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BRAVE HEARTS  作者: 刹那翼
第2章 Road to El Dorado
36/88

クロス・コネクト 9/8

「夏の残暑が消え始める頃に、熱闘の数々が巻き起こっている9月!いよいよ始まりました、運命の一戦!現在4位の『ルーナ・ピエーナ』と同じく10位の『ブレイヴ・ハーツ』の対決!『エルドラード』への切符が確定するのは、10月中旬。今月の決闘の成績は大きく絡んできます!さあ、勝者はどちらか」


 今回の決闘管理の当番は、奇遇にも私達の整備士である蘇芳さんだったから、私もさりげなく付き添うことができた。来週の魔装祭の料理部の準備をしなければならないのを押し切って来ている。可愛い後輩二人の決闘をどうしても見届けたかったから、申し訳ないと思いつつも部員に許可を得た。今回は影野さんをどう抑えるかに鍵がある。彼女は雪ノ下さんと冷姫君でさえ手こずる相手だと思っている。頑張って、大空君、雪ノ下さん。彼らだけでなく、両方のチームに善戦を尽くして欲しい。


「おっ、両チームが準備できたようです。地形設定は、丘陵。この地形は高い位置を取れれば、スナイパーが有利になりますね。さあ、メンバーが画面にぃ、映し、だされましたね。メンバーは、あれ?冷姫君の姿がどうやら見当たりません。実力があるエースを抜いてくるとは、迷走しているのでしょうか」


 どうやら解説をしている放送部の人は、決闘の経験はあまりないのだろう。今回のメンバー判断は大空君がしたのだろうけど、間違っていないと思う。キャプテンは格下相手じゃない限り、抜けないのが基本。ましてや今回は上位。そしてヒットアンドアウェイ相手には、欠かせない回復役。つまりスナイパーの鳳さん。二属性と加速で敵を牽制できる雪ノ下さん。冷姫君が外れるのも頷ける。


「ん?『ルーナ』も回復役の如月さんが、いない、ですねぇ。お互いどうしたことでしょう?」


 む、これは奇を(てら)った作戦ね。確かに冷姫君の一撃の重さを考えれば、回復は必要がないが遠距離要員がいない。となると戦略を立てるのが難しくなるのではないだろうか。相手を惑わすと考えると、ポジティブに捉えられるけれど……。




「フィールドは丘陵か。椿は先陣を切ってくれ。俺と爽乃は椿を援護。そして、出来るだけ高いところを占拠しよう。オーケー?」


 二人は賛成してくれている。どう考えても今回の厄介な問題は、地属性のチート能力。地属性は『創造』を得意とし、土だけでなく地面に眠る資源を自在に操り、創り変えられる。創造には、タイムラグと多大な魔法力を必要とするデメリットはあるが、デメリットとメリットを天秤にかけても結果は見えている。


「光魔法は初見殺しの技。畳み掛けるなら、一度限り。なら、相手にとって絶望の一手にしよう」


 そう、影野が金属を操り、擬似的な鏡を作って俺の光を反射したならば、攻撃は自分に来る。そう考えると、影野を落とさない限りは俺が自由には動けない。

 影野を落とせれば、俺達の勝ちがほぼ確定と言っていいだろう。


「木属性と地属性の壁が、丘陵より高く、なってます」


 まさか、いきなりそんな浪費を!?時間稼ぎか?いや、違う!地面に違和感を感じる!これは、攻撃か!


「地属性の必殺技、クレイモアだ!」


 気付いた頃には遅かった。丘の中腹部の地面が針のように尖って隆起し、一人につき一撃は食らってしまった。先制攻撃は痛い。そして、その岩には火属性の攻撃。鳳がいたから、大した被害はなかったが。

 不幸中の幸いだが、これで相手のバトルメンバーは割れた。まさかバトルメンバーに如月を抜いてくるとは。計画が狂った。


「作戦変更。俺が影野、椿は残りの二人。爽乃は俺達が危なくなったら、援護するようにしてくれ。難しい注文だが、頼む」


 椿は二人を相手にするわけで、被害は免れないかもしれない。俺がその分稼がないと、勝てない。

 と考えを巡らせていたとき、影野がこちらに走ってきていた。絶大な魔法を使い、地の利を取ったというのに、その場を捨てるとは思っていなかった。


「まさか、そっちから向かってくるとはな。俺からってわけか。それは都合が良い」


「私も冷姫君という暴れ馬がいなくて助かったわ。お互い様ってわけね」


 だが、こちらの分が悪いことは変わっていない。先手必勝だ。俺はカウンター技、桜花の構えをする。右手に持った剣を用いて集中線上を守る構え。影野もこのモーションを知っていたようだ。攻撃を突発的に中止する。

 残念ながら、これは影野を惑わすフェイクモーションだ。この一撃で決める。個人の連結技、『クロス』を今見せる時だ。


波魔法(ウェイヴ)閃光(フラッシュ)炸裂(クラッピング)×(クロス)七剣戟(セブンブレイズ)!」


 視界と聴覚を完全に奪ってからの光魔法の必殺技である七剣戟。この必殺技より強い技を習得できていない。これで、どうだ……?


「ぐ、まさか、音魔法だけじゃなく光魔法もだなんて。……でも、貴方は侮り過ぎたんだ。半年間この学園で積み重ねてきた私のキャリアを。この学園を」


 俺は絶望のどん底に叩き落される。影野の並大抵ではないプレッシャー。あいつは培ってきた反射神経で急所をギリギリで逃れたんだ。熟練の騎士の巻き起こる威圧。俺は負けるんだ。そう確信した。また、俺は見た。トップクラスが積み重ねて掴んだ実力。そして、冷姫と真霧の世界を。彼らは近いようで遠い存在だったんだ。


「だからこそ、俺は、俺は這い上がってきたんだ。最下位から。この学園の全員が希望を持てるって証明、したいんだ。俺は、止まっていられない」


 重圧がなんだ。そんなもの押し返せばいい。俺には、経験など空っぽだ。だが誇れる仲間と積み重ねた努力がある!


「爽乃!あれを行くぞ!」


 俺は影野の片手剣を双剣で受け流しながら、後ろで俺を援護する彼女に呼びかける。耳のヘッドフォンから溜息が聞こえる。悪いな、急で。


「「合体技(コネクト)乱桜(らんおう)孔雀(くじゃく)」」


 七剣戟と飛燕の合わせ技。完璧だ。言うことなし。飛燕の特徴は、一度分裂した数秒後に合体する。燕が自らの巣に戻るように。


「光魔法と知っていれば、弱点は反射!気が動転したわね、もらったわ!」


 大きな光沢のある金属の壁が立ち塞がる。しかし、これが跳ね返ったところで、これは俺自身の攻撃。つまり、相手のポイントには加算されない。10pt加算されるのは、敵への攻撃。反射は防御しただけで、相手の攻撃ではない。飛燕が当たれば、勝てる!


ーータイムリミットーー


 今の飛燕の攻撃点は?影野の撃破点は?俺はBCPから出た瞬間叫ぶ。


「判定!!」


 『ルーナ・ピエーナ』150pt、『ブレイヴ・ハーツ』150pt。七剣戟は全て当たった。となると、飛燕は当たっていない。


「キャプテン、ごめんなさい。私が攻撃を多く受けてしまったから」


 椿は高所を陣取る二人相手によく凌げたと思う。


「私も飛燕を当てられなかったから。ごめん」


 それは、俺が影野を一人で倒せなかったからだ。俺が倒せていたら、爽乃に謝らせなくて済んだ。


「二人は悪くないよ。俺が自分を過剰評価したから。……勝っていたのに!俺の責任で!」


 思わず声が漏れ出る。悔しい、情けない。


「正義、悔やむな。これは機械の判定だ。前を向け。引き分けでも、学年トップレベルに互角だったんだ。その自信を持て。さあ、整列だ。この部屋を出るぞ」


 氷牙、そういうことじゃないんだ。合宿で手に入れた波魔法やこの一週間練習してきた乱桜孔雀を出したんだ。手の内を全て見せたんだ。これからの決闘が厳しくなるってことだ。きっと氷牙もそれを理解している。それでも、自らの言葉で背中を押した。

 俺は悔やみながら、整列する。負けよりかは幾分良い、と恭介が笑顔を見せる。引き分けの場合、両チームに25ptずつ配られる。でも、得られた点は半分なんだ。エースを出していれば、勝てたかもしれない。

 しかし、氷牙の言葉が胸に響く。悔やむな。試合に出られず、ただ見ることしかできなかった男が、一番悔しい思いをしたであろう男が背中を押したんだ。胸を張れ。


「両チーム引き分け、礼!」


 俺は『ルーナ』のリーダーの影野と握手を交わす。その時、影野からにこやかな笑顔で話しかけられる。


「大空君、君の試合中に放った言葉に心を動かされた。私を苦しめた技なんだよ、そう簡単に他の人に負けたら許さないからね!君がこの学園を変えるところを見てみたくなった。頑張ってね」


 俺は開いた口が塞がらなかった。数秒後、俺は応援に対して返事をする。


「ああ、ありがとう。でも、次は勝つよ!」


「こちらこそ!」



 この痛み分けの決闘を大空君が気にしていない様子で、心底安心した。彼は少し完璧主義者なところがあるから、たらればのことを考えて根に持つだろうと思っていた。それにしても、彼は本当に面白い人だな、と実感する。『フェニックス』の積年の悲願でもある、この学園の改変を彼なら成し遂げられるのでは……。まさか、ね。

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