抱負と宣言 8/19
翌日になり、久し振りに冷姫と会う(気分になったという方が近いか)。それに他のチームメンバーとも久々な気がする。
「おい、大空。お前の魔法の正体はわかったのか。最近浮かない顔をしているし、良くない結果でも出たのか?」
「ほえ?あー……かもなぁ。1回チーム戦して息抜きしたいかも」
冷姫に話し掛けられて、凄く間抜けな声が出た。そうか、真霧以外には教えていなかった。完全に話している気になっていた。なんとか魔法が判明したことを誤魔化したが、その様子を見ていた真霧は笑いを堪えるのに必死の様子だった。
「じゃあ、『ブレイヴ・ハーツ』内で闘ってみたらいいんじゃないかな。一番正義君も落ち着けるだろうし」
全てを理解している真霧は、上手くチーム内模擬戦に誘導した。これには全員が賛成し、俺と雪ノ下チーム対冷姫と鳳チームに決定した。
早速全員がBCPに入って、模擬戦の準備をする。
「大空君、無理しないでね」
VR空間に潜入した瞬間に鳳に語りかけられる。
「勿論、鳳さんこそ無理しないで」
「おーい、始めていいか?」
氷牙の声がどこからか飛んでくる。それに俺が出来るだけ大きな声で返事をする。
「こっちの準備はできてる!」
「じゃあスタート!」
地形は少し周囲を見渡しがたい草原。疎らに生えている草や木が視界の邪魔をする。まずは音魔法を周囲に張って誘き寄せるか。
「なんで、俺らを誘い出したんだ?」
「鳳、雪ノ下を狙っていてくれ」
「りょ、了解」
「じゃあ、修行の成果を見せるかなぁっと!
光魔法・七剣戟」
「な、なんだって!?」
唐突な光速の剣の攻撃を冷姫と雪ノ下は、反応出来ずまともに食らっていた。雪ノ下の速さがあれば、避けられるかなと思っていたがそうはいかなかったらしい。
「完成、してたんですか」
「大空……色々と俺の負けだ。まさか完成しているとはな……」
「もー、大空君。焦れったいよ!言ってくれれば良いのに!何も言わず二人を誘導したときはヒヤッときたよ」
全員の反応に俺はニヤリと笑う。大成功だ。
「ちょっとしたドッキリだよ。この待たせた分はきっといつかチームに貢献するよ」
その場にいるメンバーが微笑む。
「じゃあ、戻ろうか。皆が待ってる」
榊原がやれやれと言った様子でBCPの前で待っていた。
「音魔法の正体は、波魔法だったんだな。よくやったな」
「待たせたな、榊原。これで一つはスッキリしたな」
榊原も優しく微笑む。これが『ブレイヴ・ハーツ』だ。仲間が成長すれば、自分のように喜んでくれる。皆が待っていてくれるんだ。
「すっかり夜も更けたな。今週は一旦これで終わりだ。
来週からは団体戦の練習をしよう。個人のパワーアップをしても嚙み合わなければ意味が無いからな。
皆お疲れだろうし、週末はゆっくり休むと良い。じゃあ、解散」
今回の合宿の責任者でもある音坂先生が取り仕切って、個人戦合宿は終了となった、がしかし。
「『ブレイヴ・ハーツ』は少しばかり話がある。
これからはチーム戦だな。ということはチームの連携が重要になってくる。そこで、お互いのことを下の名前で呼び合うのをチームルールとしよう。
慣れるまで時間も掛かるだろうし、氷牙の姉でもある霙が気に入っていた場所で今から少しばかり話をすると良い」
皆が微妙な顔をする。しかし、冷姫は姉が気に入っていた場所ということもあって興味もあるといった様子だ。
「場所はこの学園で一番高台にあるNOAHを登ったところにある。あそこはそよ風が吹いていて気持ちが良いぞ?さぁ、行った行った」
真っ暗になった外は昼の残暑を残していて、歩けば歩くほど体に汗が増えるのが感じ取れた。だがNOAHまでは少し遠く、またNOAHはちょっとした高層建築物で階段を登らなければ屋上へは行けない。先生が決めたチームルールが緊張を呼んで、話が起こらない。少しばかり暗鬱な雰囲気。
しかしNOAHを登り終えると、それぞれが涼しいと呟いた。体全体が程良い風に触れる。とても気持ちが良い。
「これが姉貴の好きな場所か。姉貴らしいな。……ほら、見ろよ。綺麗な星空だ」
氷牙がそう言って皆に呼び掛ける。本当だ。少し他の星より目立った三つの星が見える。それらの星は三角形を描いている。夏の大三角。初めて見た。星空さえも珍しくなった現在、空に浮かび上がる疎らな光のカーテンはとても幻想的に見えた。
「なぁ。折角だし、皆で抱負を宣言しないか?抱負ってのは、1年でのな。
こんな星空に願うと、その目標も叶いそうだし」
唐突な冷姫の呟きは、詩人的に聞こえて少し笑いそうになったが、とても面白い思いつきだ。俺は皆を一瞥する。すると、皆が首肯を返してくれた。
「良いじゃん。まずは氷牙からな」
「おう、わかった。
俺は、姉貴を超える。超えて、学園1の鎌使いになる。
次は、正義だ」
氷牙は拳を前に突き出す。
「俺は……ラグナロクへ皆を導く!
次は恭介な」
俺は氷牙の拳に俺の拳を合わせる。
「俺は皆が誇れる整備士になる。皆が求める物を創り出す!
爽っちゃん!」
榊原は俺と氷牙に乾杯するかのように、拳をちょんとぶつける。
「私は、誰にも負けないスナイパーになる!
椿ちゃん!」
爽乃はチーム男子勢の顔を一通り眺めてから、にこっと笑い拳を前に出す。そして最後の椿の名を呼ぶ。
「えーと、私はですね。駿河先輩のチームと戦う、です!
目標高すぎますよね……」
椿は拳をゆっくり前に出す。彼女がおろおろし始めると、冷姫が口を挟んだ。
「いいや、目標は高い方が良い。俺達なら諦めなければ、きっと叶えられる。
じゃあ、最後にキャプテン。一発締めてくれ」
え、俺?確かに、椿の優柔不断な発言じゃ締まらないけども。数秒間黙っていると、冷姫から歌舞伎のように睨みの効いた鋭い視線が飛んでくる。……俺が言うと少し寒い雰囲気になりそうだけど、真霧を意識して一言述べるか……。
「……はいはい、わかったよ。
よし、皆。今言った志は胸に刻んだな。その志はいずれ自分の勇気になる。『ブレイヴ・ハーツ』を胸に、行くぞ!」
「「「「おう!」」」」




