表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BRAVE HEARTS  作者: 刹那翼
第2章 Road to El Dorado
44/88

堕とされる勇気 10/13

「これが順位に関わる最後の試合。安全圏の4位には入っているが、2位と3位を叩き落として、『エルドラード』出場を絶対にするにはここが決め手だ。更に『ラグナロク』を見据えるとなれば、尚更だ。気を引き締めていくぞ」


 全員が氷牙の言葉にこくりと頷く。

 スターティングメンバーは、俺と氷牙、椿。スピード特攻特化型メンバーだ。相手の『フォーチュン・ゴッデス』は、後半が得意なチーム。攻めたとしても、態勢を立て直されたら、一巻の終わりだ。未だ『ダーク』以外に負けを知らないことが、その屈強さを物語っている。更には、あの真霧も切り札を使いかけるほど苦しんだほどだ。

 敵将の十刹美波は9種類にも及ぶ弾丸を使い分ける。銃を通常の状態で持った時には、貫通・斬撃・打撃の3種類。横を向けて撃つと、カーブ・シュート・フォークといった曲がり方をする。下向きで撃つと、スライダー・シンカー・ポップアップという変化弾を2丁拳銃で操る。特にポップアップは、急所である喉を目掛けて飛んでくる。被弾すれば一撃で決着が付くだろう。盾道たてみちたかしは体を硬化させる能力を持つ。そして攻撃力と防御力を上昇させる厄介な相手。最後に無限むかぎりさとる。一番注意すべき能力を持つと言っても過言ではない。彼の周りに描かれる不思議なサークルの中に入ってしまえば、魔法が使えない。人呼んで『魔法無効化アンチマジック領域テリトリー』。魔法頼りの決闘において、魔法が使えなくなることは恐ろしいこと限りない。


「今日は流石に仕事を放棄してきたよ。彼らは強いから、最後まで諦めず頑張ってきな」


 音坂先生は特待生のチームも担任を持っているため、なかなか一年生に時間を割り振れないが、今日ばかりは来てくれたらしい。俺達は勢い良く、はいと返事した。

 そして、珍しく5人で円陣を組む。それだけ大事な試合だということだ。皆理解している。


「正義、氷牙、椿ちゃん。絶対勝ってこいよ」


「私の分も頼んだよ!」


 戦闘メンバー3人はコクリと頷く。そして、俺は大きく空気を吸い込み、できるだけ大きな声で言う。


「行くぞ、ブレイヴ・ハーツを胸に!」


「おう!」「はい!」




 地形は砂漠。光はガンガン照っているし、光魔法は申し分ないのだが、爽乃が欲しい状況だ。十刹から目を離すことができない地形でもある。逆に言えば、障害物や罠が全くない地形であるから、真っ向勝負を仕掛けられるとも言える。

 周囲を見渡せば、チラホラと人影が見える。砂煙で誰が誰だかわからない。ここで行動を起こせば、この中に十刹が居たら即座にやられるだろう。


「氷牙、風魔法を1発頼む」


『了解』


 氷牙は誰と当たろうとも、きっと負けない。十刹相手なら、厳しい闘いになるかもしれないが。

 宙を舞う砂がゆっくりと消え始める。俺の半径20メートル以内にいたのは、椿と盾道、そして無限。どうやら、十刹と氷牙が相対する形となったらしい。


「椿、氷牙、速攻で決めるぞ」


『ブレイヴ・ハーツ』全員が走り出す。2人で盾道と無限を速攻で叩いて、氷牙を援護する作戦。これは流れを掴んだら、勝てる。


光魔法シャイニング閃光フラッシュ!」


十六夜イザヨイ陽炎カゲロウ!」


 一気に大技で畳み掛ける。俺の目(くらま)しからの椿の神速の攻撃。

 しかし、俺の技は成功したが、椿の技は盾道に通らなかった。間合いは十分に詰めていたというのに?

 まさか、魔法無効化領域か!


「俺を忘れてもらったら困るなぁ」


 堅いの良い盾道のパワーアップしたパンチを椿は直接受けてしまう。




「十刹相手か。流石に俺も勝てるかわかんねえなぁ」


「意外な弱音を吐くのですね。でも、私も全く同意見ですけどね」


 十刹は銃を召喚する。それに続き、俺も鎌を召喚する。

 冷酷姫暗殺鎌(メドゥーサズサイズ)の能力である、一定時間の能力急上昇を使用する。俺自身、あまり扱い切れている自身はない。椿の加速魔法でも言えることだが、体が速すぎると考えるスピードが追いつかなくなる。だから、この諸刃の剣は運任せの勝負の時のみに使う他ない。

 俺は力強く大きな一歩を踏み出す。そして、砂煙を風魔法で十刹に向かって飛ばす。

 十刹は落ち着き払った様子で、銃を上向きで撃ち、打撃属性の弾丸で風に穴を開ける。だが、主導権はこちらが握った。


「電光二連撃・月光!」


 最も速い攻撃でもある、月光。しかし、十刹はこちらに向かって走ってくる。月光は前に二連撃を放つ。1発目は辛うじてヒットしたが、2発目は避けられた。普段の俺なら方向転換できたが、勢いが良過ぎることを読んでの行動だったのだ。背に腹は代えられぬというやつか。しかし、俺のパラメータ上昇を逆に利用されるとは、油断をしたことがないが油断大敵だな。


「全く恐ろしい相手だよ、あんたは」


「こちらこそ、良い立ち回りさせてくれないから、焦ってきていますわ。風を体に纏っているんですもの」


 と言いつつも、1年生の中で最強の女性は顔色1つ変えていない。1年生と思えない綺麗な顔立ちの清廉なるポーカーフェイスだな。そして、戦闘中でも冷静に相手を見張る観察眼。

 俺は鎌の能力が切れないうちに決着をつけないと負ける。だからこそ、俺は大技で叩く覚悟を決める。右足で大きく踏み込む。


「神羅八連撃・天地創造!」


 俺は確信した。相手が銃弾を撃ち込んできても、風魔法で防げる。勝った。


「私の方が一枚上手でしたわね!」


 十刹の上から鎌を叩きつけようとする俺の喉元に食い込んでくる弾丸。俺の風魔法で守っているから、大丈夫だ!

 しかし、俺は直ぐ様直感する。十刹の構えはいつもと違うことに。十刹のモーションは、片方の銃だけを相手に構えるのだ。2丁拳銃だというのに、奇妙なモーションだとずっと思っていた。本来の狙いはそこではなかったのだ。データを分析された時に、自分の切り札を悟らせないようにするため。

 十刹は自身の背中に左腕を回し、そこから『不可視の弾丸』を撃ち込んでいたのだ。

 その技の掛け合わせは風魔法を打ち砕く打撃属性の弾丸と一撃で獲物を消去するポップアップ。

 俺が得たのは、勝利ではなかった。俺の決闘史上、最低の屈辱だった。




「椿!大丈夫か!」


「キャプテン、集中!」


 殴り飛ばされる椿を心配して目で追っていると、椿から警告を受ける。後ろを見てみると、盾道が立ちはだかっていた。俺はなんとか防御を試みて、盾道から攻撃を食らうことを阻止できた。


「椿、ナイスだ」


「いえ、キャプテンこそ」


 とは言え、この2人の連携はなかなか手強い。流石学年2位のチームといったところだ。


光魔法シャイニング七剣戟(セブンブレイズ)


 盾道と無限と少し距離を取ることができたため、もう一度大技を放つ。そして、盾道と無限に剣が光の速さで飛ぶ。


「ギリギリ間に合った!アンチマジック!」


「それはどうかな!爆破剣(エクスプロージョン)!」


 無限が俺をテリトリー内に入れるが、その直前に俺は7太刀の光でできた剣を爆破させる。すると、フラッシュと同じ効果を得られる。


「今だ、椿!これを使え!」


 一か八かの勝負だった。椿に乖離させた『双龍円月』を渡し、速さのある椿を二刀流にさせて攻撃ポイントを貯める作戦に出る。

 いつもの俺を姿を見たのか、何故か様になっている。これならいける!


「勝負の最中ごめんあそばせ。冷姫君や雪ノ下さんのような強い仲間に頼り切って、運で勝ってきた君には、それ以上暴れられると困りますわ」


 この声は十刹……?氷牙は負けてしまったのか……?俺達はポップアップショットにより、一撃退場を強いられる。

 俺達の完全敗北だった。全てがへし折られる、最悪の負けだった。




 俺達は決闘の後、先生を加えて少しの間廊下で反省会をした。鋭い槍で心臓を刺されているかのように、胸が苦しい。そして、空気が重い。


「……悪い。十刹を止められなかった俺の責任だ」


 氷牙はそう言って、皆に詫びる。空気が重い。なんとか取り繕おうと、恭介が口を開ける。


「そんなことないよ!氷牙は頑張ってたさ!十刹の初見殺しの切り札は仕方がないよ」


「そうだよ。そこまで流れを掴んでて、一撃でやられると誰もが思わないよ!」


 そして、爽乃も恭介に賛同する。その通りだ。氷牙は何も悪くない。


「俺が全て悪かったんだ。本当に勝ちたいのなら、氷牙に無理をしてもらってまで十刹を倒す必要なんてなかったんだ。運で勝ってきたんだよ」


 俺の脳内には、ずっと十刹の言葉が巡り巡っていた。彼女の言い放った言葉には、説得力があった。だから恨むようなことはしない。むしろ俺は再認識させられたのだ。所詮は最下位だった人間。今まで俺が上位と渡り合えていたのは、偶々だったんだ。


「本当に、悪かった。先生も、折角来て頂いたのに、みっともない試合を見せてすみませんでした」


 俺はチームのキャプテンという重圧に耐え切れず、その場所を去った。走る気にもならず、歩いて去った。


「正義はずっと頑張ってきたんだ。皆も知ってるだろ。だから今は1人にしてやれ」


 音坂先生の言葉が遠くから聞こえ、俺は恥ずかしながら、涙が溢れ出た。

 こんな俺を受け入れてくれた温かいチームをなんとかして引っ張ろうと頑張ってきた。馬鹿にされたりもした。最下位だと罵られもした。でも、今回は違うんだよ。今回ばかりは、大切な仲間にも迷惑を掛けたんだ。俺は何よりもそれが辛い。

 俺はどうすればいいんだ。

 強くならなければならないと答えが出ていても、俺にはもう一度立ち上がる勇気が残っていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ