た事でも、負けた事でもない。なんと駿河は、武器スキル以外のものを一つも使っていなかった事だ。それなのに、そのスピードに追いつく事すらままならなかった劣等感を感じた。確かに、学園序列3位だから負けて当然の相手。しかし、こちらはスキルも含めても、その素早さには追いつけなかった。駿河にスキルを使われてはどうだろう。もう手も足も出ないだろう。目で追いつく事も出来ず、俺が百人いても足りない。

 だが、ここで諦めてしまった方がもっと悔しい。やるべき事は二つ。一つ目は、守りに徹する事。二つ目は、整備士としてスキルの改良を施す事。

 やっと見えてきた光を掴まないわけにはいかない。エルドラードなど出られなくても良い。ただ、初めて俺を必要としてくれた冷姫や鳳の役に立ちたい。その一心だけだった。


「そのためには、ゲームの世界だと思う、かぁ……。考えたこともなかった。

 そうだ!ここはファンタジーの世界なんだ!!」


 そう大声で叫び、自己暗示をかけた。何故かそうすることで、心の底から楽しさがこみ上げてきた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ