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BRAVE HEARTS  作者: 刹那翼
第2章 Road to El Dorado
41/88

迷えるエースと導くキャプテン 9/23

 後半が始まり、長らく拮抗した展開が続く。後半のメンツは爽乃と椿がチェンジしている。こちらが点を取っては、相手に取り返され、相手に点を譲れば、カウンターの繰り返し。次の流れを掴んだ方がきっと勝ちに大分近づく。残りはあと5分程度。

 後半に入って試合のムードが悪くなり、桐生のプレーが徐々に荒々しくなる。

 チームメイトも良くは思っていないようで、桐生にあまりパスを出さないようにしている様子が伺える。そして、次の瞬間今まで黙っていた二人が動き出した。


「ドラゴンズソウルは桐生だけじゃないぞ」


 榴ヶ岡の木魔法で、いばらのワイヤートラップが張り巡らされる。


「そして、私もね」


 今度は櫻井がワイヤーを切られても治癒できるように水魔法をワイヤーに滴らせる。

 ドラゴンになって全ての身体パラメータが上がっている桐生には容易に避けられるが、俺達には避けるどころか桐生のディフェンスがあると考えると末恐ろしい。


「正義!」


「おい、こっちにパスしちゃ……」


「ピッ。白5番、バックパスバイオレーション。赤ボール」


 バックパス……条件が揃うと、後ろにパスしたら駄目なのか……?


「ドンマイドンマイ」


 正義は俺の肩をぽんぽんと叩く。しかし、こればかりは俺自身を許せなかった。大事な一面での最悪なミス。正義もきっとそのことをわかっていての励ましなのだろう。

 トラップを利用して、桐生が楽に点を取る。桐生の表情を見る限り、試合当初の調子を戻している。


「このトラップは私に任せて、二人は試合に集中してください」


 そう告げたのは、椿。この状況下でも落ち着いている姿が羨ましい。そして、仲間を信じて頷く正義の寛容さ。このチームの皆は俺に無い良さを持っている。俺だけが劣っているようにも感じる。なんで、俺だけが。

 侵食の炎がワイヤーを伝い、それを纏うようにして氷が張る。そして、フィールドに雪が降る。鎮静の雪。これで木は伸びたとしてもゆっくりと伸び、一瞬で火に焼かれる。

 椿は正義からパスをもらったまま、そのファインプレーをし、それと同時にレイアップシュートを決めた。

 俺にはない器用さ。ああ、俺はこのチームの人にどんどん追い抜かされていくんだな。姉のようにキャプテンとしての素質を持って生まれず、絶望から希望を探すしかない人間には、どうしようもないことなんだな。

 実際、俺しか足を引っ張ってないじゃないか。爽乃は大事なところでちゃんと決めていたし、正義もゲームメイクしながら相手の注意を引いていた。後半から出た椿も敵のトラップを弱体化させたりスピードで翻弄していた。なのに、俺は。俺は。

 俺に向かって正義が歩み寄って、俺の服の襟を掴む。


「今のお前は、好きじゃない。エースとして猪突猛進なお前じゃなければ、このチームは成り立たない。頼りないキャプテンの俺がいて、一騎当千のお前がいる。それ以上に何がある!俺がVRの中でこうして立てるようになったのは、お前が導いたからだ!それ以外に何がある!勝ちたいなら、前を見ろ!」


 その通り、だな。俺は最下位のお前をここまで振り回してきたんだ。俺が頑張らなくてどうするんだ。

 自分の中のありとあらゆるものを全て絞り出せ、絞り尽くせ!風魔法と筋力パラメータアップをアタッチメントしているんだ。できないはずがない!

 正義はニヤッと不敵な笑みを浮かべ、シュートを打つ振りをして、俺にパスをする。残り6秒。2点ビハインド。俺にパスすると誰も思っていなかった『ドラゴンズソウル』は焦った表情をしている。


「これでっ、終わりだ!」


 地面を大きく踏み付ける。フィールドがバキバキと音を立てていて、壊れていく様子がわかる。俺は忘れていた、この昂揚感を。闘いは、エースはこうでなければ面白くない。


「自陣から、ダンク、だと!?ふざけるな!」


 その表情を見たかった。俺は今までの決闘で思ったパフォーマンスをできていなかった。俺の対策を練って、一対一で対抗してくる手段を使われていたから。俺はずっと攻めあぐねていた。だからこそ、この爽快感は気持ちが良い。

 桐生がブロックのために大きく手を伸ばす。しかし、俺は体の周りに風のクッションを作る。


「残念だったな。俺の方が一手上回っていたみたいだ」


 ボールを相手のゴールに打ち付ける感覚。超が付くほどの快感だ。

 それを味わえるのは、お前がいるチームだからだよ、正義。


 白 68ー赤 67

 試合終了。

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