遠距離弾道とダンク 9/23
ドラゴンズの速攻が始まる。桐生は流石と言った速さで、コート上を駆け抜ける。ゴール前に止まったと思いきや、後ろに待っていた櫻井にパスし、櫻井は3ptラインからちょっと離れた場所からシュート。少しバウンドはしたものの入る。
「爽乃、かましてやれ」
「OK!」
俺から爽乃にパスし、自陣から爽乃はシュートモーションに入る。
「何!?」
桐生は一本取られたという顔付きをする。
超遠距離弾道シュート。それは、爽乃が装備している特殊なレンズが無いと出来ない代物。レンズで正確に読み取った距離、投げる角度、強さをブレなく行うことで可能となるシュートなのだ。
ボールがネットを通る鈍い音がし、ボールはダムッと地面にその濃い橙色の体を打ち付けた。
口に出して言えないが、鳳の超長距離弾道は回数制限がある。これは、銃の代わりに筋力上昇を加えているためにできる所業だ。筋力上昇でも、スタミナまでは上げれないので、5回がせいぜいの限度だ。確実性を考慮して4回を目処にしておこう。
「3ptじゃ、味気ないね。こんなところからのシュートなのに」
全く椿の言う通りだ。流石に、投げる力は大きく使う。だからあまり使えない技だが、少し脅しで使わせてもらう。
「さてと、相手チームは爽乃と氷牙を徹底的にマークしてくるだろうな……」
俺はただのパスの経路としか見られていない。それでいい。
「来るぞ、正義」
「みたいだな……」
桐生がドラゴンに姿を変え始める。
……しまった、気を取られた!ボールを桐生から背面で受け取った榴ヶ岡は、さりげなくゴール前までに走っていた。
カシュンとシュートをきっちり決める。
気落ちしてる場合じゃないな……まずは決められた分を返す。
爽乃から俺にパスをしようと瞬間、ある影が走り込んで来る。まさか!
「桐生!!!」
「貰ったぜ」
龍の尻尾でパスをカットした桐生は、ボールを手に握り、ダンクする。不敵な笑みを浮かべながら、奴は自陣のディフェンスに戻る。
「手が3本あるようなもんじゃねえか……」
俺は途方に暮れた。あのスキルは間違いなく魔法力消費がでかい。しかし、燃費に関わらず脅威であるのは確かだ。
「爽乃、もう一発いけるか」
俺は敵に流れを渡さないことを考えて、鳳に5発中の2発目を要求する。
「なんとか」
その言葉を聞いて、爽乃にパスする。
そして、爽乃はシュートモーションに入る。ディフェンスは無い、決まった。そう確信した時、シュート弾道圏に入り込む一つの影。
「嘘だろ……あんなの、アリかよ」
勇敢な戦士の立ち向かう精神が、完全に折られた。
一匹のドラゴンが、空に舞い上がるように高く跳び上がり、超遠距離弾道弾を軽く弾いて見せたのだ。
「その程度か?『勇敢なる心』さんよぉ!」
そのままドリブルでゴールに近づいた後、龍は跳躍し、バックハンドダンクを繰り出した。やはり身体能力もただならないほど上昇するのか。
「正義、少しの間だけで良い。俺にボールを回してくれねえか?」
ダンクが決まりかける直前に、俺に語りかけてくる氷牙の目は真剣そのもの。その目を俺は信じよう。
「わかった。俺としてもそっちの方がありがた、いッ!」
俺は氷牙に受け答えしながら、ロングパスを繰り出す。今回のロングパスの時ばかりは、魔力消耗を減らすために桐生は人間の姿に戻っていた。
「その技くらい余裕で出来るぜ、バーカ」
氷牙は、桐生のしたバックハンドダンクを本人が行ったかのように綺麗にコピーをする。桐生のドラゴン化した時の動きも凄いが、あいつの運動神経にも驚愕させられる。
桐生はまんまと氷牙の挑発に乗り、すぐさま龍に戻りボールを積極的に支配する。
「3本の腕があるようなドリブルはお前には出来るか?」
「正義、手伝ってくれ」
俺は刹那の背中からの突風に少しばかり動転するが、氷牙の意図を掴む。俺は追い風に乗り、桐生がドリブルしているボールを素早く奪う。彼はボールを取られても、奪い返そうと執着してくる。
「お前が3本なら、"俺達"は4本だ」
俺達はパスを上手く使い、あたかも一人でドリブルするかのように桐生を抜き去ることに成功した。お互いの事を理解し、更にタイミングも合わなければ失敗する連携。相手が氷牙じゃなければ、確実にできない。逆に、氷牙だからこそできる。共に壁を乗り越えてきた奴だからこそ。




