更なる高みへ 8/24
「今日が合宿最後の日か。案外早かったなぁ」
「おい、正義。簡単に浸る前に、今日の試合に集中しろ。未だ公式戦無敗の『ダーク』を倒すんだ」
「わかってるよ。勿論、勝つつもりで行くよ」
しかし、未だ3人目の姿を見たことがない。3人目は何をしているのだろうか。
「キャプテン。今日のスタメンはどうするんですか?」
椿がそう話しかけてくる。まさに大事な質問だ。
「今日は初めて真霧達と戦ったメンバーで行く。椿を入れることも考えたんだけど、前のメンバーでどれだけ成長したかを掴めるのは前のメンバーだから。椿には待ってもらおうと思う。ごめんな」
「気にしないでください、キャプテン!妥当な判断です!」
椿の笑顔に曇りはなかった。彼女は本心から納得したのだろう。
「さぁ、行くぞ……!」
今回俺達が選択したフィールドは、森林フィールド。これも前彼らと闘った時の地形。全てがデジャヴを感じる。
だが、前と同じではない。個々が成長してきたのだ。負ける確率の方が高いだろうが、勝てないこともない。
「さ、今日も頼みますよ、『ジャスティス・コンダクター』の正義さん」
氷牙がそう言って俺を皮肉る。その異名は、この学校の新聞部によって付けられたあだ名。
「あのな、俺は指揮者じゃない。
だが、指揮するか。まずは、速水を倒そう。そして、真霧。速水は爽乃。真霧は氷牙。そして、俺は二人を援護する。特に爽乃を援護するつもりかな」
「「オーケー!」」
さぁ、真霧。お前は誰を狙ってくる。エースの氷牙か。後援の爽乃か。それとも仕留めやすい俺か。氷牙を集中狙いして戦力を削ぐのが、適当な策略というやつだろう。
「残念ながら、君からだ」
声がした方向を驚きつつ、振り向く。闇のハンマーが俺の背後に迫ってきていた。残り10メートル。今回の真霧は詰めが甘い。まだ間に合う。
「光魔法・叡智ノ盾!」
神の盾である、アイギスを称する盾を俺は呼び出す。これは、光魔法を使用する有名な人物を模倣した技。というより、完全に真似をした必殺技だ。そして、光と闇は相殺し合って、お互いが消滅する。
「チェックメイトだ。大空」
まさか、俺から始末するつもりだったのか。真霧の後ろに立っていたのは速水。
侵食の火属性と高速の光魔法を織り交ぜた超速攻タイプの弾丸が俺に突き刺さる。
完敗だ。
「大丈夫、正義君!飛燕!」
新たな爽乃の必殺技か!巣立ちする燕の群れの如く俊敏に枝分かれする弾丸が、真霧と速水を貫く。真霧は闇でガードしたが、速水はクリーンヒット。速水だけでも!
「俺に任せろ。未完成の運命!」
爽乃の弾丸に怯んだ速水に、氷牙の鎌が貫通する。余裕を持って速水は倒せたが、真霧には到底勝てる気がしない。
闇属性が有する能力は、抹消。全てを消し去る。風さえも、弾丸さえもデリートする。
この闘いのストーリーは、真霧のシナリオ通りに進んだ。まるで、小説の作者のように。
「諸君、お疲れ。これで合宿は終わりだ。あとは夏休みの宿題を忘れず提出するように」
あっさりと音坂先生が解散の挨拶を終わらせる。宿題は今は忘れるべきであるのに。
「負けたが、なんかスッキリしたよ。ここで勝っていたら、俺はきっと成長をサボってた。今度は勝てるようにしよう」
「流石、キャプテン。お前をキャプテンにした甲斐があるってやつだよ」
「皆、良い動きだったよね、椿ちゃん。正義から集中狙いされるとは誰も考えなかった。作戦勝ちされたって感じだね。爽っちゃんは飛燕を上手く使えてたし、氷牙は最後まで二人相手に頑張れてたよ」
「ありがと、恭介君。次、頑張ろ!」
「そうですよ、凹むことはないです!今回の合宿は良いこと尽くしでしたね!」
全員の言う通り、合宿は良い収穫だった。レベルアップできたに違いない。今日の負けは、次に活かそう。
「まだ余裕があったね、真霧。お前の本気を出すまでもなかったじゃないか。成長しているのは、あいつらだけじゃないってことだよな」
「だが、次闘うことがあるならば、あいつの力が必要になってくるかもしれない。この短期間で彼らは表現できないほど強くなっている。特に正義君は目を見張る必要性をひしひしと感じているよ」
「あの真霧をここまで言わせるとはね。だが確かに俺もマークしておかなければならないかもね。同じ光を扱う者として」
……正義君。きっと君はまた壁にぶち当たる。その時、俺はいない。君一人で困難を打ち破るんだ。




