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BRAVE HEARTS  作者: 刹那翼
第2章 花鳥風月
28/88

DBG同盟 8/15

「結局、大空の魔法も暗号の正体も出せず、か」


 榊原はデバイスの立体画像を見ながら言う。


「悪いな。俺がこんなのを作ったばかりに」


「気を落とすことはないさ。そのために俺が今日からの合宿を手配したと言っていい」


「冷姫が暇なだけだろ?」


 榊原は笑いながら言う。


「ご想像はお任せ」


 冷姫は苦笑いを浮かべながら、冗談めかして言う。バレてるから。


「ちーっす、皆久し振り〜」


「今日から合宿ですね〜。頑張っていきましょ〜」


 女性陣がチームルームに到着する。これで全員揃った。半月振りに『ブレイヴ・ハーツ』集結か。


「お、揃ってる揃ってる。よろしい。

 じゃあ合宿だな。今回は大空と鳳がかなり苦しむな。二人は気を引き締めた方がいい。心を折られるかもしれない」


 音坂先生は、チームルームに着くなり恐ろしい言葉をマシンガンのように放つ。

 相手は強敵なのか、俺達に刺さる相手なのか。



「待たせて悪い。

 紹介しよう。と言っても、一度戦ったことはあるし、知っているか。一応雪ノ下もいることだし、簡単に紹介だけしておこう。

 合宿相手は、『ダーククルセイダーズ』と『グラディウス』の2チームだ。メンバーは、真霧、速水ともう一人いるんだが、今日はいないな。『グラディウス』は斎藤と模武(もぶ)兄弟だ」


 音坂先生の紹介と並ぶ面々を見て、俺は顔を引きつらせる。遺書を書いて置いた方が良いのではなかろうか……。

 特待生を除いた1年生首席の真霧が率いる『ダーククルセイダーズ』。そして、俺が初めて戦った強者達『グラディウス』。彼らはエルドラードを目指す強チーム。舐めてかかれば、死ぬ。


「君達が活躍しているという噂は耳にしているよ。ライバルとして光栄に思う。今日は合宿を受諾してくれてありがとう」


 白い長袖のワイシャツにネクタイを締めた真霧。夏休みまでも制服のようなキッチリした格好をしているのか。イメージ通りといえばイメージ通り。


「この前は盛大な負けを食らったが、今日は負けないぜ。勝ち負けは合宿に関係ないけどな」


 程々にたくましい肉体で話し掛けてきたのは、斎藤剣真。バリトンの笑い声を響かせながら、そう告げる。


「そう、今日は勝ち負けは関係ないんだ。

 昨日の敵は今日の友と言うように、同盟なんだ。この休暇中だけでなく、一度戦った仲間として共に協力し合おう」


 ……一度こんな言葉サラッと言ってみたい。心の底から思う。首席は人格者でもあるのだろう。でなければやっていけないか。


「真霧君、この合宿はよろしく。

 斎藤も同盟としてよろしく」


「こちらこそ。呼び捨てで良いよ。大空君」


「ああ、よろしく頼む。BDG同盟だな」


 斎藤の言葉と同時に、キャプテン同士で握手を交わす。


「とりあえず今回は、練習試合はせずにお互いの実力診断と言うか。幾つかのグループに分けてお互いを真霧が作ってくれている。あとは真霧に任せるよ」


 今思えば、担当教員は音坂先生のみ。各チームに担当教員は引率しているはずだが、他のチームでも忙しいのか、音坂先生の性格からして私に全部まっかせてー!と言ったのかは俺達には理解不能。


「大空君。君は俺が担当する。冷姫君は模武兄弟。流星は鳳さん。あとは斎藤君と雪ノ下さんで組んでほしい。これがお互いの力を伸ばすのにベストな組み合わせだと思う」


 反対意見は一切無く、場にいる皆が首肯する。俺を除いて。

 俺が真霧の実力を伸ばせるわけがない。何故、真霧は俺を選んだ。俺はこの場にいるメンバーの中で最弱だ。対して真霧は最強。足を引っ張ること間違いなし。


「真霧、俺は……」


「君は俺が担当だ。これは同盟だって言っただろ?」


 真霧は俺をなだめるように言う。『ダーククルセイダーズ』の重荷にしかなっていないのではないだろうか。



「さ、君の相手は俺だ。とりあえず、君の持つ本気で来てくれ」


 俺が持つ本気。俺から攻めるなんてことが今まであっただろうか。ほぼ守りに徹してカウンター。『ブレイヴ・ハーツ』自体もカウンター型のチームと言っても過言ではない。

 だが、攻めなければ意味がない。どうにでもなれ。


音魔法(サウンド)猫騙し(クラッピング)!」


 流石の真霧も、莫大な音量に怯んだ様子を浮かべる。俺の自慢の音魔法。そんな簡単に破れてしまっては困る。

 しかし、俺は気付く。遅すぎた。真霧はいつの間にか、闇のフィールドを築き上げていることに。

 だが、俺は諦めない。今日は負けたって良いんだ。


音魔法(サウンド)!」


「はい、大空君。ストップ」


「え?」


 真霧の急な停止に戸惑う。今のは一体なんだったんだ。


「君を担当したのは、冷姫君からの頼みだったんだ。真霧なら大空の魔法の正体を突き止められるってね。彼の性格からして、他のチームに頼むなんてことはプライドが許さないはずだ。なのに、彼の目は真剣そのものだった。俺はそれに心打たれたんだよ」


「冷姫が……」


 なにか冷姫に申し訳なく感じた。それと同時に感謝でも胸が満ちた。


「そうだよ。だから、今君の魔法を見極めていた。君が魔法を使った瞬間、何か起こるんじゃないかと思ってね」


「結果は……?」


「君の魔法は、本当に音魔法ではない。俺は何か見極められた。だが、俺に答えを求めるだけじゃダメだ。自分で見つけなければ、意味がない」


 真霧はそれほど甘い人物ではないことはわかっている。同盟だからといって、相手に甘えてばかりでは申し訳が立たないというのも自分で理解している。しかし、情報が少なすぎる。


「ヒントだけでも!」


「それは勿論。君が魔法を使う時に、少し君の周りが歪むんだよ。乱視になったような感じだった」


 全く意味がわからない。何を言っているのだろうか。視界が歪むということだろうが、それが何のヒントに。


「君が魔法を使いこなせるまで、これといった修行はしない。魔法を知ることが、君の一番の修行だ」


 音坂先生の気を引き締めろという言葉が真っ先に脳裏によぎる。これはある意味で厳しいものになるぞ……。

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